不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,449 / 2,090
真・最終章 七魔将編

最強の将

しおりを挟む
『アイリス、聞きたいことがある』
『なんですか?』
『この地竜を殺したのは誰?』
『…………』


レナの質問に対していつもならばすぐに返事を行うアイリスだったが、何故か彼女は黙り込んでしまう。そのアイリスの態度にレナは疑問を抱くが、考え事でもしていたのか説明を行う。


『その地竜を倒したのは七魔将筆頭を務めていた魔人将ラストです』
『ラスト……』
『レナさん、これだけは伝えておきますね。今のレナさんではラストには勝てません』
『えっ……』


アイリスの言葉を聞いてレナは呆気に取られ、彼女の見立てではレナではラストに勝てないと判断した。しかも彼女の続いての言葉にレナは衝撃の事実を知らされる。


『ラストの能力は相手の力を奪う事です。ラストは触れた相手の魔力を奪い取り、それを利用して反撃に転じます。つまり、ラストにはあらゆる魔法攻撃は通じません』
『魔法が通じない?』
『そういう事です。つまり、レナさんのような魔術師にとっては天敵なんですよ……あのマリアの最上級魔法さえもラストには通じないでしょうね』
『叔母様の魔法でさえも!?』


ラストの能力はあらゆる魔法を吸収し、無効化するどころか自分の力に変換させる能力を持つとアイリスは告げる。それはつまり、魔法職の人間にとっては天敵に等しい存在を意味していた。

この世界においては最高威力を誇る最上級魔法でさえもラストには通用せず、それどころか森人族や人魚族の扱う精霊魔法や聖剣などの武器の攻撃さえもラストは無効化できるとアイリスは断言する。


『どんなに優れた魔術師だろうとラストには通じません。あらゆる魔法を吸収し、無効化するだけではなくその力を利用して反撃に転じる……当然ですがレナさんの扱う魔刀術や魔鎧術も通用しません』
『そんな奴がいたのか……』
『仮に魔法を使わずに倒そうとしても無駄です。ラスト自身も高い戦闘能力を誇りますし、何よりも触れただけで相手の魔力を奪い取ることができます。魔法を使わないように注意して戦ってもラストに触れられれば終わりです』
『……マジかよ』
『現にラストはこの地竜を倒す時は素手で仕留めています。どうやって倒したのか教えてあげましょうか?ラストは相手に触れるだけで魔力を根こそぎ奪い取って絶命させるんですよ』
『素手で……竜種を殺したは?』


改めてレナは地竜の死体人形の事を思い返し、確かに地竜の肉体には致命傷らしき傷はなかった。死体人形を作り出す場合は死体を用意する必要があるが、今回の地竜は外傷の類は見当たらなかった。アイリスによるとラストは地竜に掠り傷を与えずに仕留めてブラクに与えたという――





――同時刻、魔人将のラストは鉱山にて待機していた。他の七魔将が動く中、彼だけはこの場所に留まって決して動かない。理由としては彼がここを離れると大変な事態に陥り、離れられないといった方が正しい。


「……まだ生きているか、流石は聖痕の継承者だな」
「ぐぅっ……」
「しかし、限界は近いようだな」


鉱山の採掘場はラストが占拠しており、普通の人間は近づけない状態に陥っていた。そして採掘場には十字架に括り付けられたの姿が存在した。ヨツバ王国の六聖将の中でも実力的には最強といっても過言ではない彼女だが、現在は衰弱しきった状態で十字架に磔にされていた。

ホムラは七魔将の居場所を探り出すと自分の手で始末するためにこの鉱山に乗り込んだ。しかし、ラストによってホムラは為す術もなく敗北して現在は囚われの身になっていた。ヨツバ王国の中でも最強の将であるはずの彼女さえもラストには及ばなかった。

火属性の聖痕の持ち主にして魔刀術の達人でもあるホムラだが、ラストの前には彼女の攻撃は全て通じずに敗れ去る。しかも負けた後も自害できぬように拘束され、見せしめとばかりに十字架に磔にされる。


「お前のような強き戦士もこの時代に居たのは喜ばしい事だ。恐らく、私以外の将ではお前に勝てなかっただろう」
「……殺せ」
「まだ喋る元気はあるか。だが、殺しはしない……お前のその力は惜しい」
「殺せっ!!」


ホムラは恥辱を受けるぐらいならば死を望むがラストが彼女の願いを聞き入れる事はなく、それどころか彼はホムラの聖痕に手を伸ばす。彼は聖痕に触れると太陽の如き熱を感じ取り、聖痕の強大な力を感じ取る。


「聖痕……素晴らしい力だ。そして聖痕を制御するお前自身も優れている事は認めよう。この力をわざわざ捨てるのは惜しい」
「ぐうっ……ああっ!?」
「その力、必ず奪ってみせるぞ」


聖痕を通してラストはホムラから魔力を吸収し、彼女が死なない程度まで魔力を奪い取る。この時にラストの肉体に異変が生じ、彼の身体に聖痕のような痣が浮き上がった。

信じがたい事にラストはホムラの持つ火属性の聖痕の力さえも受け入れ、その能力を奪い取ろうとする。しかし、
彼の身体に浮き上がった痣は徐々に熱を帯びると直後にラストの肉体に異変が起きた。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。