不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

七大魔剣「雪月花」VS七代聖剣「クリムゾン」

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「アルドラ!!出てきなさい、ここに居るのは分かっているわ!!」


屋敷の中に入ったシズネは大声で怒鳴りつけると、彼女の掌に溜まっていた血が震え出し、屋敷の中にへと引き寄せられるように移動する。アルドラの位置を悟ったシズネは屋敷の中に踏み込もうとした瞬間、扉が開かれて内部からアルドラが現れた。


「……久しぶりね、シズネ」
「アルドラ……!?」


姿を現したアルドラに対してシズネは目を見開き、まさか彼女の方から出てくるとは思わなかった。彼女が驚いた理由は他にもあり、現在のアルドラは漆黒のドレスを纏ってその手には見た事もない剣を握っていた。

ブラクによって呪詛に侵されていたアルドラだったが、彼女の身体は元通りの状態へと戻っており、額の部分に髑髏を想像させる黒色の紋様が浮かんでいた。その紋様から禍々しい魔力を感じ取り、即座にシズネは紋様を見て噂に聞く「ブラクの影」だと悟る。


「アルドラ……貴女、何に取り憑かれたの!?」
「…………」
『くくくっ……分かっているなアルドラ、お前にその剣を貸したのだ。敗北は許さんぞ』


アルドラの代わりに彼女の額に浮かんだ髑髏が口を開き、髑髏がひとりでに喋った事にシズネは驚いた。彼女はすぐに髑髏の正体がブラクの影だと確信し、改めて雪月花を構えた。

今だにシズネはアルドラの血が体内に入っているが、アルドラを前にしても彼女は意識を保ち、操られる気配すらない。アルドラの方もシズネが訪れた事に驚いた様子はなく、どうやら彼女がここへ来る事は事前に察知していたらしい。


「シズネ、悪い事は言わないから逃げなさい……貴女では私には勝てない」
「舐めないでちょうだい……私に勝てる人間は一人だけよ」
『大した自信だな、小娘……そういえばお前は剣聖だったな。だが、この女はそれを越える力を持っている』
「くうっ……!?」


髑髏が少しだけ大きくなると、アルドラは苦悶の表情を浮かべて瞳の色を紅色に輝かせる。それを見たシズネは冷や汗を流し、この瞳の色は彼女も良く知っていた。アルドラは正真正銘の「剣鬼」であり、レナと同じ能力を持つ。

ブラクの影のせいでアルドラは強制的に剣鬼の力を引き出され、彼女は苦しそうな表情を浮かべながらもシズネと向き合う。シズネの方はアルドラが所有している剣の方も気になり、先ほどの髑髏の口ぶりによるとアルドラの所有する剣は元々はブラクが管理していたらしい。そして彼女の持つ雪月花がひとりでに震え出した。


(雪月花が震えている……まさか、あの剣は!?)


アルドラの所有する漆黒の剣の正体は「聖剣クリムゾン」であり、ブラクが以前に冒険都市で使用した際は黒雨を作り出した最悪の魔剣である。元々は「炎龍」を封印するために利用された聖剣だったが、その炎龍から吸収した膨大な魔力を利用してブラクは自分の力に利用した。

クリムゾンは元々の名前は「羅刹」と呼ばれ、聖剣と呼ばれるようになったのは炎龍を封印してからである。しかし、羅刹は相手の生命力を奪う力を持つ魔剣であり、炎龍の生命力を奪い続けた今では聖剣に相応しい力を誇る。


(剣鬼というだけで厄介なのに……いえ、こんな所で泣き言は言ってられないわね)


雪月花を構えたシズネはアルドラと向かい合い、これ以上の言葉の問答は無用だった。アルドラの方も苦し気な表情を浮かべながらも聖剣クリムゾンを構え、二人はお互いに見つめ合う。



「――刺突!!」



先手を打ったのはシズネだった。彼女はアルドラに向けて駆け出し、自分の得意とする戦技を繰り出す。しかも今の彼女は身体能力も魔力も以前よりも上昇し、目にも止まらぬ速度でアルドラへ向かう。


「受け流し」
「くっ!?」


しかし、アルドラは正面から突っ込んできたシズネに対して冷静にクリムゾンの刃を重ね、彼女の攻撃を受け流した。剣鬼の力を解放したアルドラは並外れた動体視力でシズネの動作を読み取り、行動に移す事ができる。

シズネはアルドラに対して距離を取ろうとしたが、アルドラはそれを逃さずに彼女に近付き、クリムゾンを振り払う。咄嗟にシズネは身体を反らして回避すると、クリムゾンの刃から闇属性の魔力が放たれ、屋敷内の庭に植えられた樹木が触れた瞬間に枯れてしまう。


「なっ!?」
「はああっ!!」


樹木を一瞬で彼させた事にシズネは動揺し、その一方でアルドラはクリムゾンの刃から放たれる闇属性の魔力を「黒色の鞭」のように扱い、シズネに大して何度も振り払う。少しでも触れたらシズネは生命力を奪われて干からびてしまい、どうにか攻撃を回避する。


(少しでも触れたら終わりみたいね……最悪)


アルドラの振るう「闇の鞭」をシズネは全て避けるしか方法はなく、この闇の鞭だけは掠る事も許されない。少しでも肉体に触れたら生命力を奪われて死んでしまうのは目に見えており、彼女は攻撃を避けながら反撃の隙を伺う。
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