不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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真・最終章　七魔将編

シズネの覚醒

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――同時刻、監獄内でも異変が起きていた。アルドラの血を飲んだ女性達は牢獄内で苦しみ始め、やがて理性を失ったかのように暴れ始める。その中には高レベルの冒険者も含まれ、彼女達は力尽くで檻を破壊して抜け出そうとしていた。

「がぁあああっ！！」
「出せぇえええっ！！」
「ひいいっ！？」
「だ、駄目だ！！鉄格子が持たない！！」

鉄格子を掴んだ女性冒険者は力尽くで折り曲げ、外に出ようとした。それを見た兵士達は逃げ出そうとしたが、この時に監獄内の気温が急激に下がり始めた。

「はっくしょんっ！！」
「な、何だ……寒いっ！？」
「どうなってるんだ！？」

急激に気温が下がった影響で監獄内の全員が震えて碌に身動きが取れず、暴れていた女性冒険者達もあまりの寒さに力が出ない。いったい何が起きたのかと全員が戸惑う中、金属音が鳴り響く。

「邪魔よ、退きなさい」
「ひいっ！？」
「お、お前は……！？」
「青の剣聖！？」

檻を切り裂いて出てきたのはシズネであり、彼女の手には雪月花が握りしめられていた。監獄の気温が下がった原因は彼女の雪月花の能力らしく、地力で檻を抜け出してきたと判明する。

しかし、雪月花はシズネが檻に捕まった時に監獄内の別の部屋で保管されていた。それにも関わらずに彼女の手元に雪月花が戻ってきた理由、それはシズネがアルドラの影響で肉体が変化した事が原因だった。

――数分前、シズネはアルドラの血の影響で彼女は「吸血鬼」の能力の一部を利用し、自分の肉体を強化させた。これを利用して彼女は自力で檻を破壊し、雪月花が保管されている部屋まで辿り着く。そして彼女は雪月花を手にして能力を発動させた。

現在のシズネは以前よりも肉体が発達し、年齢が２０才前後の姿に変化している。平坦だった彼女の胸も大きくなり、より肉感的な体型になっていた。この肉体の変化も吸血鬼の血の影響であり、現在の彼女は前よりも魔力が迸る。

「あ、青の剣聖が抜け出したぞ！！」
「まずい、逃げろ！！」
「うるさいわね……少しは静かにしなさい」
「うひぃっ！？」

シズネが抜け出した事を知った兵士達は取り乱し、逃げ出そうとする者もいたがシズネがひと睨みしただけで固まってしまう。現在の彼女は凄まじい威圧感を放ち、更には雪月花の力を限界まで引き出す事ができた。

檻の中に閉じ込められた女性冒険者達さえもシズネの迫力に気圧され、雪月花の影響で気温が下がった事で身体が上手く動かせない。その様子を見届けたシズネは黙って彼女達の前を素通りし、遂に監獄の外へ抜け出す。

「……呼んでいるわね」

アルドラの位置を探るため、シズネは自分の掌に視線を向けた。彼女の掌は僅かに切り傷が存在し、少しだけ血が滲んでいた。しかし、掌の血は勝手に動き始め、ある方向に向けて近付いていた。

現在のシズネの肉体にはアルドラの血が混じっており、彼女は自分の身体を傷つけた理由はアルドラの血を利用して彼女が隠れている場所を探し出そうとしたからだった。アルドラの血はどうやら本体に反応するらしく、血の動きを確認してシズネはアルドラの位置を掴んだ。

――既にシズネのアルドラの洗脳を解いており、現在の彼女は自分の意思で身体を動かす事ができた。シズネが自分の身体を傷つけた理由は血を抜く事でアルドラの居場所を探る事、そして痛みで洗脳を解く事を試みた。

現在のシズネの肉体は常に血が流れ続け、その痛みによって意識を保っている。しかし、何時までも血を垂れ流した状態で動くわけには行かず、彼女はアルドラの元へ急いで向かう。

「今度こそ決着を付けてやるわ……この身体を失う事になったとしても！！」

吸血鬼の能力のお陰でシズネは理想の肉体を手に入れたが、アルドラを倒してしまえば当然だがこの姿にも変身できなくなる。だが、仮にこの姿になれなくともシズネはレナのために役に立つために戦う。

「待っていなさい、アルドラ！！」

アルドラの元へ目掛けてシズネは駆け出し、彼女は雪月花を利用して足元を凍らせると、アイススケートのように滑りながら駆け出す。吸血鬼化の影響で身体能力も魔力も大幅に強化され、今の彼女は肉体の全盛期を迎えている。

この姿のシズネならばもしかしたらゴウライをも上回る力を持っているかもしれず、彼女は今ならばどんな相手だろうと負ける気はしなかった。そしいてアルドラが隠れていると思われる建物を発見した。

「ここは……！？」

シズネが辿り着いた場所はなんとレナが暮らしている屋敷だった。どうやらレナが不在の間にアルドラはこの場所に隠れていたらしく、それを知ったシズネは勝手にレナの屋敷に乗り込んでいる彼女に怒りを抱く。

雪月花を振り抜いて施錠された門を破壊すると、シズネは屋敷の中に乗り込む。この時に彼女は屋敷からアルドラ以外に禍々しい魔力を感じ取り、嫌な予感を抱きながらも足を踏み入れた。

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