不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

始まりの村

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「ウォンッ!!」
「おっと、到着か……ここも大分変ったな」
「わあ~私とレナたんが会ったところだね」
「私ともここでレナと再会した」


ウルに声を掛けられてレナは前を剥くと、今回の依頼はレナが一番最初に依頼を受けたゴブリンによって滅ぼされた村だった。数年前にレナは深淵の森からここへ訪れ、彼にとっては初めての人里である(当時から既に住んでる人はいなかったが)。

この場所はコトミンと偶然にも再会し、後に魔物に追われていたティナともであった思い出深い場所でもある。しかし、住む人間がいなくなった事で現在は廃墟と化し、到底人が住める場所ではなくなっていた。


「うわ、聞いていた以上に荒れてるな……」
「確か村の人間は全滅したそうね」
「ん?だが、前にレナはこの村の出身だと聞いた事があるような……」
「その辺の事情は後で話すよ」


今回の旅路にはいつもの面子が勢揃いしており、遅れて両肩にスラミンとヒトミンを乗せたアインが駆けつけてきた。アインは大き過ぎるので狼車には乗れず、走って追いかけてきた。


「キュロロロッ!!」
「あ、アインちゃんたちも来たよ~」
「「ぷるぷるっ♪」」
「スラミンとヒトミンが再会を祝してぷるぷるだんすをしてる」
「MPが座れるダンスじゃないだろうな……」
「えむぴー?」


アインと合流するとティナは彼女(雌)の肩の上に乗っかり、スラミンはレナの頭の上に移動する。ヒトミンは珍しくゴンゾウの頭の上に飛び乗り、嬉しそうに飛び跳ねる。


「ぷるるんっ!!」
「ん?俺の頭の上が気になったのか?」
「ゴンちゃん、アインよりでかいから高い景色が見れて喜んでるんだよ」
「そういえばゴンゾウ、前よりもでかくなってないか?」
「そうか?」


ゴンゾウは巨人族の基準では若手であり、未だに肉体は成長していた。過酷な経験を乗り越えてきたお陰か彼は最初の頃よりもたくましく育ち、今では冒険都市内の巨人族の中では一番の武人かもしれない。鬼人将オウガを倒した時にゴンゾウも限界を超え、より一段と強くなった。

シズネの方も聖痕を完璧に使いこなせるようになって雪月花の能力を限界まで引き出せるようになり、ダインの方も影魔法を闇の聖痕によって極めたといっても過言ではない。コトミンは聖痕無しでも以前の能力を取り戻し、ティナの方は変わりはないが元から高い能力を持っている。


(こうしてみると、俺が一番才能なかったりして……)


レナはハヅキ家と勇者の血筋でもあるバルトロス王家の血を継ぐ人間だが、他の者たちと比べてレナは聖痕に選ばれた存在というわけでもなく、特殊能力を持ち合わせているわけでもない。彼の強さは子供の頃からアイリスの指導を受けて鍛え上げ、数々の経験を得た事で力を得た。

才能という点では他の者に劣るかもしれないが、それを補って余りある努力と経験を積み重ねてきたレナだからこそ仲間達も彼の強さを信頼していた。今のレナなら歴代に召喚された勇者にも劣らず、剣鬼の力を完全に使いこなせる剣士でもあり、同時に魔術師としても成長していた。


(叔母様に魔力を分け与えて貰ってから前よりも魔法の力が強まった気がする。でも、それだけだと足りない)


魔術師として生まれたレナは本来ならば魔法の力を磨くべきだった。しかし、彼の職業は本来は戦闘向きではなく、そのために魔法以外の力を頼らなければならなかった。その結果としてレナは剣鬼と成れたといっても過言ではないが、これからの戦いを考えればもう剣だけだけではなく、今一度自分の魔法の力を鍛える時が来たのかもしれない。


(合成魔術でもっと今まで以上の火力の魔法を作り上げる事もできそうだけど、それはなんか違うな……俺らしい戦い方といえばやっぱりこれかな)


レナは背中に差している退魔刀に視線を向け、やはり子供の頃から使い慣れている武器を扱うのが一番だと考えていた。これまでも魔法剣や魔刀術を使用して戦った事があるが、今ならば上手く魔法と剣の力を引き出せる気がした。


(初心を思い出せ)


まだ深淵の森の屋敷に閉じ込められていた時の事を思い返し、あの時のように自分が強くなるための努力をもう一度行う。心に決めたレナは村の中を無意識に歩いていると、不意に前方から大きな影が現れて仲間達が騒ぐ。


「お、おいレナ!!前を見ろよ!!」
「前?」
「グゥウウウッ……!!」


ダインの言葉にレナは顔を見上げると、そこには全身が赤毛に染まった巨大熊が存在した。その魔物を目にした瞬間、レナは深淵の森で互いに協力し合って生きてきたゴブリンの事を思い出す。

村の中に住み着いていた魔物の正体は「赤毛熊」である事が発覚し、レナにとっては最悪の思い出の相手だった。できれば二度と顔を見たくもない魔物だったが、依頼を達成させるためにレナは退魔刀を引き抜く。レナが大剣で戦うようになったのも赤毛熊との戦闘が切っ掛けだった。
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