不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

旋斧の英雄

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「変身完了」
『な、何だお前は!?どうなっている!?』


流石のゴウライも目の前で大人に変身した相手を見て動揺を隠せず、その一方で少年から青年へと変化した相手を見てある事を思い出す。それは彼女がジャンヌと知り合ったばかりの頃、まだ彼女が剣聖の称号を得る前に聞いた話を思い出す。



――今から数年前、ゴウライはジャンヌが氷雨のギルドに入って来たばかりの頃、彼女の剣の相手をした事があった。ジャンヌが冒険者になったのは12才の頃からだったが、ゴウライは早い段階で彼女に剣の才能があると見抜き、直々に指導を行う。

ゴウライは見込みがある剣士を見つけると積極的に指導を行う癖があったが、彼女の指導はひたすらに自分と勝負を行わせるという内容だった。剣の指導というよりもゴウライが強い剣士と戦いたいという欲求を満たすために彼女は数多くの剣士と指導と称した試合を行う。殆どの剣士は彼女との戦闘に耐え切れずに逃げ出してしまうが、ジャンヌだけは違った。


『はあっ!!やあっ!!』
『ほほうっ!!面白い剣技だな、回転する事に威力と速度が上がるのか!!だが、まだまだ甘い!!』
『はうっ!?』


若い頃からジャンヌは二振りの旋斧を扱って戦っていたが、ゴウライとの勝負ではいつも彼女の圧倒的な剛剣に敵わずに敗れていた。それでも勝負を重ねる度にジャンヌの腕前も上達していき、徐々にだが剣技として完成の域に近付く。


『ま、参りました……』
『ふははっ!!今回は中々楽しめたぞ!!大分強くなったなジャンヌ!!』
『あ、ありがとうございます。ですが、まだまだです……』
『それにしてもお前の剣技は面白いな。いったい誰に習った?それとも我流か?』
『我流……ではありませんが、誰かに習ったというわけではありません。強いて言えば伝承を基に私が再現しました』
『ん?どういう意味だ?』


ジャンヌの扱う剣技は実を言えば彼女が編み出したわけではなく、かといって他者に学んだ剣技でもない。彼女は子供の頃に故郷に伝わる英雄の伝承を参考にして生み出した剣技だと語る。


『実は私の村にはある勇者様の伝承が伝わっているんです。その伝承によれば勇者様は剣とも斧とも呼べる武器を扱い、伝説の魔獣を打ち滅ぼしたという伝承があります』
『ほほう、それは面白そうな話だな。その勇者はどんな名前だ?』
『ナイ、という名前の勇者様だそうです。身の丈を上回る巨大な斧のような剣のような武器を扱い、巨大な怪物を倒して私の住む村を救ったという伝承が残っています。私の使う旋斧は勇者様の武器を参考にして作って貰ったんです』
『ナイ?随分と代わった名前だな。そんな勇者がいるとは初めて知ったぞ!!』
『え、ええ……他の勇者様と比べて知名度は低いみたいですね。でも、私の村ではどんな勇者様よりも立派なお方だと伝わっています!!』
『そ、そうか……それは凄いな』


普段は大人しいジャンヌだが、自分が尊敬する英雄の話になると熱く語る。それ以降もジャンヌは暇があればゴウライに英雄の話を伝えてきたが、彼女が語る話によると英雄は男性でありながら女性と見間違う程に美しい容姿をしており、そして彼女が扱う旋斧よりも巨大な武器を扱っていたという――





――ジャンヌの話を思い出したゴウライは目の前に立つ青年が彼女の言っていた「英雄」と瓜二つの容姿をしており、しかも扱う武器まで一緒だった。まさか何百年前に存在した英雄が今の時代まで生きていたとは思わないが、全くの無関係とも言い切れない。


(この男、まさかジャンヌの言っていた英雄か?だが、ジャンヌの話だと英雄は既に亡くなっているはず……はっ!?そ、そうか!!分かったぞ!!)


ゴウライは巨大な旋斧を手にした青年と向き合い、彼の正体を見抜いたとばかりに言い放つ。


『分かったぞ!!お前の正体は英雄ナイの子孫だな!!どうだ、当たっているだろう!?』
「…………?」
『ふはははっ!!図星で言葉も返せないか!!』


青年はゴウライの言葉に首を傾げるが、その反応を見てゴウライは自分の推理が当たって言い返す事もできないと勘違いする。そんな彼女に青年は心なしか眉をしかめ、彼女に武器を構えた。


「殲滅開始」
『ふふんっ、中々に骨がありそうな相手だ!!行くぞ!!』


英雄ナイと瓜二つの容姿をした青年が向かってくると、ゴウライはデュランダルを振りかざす。お互いに同時に踏み込むと武器を繰り出し、刃同士が接触した瞬間に激しい金属音と衝撃波が広がる。

ゴウライの剛剣に対して青年の方も負けじと張り合い、信じがたい事に二人の力は全くのだった。ゴウライの繰り出す攻撃を青年は正面から打ち返し、二人な何十号も打ち合う。


『ぬおおおおっ!!』
「っ……!!」


気合の込めた声を上げてデュランダルを振り翳すゴウライに対し、青年の方も無表情から一転して目つきを鋭くさせて打ち合う。二人の剣が交わる度に大地に衝撃が走り、金属音が鳴り響く。
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