不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

吸血鬼の災難

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――レナ達が去ってからしばらくした後、警備兵が路地裏に到着した。彼等は倒れているゲインを見て訝しげな表情を浮かべ、最初はこんな場所でどうして少年が気絶しているのか不思議に思う。


「このガキ、なんでこんな場所で寝てるんだ?」
「さあ……隊長、どうしますか?」
「とりあえずは起こしてやれ」


警備隊長は倒れているゲインを起こすように部下に命じたが、この時に部下の一人がゲインの手に剣が握りしめられている事に気が付く。剣は抜き身の状態だったため、少年を起こす前に先に剣を回収しようと手を伸ばす。


「おい、こいつ剣を持ってるぞ。もしかして冒険者か?」
「さあな、とりあえずは回収しておけ。もしかしたら犯罪者かもしれないぞ」
「まさか、こんな子供が……あれ?でもこいつの顔、何処かで見た覚えがあるような気がする」
「本当か?」


剣を回収しようとした兵士は少年の顔をじっと見ると、賞金首の手配書に彼と似たような顔立ちの犯罪者がいた事を思い出す。少年の正体を気付いた兵士は顔色が真っ青に染まった。


「待てよ、この顔はまさか……!?」
「おい、どうした?さっさと剣を取り上げろよ」
「待て!!その剣に触れるな!?」


ゲインの正体を思い出した兵士は相方が彼の剣を回収しようとした瞬間、それを止めようとしたが間に合わなかった。相方の兵士がゲインの手に触れた瞬間、彼の目が見開かれる。その瞳は紅色に輝き、自分を見下ろす兵士二人に対してゲインは倒れた状態のまま剣を振り払う。

兵士二人は屈んでいた状態だったのでゲインが繰り出した刃を避ける事ができず、彼等の首が吹き飛んで路地裏に大量の血液が飛び散る。首無しの兵士二人の死体が屈んだ状態のまま動かなくなり、死体から噴き出した血を浴びながらゲインは起き上がる。


「……ぺっ、やはり男の血はまずい。最悪な気分だ」
「はっ……な、何が起きた?」
「白状な男だね……配下が死んだのにそうやって立ち尽くしているだけかい?」


血を浴びた事でゲインは吸血鬼の力を覚醒させて復活し、胸元を抑えながら起き上がった。警備隊長は殺された兵士二人を見て唖然とするが、すぐに状況を理解して武器を構えた。


「き、貴様!?」
「はあっ、黙ってくれないかい?こっちは苛々してるんだ……これ以上に何か騒ぐなら殺すよ?」
「ひいっ!?」


剣鬼であるゲインに睨みつけられただけで警備隊長は恐怖のあまりに動けなくなり、一方でゲインの方は身体にこびり付いた血と剣を見て笑みを浮かべる。


「ふふふっ……あの少年、まさか僕が生きているなんて思いもしないだろうな。だが、顔は覚えた……今度は確実に殺す」


自分を倒したレナに対してゲインは激しい怒りを抱き、彼は消えたレナ達を追いかけようとしたが、ここで違和感を抱く。彼は自分の手にある剣に視線を向け、どうして剣の刃が元に戻っているのか気になった。

レナとの戦闘でゲインの所持していた剣は粉々に砕かれたはずだが、何故か全く元通りの状態に戻っていた。誰かが直して自分に持たせたのかと思ったが、粉々に砕けた剣を完璧に直せる人間がいるとは思えない。しかもどうして剣を直してゲインの手に戻したのか意味が分からない。


「くっ、頭が痛い。何なんだこれは……」
「……君が噂に聞く殺人鬼か?」
「っ!?」


背後から声を掛けられたゲインは反射的に振り返ると、いつの間にか槍を構えた男が立っていた。気配もなく自分の背後に立っていた男にゲインは恐怖を抱き、一方で男はを手にしていた。その槍を見た瞬間、ゲインは異様な寒気を覚えた。


(何だ!?あの槍は……それにこの男はいったいなんだ!?)


得体のしれない槍を持つ男の登場にゲインは恐怖し、そんな彼に対して男は槍を構えた。それを見たゲインは咄嗟に剣を構えるが、男はゲインに対して槍を突き出す。


「刺突」
「がはぁっ――!?」


次の瞬間、ゲインは胸元を槍に貫かれていた――





「――おい、坊主!!起きろ、こんな所でなにしてるんだ?」
「……えっ?」


男に心臓を貫かれたはずのゲインだったが、彼は気が付くと先ほど首を切ったはずの兵士の男に身体を抱えられていた。何が起きたのか分からずにゲインは呆然としていると、相方の兵士が彼に説明する。


「君はここで倒れていたんだよ。いったい何があってどうしてこんな場所で気絶してたわけ?」
「この剣は君の物かい?刃が砕けているが……」
「……あっ」


ゲインは兵士が持っている壊れた剣が自分の物である事に気が付き、ようやく彼は理解した。先ほどまでの出来事は全て夢であり、自分は夢の中で殺されたのだと思い出す。だが、夢にしては妙に現実感があってゲインは胸に手を押し当てる。


(今までのは夢……だったのか?いや、そうに決まっている)


自分の身に起きた出来事は全て夢だと解釈したゲインは安心するが、何故だか知らないがここに残るのはまずい気がした。彼は自分を起してくれた警備兵達を残し、路地裏の奥へ逃げ込む。


「ちょ、ちょっと君!!何処へ行くんだ!!」
「こら、戻ってきなさい!!」
「っ……!!」


今はともかくこの場から離れる事を優先し、武器を失ったゲインは警備兵を殺す事もせずに立ち去った――




※果たして彼が見たのは夢はだったのか……
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