不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,777 / 2,090
蛇足編

巨大スライム

しおりを挟む
「はあっ……結局、自分達でご飯を用意するしかないんですね」
「大丈夫、魚釣りは得意だから」
「ウォンッ」


これ以上の揉め事を避けるためにレナ達は冒険都市の外に移動し、食事のために魚釣りを開始する。釣りに必要な道具はレナが作り出し、皮の中に釣り糸を垂らす。魚釣りは森で暮らしていた時にも良くしており、それなりに釣りの腕には自信があった。


「レナさんならわざわざ釣りなんてしなくても魔法で魚を捕まえられるんじゃないですか?電撃を送り込めば簡単に魚を取れますよ」
「その方法だと、とんでもない数の魚を巻き込むだろ。それに人魚族が泳いでたらどうするんだ」
「コトミンさんじゃあるまいし、川を泳ぐ人魚なんて滅多にいませんよ」


人魚族は基本的には海や大きな湖に暮らすため、滅多に川を泳ぐ人魚族はいない。昔にレナはコトミンを奴隷商人から助けた後、二度目の再会の時に川で出会った事を思い出す。転移魔法の暴走で別れた時も獣人国の川でコトミンと再会しているため、こうして釣りをしていると彼女が出てきそうな気がする。


「懐かしいな、こうやって釣りをしていると昔を思い出す。元気にしてるかな、あの魚人族……」
「ちょっとその話気になるんですけど、何を釣ったんですか?」
「ウォンッ(イキのいい奴だった)」


魚釣りをしていた時にレナは謝って魚人族を釣った事もあり、正確は温厚な魚人族だったので事なきを得た。魚釣りの間はウルは寝そべり、その横でプルミンも昼寝する。


「ZZZ」
「こいつ、寝るのか……」
「これでも生物ですからね。でも、日向ぼっこの途中で眠ると大変です。水分が蒸発して死にかけますからね」
「怖いな!!」


ただの昼寝でもスライムにとっては命の危機に陥る事態もあり、ホネミンは眠っているプルミンを日影に移動する。魚が釣れるまではレナはホネミンと雑談を行うが、中々釣れる気配はない。

このまま魚が釣れなければ適当に食用になりそうな魔物を探して狩った方が効率的かと考えかけた時、いきなり竿が引っ張られた。大物の予感を感じたレナは力尽くで竿を引き寄せる。


「来た!!こいつは大物だぞ!!」
「やっとですか!!もうお腹ぺこぺこですよ!!」
「うおりゃあっ!!」


気合を込めてレナは魚を釣り上げようとすると、派手な水飛沫と共に川の中から出てきたのは巨大なマグロだった。川にマグロが泳いでいた事にレナは驚くが、とりあえずは陸上に釣り上げる。


「マグロ!?なんでマグロが泳いでるんだ!?」
「いえ、待ってください。このマグロはもしかして……」


陸に討ちあがったマグロはじたばたと跳ねるが、レナ達が近付くとマグロは青色に変色して形を変える。そして巨大なスライムへと変貌した。


「ぷる~んっ」
「うわっ!?馬鹿でかいスライム!?」
「マグロに擬態して泳いでいたみたいですね。流石に食べれそうにないですね」
「ぷるんっ!?」


マグロの正体は巨大スライムだと判明し、ホネミンはぺちぺちと叩くとスライムは怯えた様子でつぶらな瞳を向けてきた。僕を食べないでという風に見つめてくる巨大スライムにレナはため息を吐き出し、早く立ち去るように促す。


「仕方ないな、もうマグロなんかに変身するんじゃないぞ。変身するなら鮫にしなさい」
「ぷる~んっ(←頷く)」
「それはそれで問題になりそうですけどね。川を泳ぐ鮫なんて他の人間に知られたらちょっとした事件ですよ」


巨大スライムは川の中に戻るとそのまま姿を消し、もしかしたらスラミンの親戚かもしれないが今はスライムと愛でる暇はない。魚釣りを再開しようとレナは釣り道具に手を伸ばすと、巨大スライムが打ちあがった場所に何か煌めく物が落ちている事に気付く。

不思議に思ってレナは拾い上げると、それは水色の宝石が嵌め込まれた指輪だった。価値はかなり高い物だと思われ、どうしてこんな物が落ちているのかと不思議に思う。


「この指輪、あのスライムのかな?」
「スライムが指輪なんてするはずないですよ。マグロに変身していた時に川に落ちていた指輪を間違って飲み込んでいたんじゃないですか?」
「これどうしよう?かなり価値が高そうだけど……」
「さっきのスライムは上流から流れてきたようですし、もしかしたら川を遡れば落とし主が見つかるかもしれませんね。でも、それをするとまた食事が遅く……」
「ぷる~んっ!!」


会話の際中に先ほど川に帰ったはずの巨大スライムが出現し、岸に向けて口から大量の水を放つ。放たれた水の中には魚が数匹紛れ込んでおり、見逃してくれた代わりに魚を捕まえてくれたらしい。


「ぷるる~んっ」
「……これを食べろという事ですかね?」
「律儀な奴だな……まあ、有難く貰おうか」
「いや、これスライムが口に含んだ……」
「贅沢言うんじゃありません!!さあ、焼くぞ!!」
「ええっ……」
「ウォンッ(食べられればなんでもいい)」


指輪を落とした主を探す前にレナは手早く魚の調理を行い、腹ごしらえを済ませると川の上流へ向けて移動し、指輪の落とし主を探す事にした。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。