不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
1,790 / 2,090
蛇足編

螺旋槍の使い手

しおりを挟む
「さあ、次は誰だ?何だったら今度は全員がかりで来てもいいぞ?」
「じょ、冗談じゃねえ!!あんなのに勝てるか!!」
「お、お前行けよ!!」
「はあっ!?ふざけんな、お前の方こそ行けよ!!」


防御に特化した盾騎士の職業の男が敗れたのを見て他の者達は震え上がり、先ほどまでは自分が先に挑もうとしていたのに打って変わって逃げ腰になる。その一方でレナはホネミンと話し合う。


「あの人、もしかしてミナのお父さんかな?」
「さあ、どうですかね。でもあの独特の戦技はミナさんと縁のある人間の可能性は高いですね」


螺旋槍を繰り出した冒険者を見てレナはミナの父親かと思い、年齢的に考えても違和感はない。それはともかく、他の者が怯えて闘技台に上がらないため、この機会を逃さずにレナは挑む事にした。


「じゃあ、次は俺が行きます」
「ほう……」
「お、おい!?本気か!?」
「あれを見てもまだ戦えるのかよ……」
「ガキ!!せめて一発でやられるなよ!!そいつを疲れさせるまで戦え!!」


レナが闘技台に上がると他の者達は驚きの声をあげ、彼等の目から見ればレナはただの少年にしか見えない。しかし、冒険者の男はレナが闘技台に上がると表情を一変させた。


「君……只者じゃなさそうだね」
「どうですかね」
「ふふふ……これは楽しめそうだ」


優れた武芸者であるだけに冒険者はレナを見た時から只者ではないと感じていた。だが、それでも自分が勝利する事を疑わず、冒険者は槍を構えた状態で待ち構える。それを見たレナは空間魔法を発動させ、大剣を取り出した。


「うおっ!?な、何だ!?」
「急に剣が出てきたぞ!!」
「あいつ、まさか魔術師だったのか!?」


何もない空間から急に大剣が出現した事に周囲の人間は驚く中、冒険者は全く動揺せずにレナを見つめていた。内心は彼が魔法使いである事を知って驚いたが、決して表情には出さずに彼の出方を伺う。

待ち構えた状態の冒険者に対して大剣を手にしたレナは考え込み、どのように倒すべきかを悩む。ここで彼に大怪我を負わせると周りの人間が有利になるが、自分にヤジを飛ばしてくる男達のために戦う気にはなれない。


「よし、決めた」
「……決めた?何をだい?」
「貴方への勝ち方を決めました」
「ほう……」


レナの言葉に冒険者は冷や汗を流し、何故だか知らないがレナの言葉を否定する事ができなかった。自分が目の前にしているのはただの少年とは思えず、まるで自分が今までに一度も相対した事がない強大な存在と向かい合っている気分を味わう。

武器を手にした途端にレナの威圧感を感じ取った冒険者は無意識に後退り、この時にホネミンはレナが「威圧」の技能を発動している事に気が付く。他の人間はまだ気づいていないが、闘技台に立っている冒険者はレナの威圧を感じて追い詰められていく。


(な、何だこいつは!?)


先ほどまでは自分が勝利する事を疑わなかった冒険者だったが、レナを見ているだけで彼は異様な雰囲気を感じ取って今すぐに逃げ出したい気分を味わう。かつて彼は他の冒険者と共に牙竜に挑んだ事もあるが、それと同じぐらいの迫力を味わう。


(馬鹿な、この少年の強さは竜種に匹敵するという事か!?そんなのは有り得ない!!)


自分が恐怖している事を冒険者は認められず、彼は怒りを力に変えて恐怖を押し退けながら最強の必殺技を繰り出す。


「螺旋槍!!」
「――流水」


槍を高速回転させた状態で冒険者は突きを繰り出すと、それに対してレナは大剣を構えて螺旋の軌道を描く槍を簡単に受け流す。受け流しの戦技の上位互換である流水の戦技を利用し、完璧に相手の攻撃を別方向へ反らす。


(馬鹿なっ!?)


今までに一度も敗れた事がない螺旋槍をレナがあっさりと受け流した事に冒険者は目を見開き、そんな彼に対してレナは受け流した際の勢いを利用し、大剣を回転させて男の首元に目掛けて放つ。


「はああっ!!」
「ぐぅっ!?」


冒険者は自分の首が吹き飛ぶ光景が脳裏に思い浮かび、咄嗟に避けようとしたがその前にレナの大剣は首に触れる寸前で止まった。寸止めの状態で冒険者の男にレナは大剣を構えると、まだ続けるのかとばかりに視線を向ける。

首元に突きつけられた大剣に対して冒険者は動けず、やがて敗北を認めたかのように槍を手放す。闘技台の床に槍が落ちると、それを見たレナは大剣を下ろした。冒険者は顔色を青く染めた状態で呟く。


「……負けたよ、君の勝ちだ」
「ありがとうございました」
「……う、嘘だろ」
「あんなガキが……」
「か、勝ったのか?」


敗北を認めると冒険者はその場で膝を着き、周りの人間は目の前で何が起きているのか理解できなかった。まさか少年の方が鬼の様な強さを誇る冒険者に勝てるなど夢にも思わず、目の前の光景が信じられない。しかし、その中で一人だけ闘技台に乗り込む少女が居た。


「じゃあ、次は私の番ですね」
『えっ?』


当たり前のように闘技台に上がってきたのはホネミンであり、彼女の登場に驚いたのは周囲の挑戦者だけではなく、冒険者とレナも同じく驚く。
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。