不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

誤解だと言ってんでしょうが!!

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「あ、あり得ん!!聖剣の一撃を受けて何故立っていられる!?」
「……さあね」


魔鎧術と魔刀術を解除したレナは退魔刀を引き抜くと、物質変換の能力が解除されて元のオリハルコンの大剣へと変化した。この時にレナはオリハルコンを見つめ、とある事に気が付いた。


(しまった……退魔刀で受けるより、オリハルコンの大剣で受けた方が無事だったかも)


退魔刀はアダマンタイトで構成されているため、硬度に関しては世界一と言っても過言ではない。しかし、オリハルコンの方が魔法耐性が高いので聖剣の一撃も受け止め切れた可能性はあった。尤も物質変換の能力は途中で解除する事はできないため、今更気付いたとしても遅い。

ギランは自分の全力の一撃を防がれた事に動揺を示し、かつて聖剣の能力を解放して倒せなかった相手など一人も存在しなかった。しかし、目の前に立つ少年はあろう事か正面から聖剣の一撃を受けて耐え切った。


「小僧……何者だ!?」
「……その前に言う事があるんじゃないんですか?」
「何だと?」
「誤解してごめんなさい、だよ!!」


一方的に攻撃を仕掛けてきたギランに対してレナも流石に我慢の限界を迎え、彼に目掛けて踏み込むと大剣を繰り出す。咄嗟にギランはレナの攻撃を受け止めたが、先ほどよりも確実に重さが増していた。


「ぬうっ!?」
「最初から、話を、聞け!!」
「ぐぐぐっ……!?」


レナの猛攻にギランは防戦一方で有り、彼の攻撃を受ける度に重さと速さが増していく。ここまでの強敵と戦うのはギランも久しぶりで有り、徐々に後退していく。


「き、貴様……誰だ!?」
「あんたの、恋人の指輪を、返しに来ただけだよ!!」
「こ、恋人!?」
「レナさん!!落ち着いて下さい!!」
「ギラン様、お辞め下さい!!」


鍔迫り合いの状態に陥ったギランとレナの元にホネミンとミズネが駆けつけ、この時にミズネの指には指輪が装着されていた。それを見たギランは目を見開き、その指輪はかつてギランがミズネに渡した物であった。


「そ、その指輪は……」
「ギラン様、落ち着いて聞いて下さい!!その方たちは私の指輪を渡しに来てくれただけです!!それに先ほどあそこにいる男達に誘拐されかけた私を助けてくれたんです!!」
「な、何だと!?」
「ふうっ、ふうっ……」
「どうどう」


事情を察したギランは驚いて武器を下ろすと、ホネミンはレナを羽交い絞めにして彼を落ち着かせた――





――ホネミンが目を覚ましたミズネに全ての事情を話し、指輪を返した事でミズネは彼女の話を信じてくれた。ギランはミズネに止められてようやく自分が誤解していた事を知り、危うく恋人を救ってくれた者を殺すところだったと知って反省した。


「申し訳ない!!俺は何という過ちを……」
「どうかギラン様をお許しください!!この通りです!!」
「いえ、別に気にしないでください」
「そうそう、こうして私もレナさんも無傷ですし……今回の事は気にしないでください」


酒場の中でレナはギランとミズネに頭を下げられ、興奮が収まったレナはギランの事を許す事にした。聖剣を使われて死にかけた事で激怒したが、誤解も解けた以上はこれ以上に長居はするつもりはない。

ギランとしては自分の過ちを償いたい所だが、今のレナ達には時間はない。用事が住んだ以上は早々に元の時代に戻らなければならず、話を切り上げて戻ろうとした。


「それでは私達は急ぐのでこれで失礼します」
「何!?もう行かれるのか?」
「お詫びがしたいのですが……」
「その言葉は有難いんですけど、こっちも急ぎ旅なので……」


レナとホネミンはこれ以上の厄介事に巻き込まれる前に退散しようとしたが、ギランはレナの腕を掴んで引き留めた。


「待ってくれ!!その前に君の名前と何処から来たのか教えてくれないか?あれほどの剣の腕、それに魔法剣も使っていただろう?」
「ああ、いや……あれはヨツバ王国に伝わる剣技なので」
「ヨツバ王国!?君はヨツバ王国の剣士なのか?だが、ヨツバ王国には人間はいないはずでは……」
「ちょっと事情がありまして……とにかく、僕はヨツバ王国に戻ります」
「そ、そうか……」


ヨツバ王国に戻る事は嘘ではないため、レナはギランにそう伝えると彼も引き留める事はしなかった。レナが自国の民ならばなんとしても引き留め、彼の剣の腕を見込んで王国の兵士にならないか誘うつもりだったが、他国の人間となれば強制はできない。


「じゃあ、私達はこれで失礼します。御二人とも仲睦まじく暮らしてください」
「え?あ、ありがとうございます……」
「……もしも二人にお子さんが生まれたら、立派な剣士に育ててください」
「な、何を言われるか!?」


去り際にレナとホネミンはにやにやとした表情でギランとミズネに告げると、二人は急いでその場を後にした――





※少々駆け足になりましたがもう少しで過去編も終わります。
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