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蛇足編
風の車輪
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――風の精霊の力を借りれるようになった後、レナはマリアの元で指導を受けていた。色々と試した結果、レナの精霊魔法は攻撃よりも補助に扱う方が一番に役立つ。
『貴方の本職は支援魔術師、必然的に攻撃魔法よりも補助魔法を得意とする。それならば自分の長所を生かしなさい』
マリアの指導の元、レナは精霊魔法を利用して新しい魔法を生み出す。残念ながらシュンやハヤテのように風の斬撃を飛ばしたりする事はできないが、その代わりに二人にはできない方法でレナは新しい魔法を生み出す。
「風輪……とでも名付けようかな」
両足に風の渦巻を纏わせる事で高速移動が可能と成り、縮地ほど早くはないが常に移動し続ける事ができる。この魔法のお陰で無駄に体力も消費せずに移動を行えるようになり、迫りくる砂船に向かう。
流石に正面から突っ込むわけにはいかず、レナは砂船の側面へ移動を行う。今から砂船を止めるには乗船して舵を切るだけでは間に合わず、魔法の力で押し留めるしかない。
「ダインが居ればこれぐらいの船なんて止めれたんだろうけど……な!!」
影魔法の使い手であるダインならばもしかしたら砂船を止める事ができたかもしれず、彼が影魔法で巨大な影人形を作り出せば砂船を食い止められた可能性は十分にある。しかし、ダインのように影魔法を扱えないレナは自分の魔法で何とかしなければならない。
砂船を止めるためには船の勢いを落とすしかなく、岩山に激突する前に船を食い止めなければならない。そこでレナは砂船の側面に移動し、風輪を利用して船の側壁を駆け上がって船首へと移動を行う。
『風よ、力を!!』
船首に移動したレナは両手を前に構えると風の精霊を呼び出し、精霊魔法の力で大きな風の渦巻を作り出す。その結果、前方に発生した風圧によって一気に船の移動速度が低下し、岩山に衝突する前に船の移動速度を格段に落とす。
どうにか船の移動速度を落とした後、レナは今度は砂船から離れて岩山へと向かう。その途中で両手を地面に押し当てながら初級魔法の「土塊」を発動させた。
「これでどうだ!?」
砂船が衝突する前にレナは砂漠の砂を利用し、大量の砂をかき集めて砂山を作り上げる。岩山の前に現れた砂山がクッションの代わりとなり、砂船の正面衝突を防ぐ。
「わああっ!?」
「ティナ様、御下がりください!!」
「な、何だ!?何が起きてるんだ!?」
レナの活躍によって砂船が岩山に正面衝突は免れたが、砂船が砂山に突っ込んだせいで大量の砂が舞い上がる。視界が砂煙に封じられ、岩山に居た者達は慌てて避難する。
「ふうっ……一応、止まったか」
『油断しないでください!!敵が近付いています!!』
砂船を食い止めた事で安堵しかけたレナだったが、アイリスの声が聞こえて彼は顔を上げた。砂煙のせいで視界は何も見えないが、気配感知と魔力感知を発動させて様子を伺う。
(何だ!?何かが近付いている!?)
砂船の後方から竜種のように強力な気配と魔力を感知したレナは危機感を抱き、まずは邪魔な砂煙を吹き飛ばすために退魔刀を抜く。風の魔法で吹き飛ばすより、剣圧による一撃で砂煙を振り払う。
「おらぁっ!!」
退魔刀を全力で振りかざすと、凄まじい剣圧によってレナの正面の砂煙が晴れた。彼は何時の間にか砂船の甲板に乗り込んでおり、砂山で砂船を食い止める際に気付かぬうちに砂船の上に着地していたらしい。甲板には船乗りたちが倒れており、それを見たレナは声を掛ける。
「大丈夫ですか!?」
「う、ううっ……に、逃げろ!!早く逃げるんだ!?」
「奴がすぐそこまで迫ってる!!こ、殺されるぞ!?」
「えっ?」
錯乱しているのか船員は砂船が停止した瞬間、甲板から飛び降りようとした。だが、それを見たレナは慌てて彼等を止める。アチチ砂漠の砂は「砂海」と称される程に砂粒が細かく、何の装備も無しに飛び込めば人間など簡単に飲み込まれてしまう。
「落ち着いて下さい!!この高さから飛び降りたら生き埋めになりますよ!?」
「は、離せ!!どうせここに残っても殺されるだけなんだ!!」
「殺されるって……」
「く、来るぞ!!奴が姿を現す!!」
砂船の後部に乗っている船員が大声をあげ、レナは視線を向けると砂船の後方の砂丘が盛り上がっている事に気が付く。まるで地中から巨大な何かが姿を現わそうとしているように見え、嫌な予感を抱いたレナは退魔刀を構える。
――オァアアアアアッ!!
地中から姿を現わしたのは全身がゴーレムのように岩石の外殻に覆われた巨大な鯨であり、火竜の何倍もの大きさを誇る。炎龍や古代龍ほどではないがこれほどまでに巨大な魔物など竜種以外で見たのはレナも初めてだった。
地竜の成体よりも大きな鯨を見てレナの脳裏に最初に浮かんだのは「土鯨」なる魔物の名前だった。アチチ砂漠には土鯨と呼ばれる魔物が潜んでいるという噂を聞いているが、まさか本当にいた事に驚きを隠せない。しかも土鯨は真っ直ぐに砂船に向かってきた。
『貴方の本職は支援魔術師、必然的に攻撃魔法よりも補助魔法を得意とする。それならば自分の長所を生かしなさい』
マリアの指導の元、レナは精霊魔法を利用して新しい魔法を生み出す。残念ながらシュンやハヤテのように風の斬撃を飛ばしたりする事はできないが、その代わりに二人にはできない方法でレナは新しい魔法を生み出す。
「風輪……とでも名付けようかな」
両足に風の渦巻を纏わせる事で高速移動が可能と成り、縮地ほど早くはないが常に移動し続ける事ができる。この魔法のお陰で無駄に体力も消費せずに移動を行えるようになり、迫りくる砂船に向かう。
流石に正面から突っ込むわけにはいかず、レナは砂船の側面へ移動を行う。今から砂船を止めるには乗船して舵を切るだけでは間に合わず、魔法の力で押し留めるしかない。
「ダインが居ればこれぐらいの船なんて止めれたんだろうけど……な!!」
影魔法の使い手であるダインならばもしかしたら砂船を止める事ができたかもしれず、彼が影魔法で巨大な影人形を作り出せば砂船を食い止められた可能性は十分にある。しかし、ダインのように影魔法を扱えないレナは自分の魔法で何とかしなければならない。
砂船を止めるためには船の勢いを落とすしかなく、岩山に激突する前に船を食い止めなければならない。そこでレナは砂船の側面に移動し、風輪を利用して船の側壁を駆け上がって船首へと移動を行う。
『風よ、力を!!』
船首に移動したレナは両手を前に構えると風の精霊を呼び出し、精霊魔法の力で大きな風の渦巻を作り出す。その結果、前方に発生した風圧によって一気に船の移動速度が低下し、岩山に衝突する前に船の移動速度を格段に落とす。
どうにか船の移動速度を落とした後、レナは今度は砂船から離れて岩山へと向かう。その途中で両手を地面に押し当てながら初級魔法の「土塊」を発動させた。
「これでどうだ!?」
砂船が衝突する前にレナは砂漠の砂を利用し、大量の砂をかき集めて砂山を作り上げる。岩山の前に現れた砂山がクッションの代わりとなり、砂船の正面衝突を防ぐ。
「わああっ!?」
「ティナ様、御下がりください!!」
「な、何だ!?何が起きてるんだ!?」
レナの活躍によって砂船が岩山に正面衝突は免れたが、砂船が砂山に突っ込んだせいで大量の砂が舞い上がる。視界が砂煙に封じられ、岩山に居た者達は慌てて避難する。
「ふうっ……一応、止まったか」
『油断しないでください!!敵が近付いています!!』
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砂船の後方から竜種のように強力な気配と魔力を感知したレナは危機感を抱き、まずは邪魔な砂煙を吹き飛ばすために退魔刀を抜く。風の魔法で吹き飛ばすより、剣圧による一撃で砂煙を振り払う。
「おらぁっ!!」
退魔刀を全力で振りかざすと、凄まじい剣圧によってレナの正面の砂煙が晴れた。彼は何時の間にか砂船の甲板に乗り込んでおり、砂山で砂船を食い止める際に気付かぬうちに砂船の上に着地していたらしい。甲板には船乗りたちが倒れており、それを見たレナは声を掛ける。
「大丈夫ですか!?」
「う、ううっ……に、逃げろ!!早く逃げるんだ!?」
「奴がすぐそこまで迫ってる!!こ、殺されるぞ!?」
「えっ?」
錯乱しているのか船員は砂船が停止した瞬間、甲板から飛び降りようとした。だが、それを見たレナは慌てて彼等を止める。アチチ砂漠の砂は「砂海」と称される程に砂粒が細かく、何の装備も無しに飛び込めば人間など簡単に飲み込まれてしまう。
「落ち着いて下さい!!この高さから飛び降りたら生き埋めになりますよ!?」
「は、離せ!!どうせここに残っても殺されるだけなんだ!!」
「殺されるって……」
「く、来るぞ!!奴が姿を現す!!」
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――オァアアアアアッ!!
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地竜の成体よりも大きな鯨を見てレナの脳裏に最初に浮かんだのは「土鯨」なる魔物の名前だった。アチチ砂漠には土鯨と呼ばれる魔物が潜んでいるという噂を聞いているが、まさか本当にいた事に驚きを隠せない。しかも土鯨は真っ直ぐに砂船に向かってきた。
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イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
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