不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

本気出していいよね?

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「という事で俺が戦います」
「……いいでしょう。貴方とは一対一で戦いたかった」


試合場にレノが上るとヨシテルは真剣な表情を浮かべ、彼は居合の構えを取った。それを見たヨシアキは本気でヨシテルがレナを切るつもりだと知って慌てふためく。


「あ、兄上!?まさか本気で戦うおつもりですか!?」
「下がっていなさいヨシアキ……邪魔をすればお前でも私は容赦はしない」
「ひいっ!?」


ヨシテルが本気で戦おうとしている事を知ってヨシアキは恐怖するが、一方でレナはヨシテルとの距離を見測り、念のために最後の確認を行う。


「ヨシテルさん。本気を出していいんですよね?」
「……?」
「本当に本気を出していいんですか?」
「ええ、構いませんよ」


レナの言葉にヨシテルは最初は疑問を抱くが、挑発の類かと判断して承諾した。しかし、すぐにそれが誤りだと彼は思い知る事になる。レナはヨシテルの許可を得ると、見学している兵士達に話しかけた。


「すいません!!誰か木刀を二つ貸して下さい!!」
「ぼ、木刀?」
「えっと、それはどういう……」
「……構いません。貸してあげなさい」


意図は掴めないがレナの要望に応えるようにヨシテルは告げると、兵士達は訓練用の木刀をレナに投げ渡す。木刀を受け取ったレナは強度を確認するように木刀同士を叩きつけると、想像以上に頑丈な事に気が付く。


「結構硬いですねこれ」
「それはヨツバ王国から輸入している硬樹と呼ばれる樹木を削り取って作り出した木刀です。使い方によっては鋼鉄をも凹ませる事はできます。尤も、私の刀には及びませんが」
「なるほど」


ヨシテルが身に着けている刀は和国の名工に作らせた一品であり、魔剣や聖剣の類ではないが和国でも指折りの名刀である。そんな武器に対してレナは訓練用の木刀を手にすると、改めてヨシテルと向かい合う。

相手が間合いに入るまではヨシテルは動かず、万全の状態で待ち構えた。ヨツバ王国の居合の達人であるハヤテとは違い、ヨシテルは決して動かずに相手が動くのを待ち構える。ハヤテと違って彼は風の斬撃を飛ばせないので下手に近付けば攻撃はされない。だが、不用意に踏み込めば確実に返り討ちに遭う。


(この威圧感、流石は和国の将軍だな)


表面上は普通に接しているがレナはヨシテルと向かい合っているだけでまるで大型の魔物と対峙したような威圧感を覚えた。ヨシテルの刀の届く範囲に踏み込んだらレナは自分の身体が切り裂かれるだろう。


「じゃあ、行きますよ」
「いつでもどうぞ」


レナが木刀を構えるとヨシテルは笑みを消して真剣な表情で彼を見つめる。相手が木刀であろうとヨシテルは油断せず、万全な状態を保ったまま動かない。先手はレナに譲り、彼が攻撃した次の瞬間にヨシテルはレナを切り伏せる自信はあった。

だが、そんなヨシテルの思惑とは裏腹にレナは木刀に魔力を流し込んで「物質変換」の能力を発動させた。周囲の人間の目にはレナの木刀が別の武器に造り替えられる光景が広がり、数秒後にはレナの手元には美しい二つの剣が握りしめられていた。


「ふうっ……こんなもんかな」
「なっ!?」
「ま、まさかあれは……」
「せ、聖剣か!?」


木刀を物質変換の能力でレナは別の武器に造り替え、彼が生み出したのは「聖剣カラドボルグ」と「聖剣エクスカリバー」だった。聖剣を作り上げた彼を見てヨシテルは動揺し、兵士達も驚愕の表情を浮かべた。聖剣の存在は和国でも有名であり、二つの聖剣を手にしたレナを見てヨシテルは冷や汗を流す。


「何を……!?」
「はぁああああっ!!」


カラドボルグとエクスカリバーを手にしたレナは天に構えると、二つの刃を重ね合わせた状態で振り下ろす。それを見た他の者達は慌てて距離を取り、二つの聖剣から雷撃と光の一撃が繰り出された――





――数秒後、訓練場の試合場は倒壊した。試合場は十字を思わせる巨大な跡だけが残り、ヨシテルは試合場から離れた場所でへたりこんでいた。もしも彼が逃げるのが遅ければ今頃は聖剣の斬撃で消し飛んでいた。


「な、なんとむちゃくちゃな……!?」


逃げるのに必死だったヨシテルは試合場から下りてしまい、彼は全身から冷や汗を流す。一瞬でも判断を送れていたらヨシテルは間違いなく死んでいた。兵士達も危うく巻き込まれる所だったが、奇跡的に全員が無事だった。


「な、何だ今のは……」
「この威力、まさか本当に聖剣なのか!?」
「あ、兄上!!ご無事ですか!?」
「え、ええ……待て、彼は何処に!?」


ヨシアキの言葉を聞いてヨシテルは立ち上がろうとしたが、ここでレナの姿が見えない事に気が付く。ヨシテルは慌てて探し出そうとしたが、何者かが彼の背後に立って木刀を首元に押し付ける。


「勝負あり、ですよね」
「なっ!?」


ヨシテルは何時の間にか自分の背後にレナが立っている事に気が付き、首元に木刀を押し付けられた彼は敗北を認めるしかない状況に追い込まれていた。
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