不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

閑話 《ミレトの人生》

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(母さんは本当に僕の絵を描こうとしたのかな……それとも、あの人の絵?)


空白の額縁を見てミレトは考え込み、自分かそれともレナの絵を描こうとしたのか考える。だが、いくら考えたところで答えを知っているのは死んだイレアビトだけだった。


(……もういいや)


ミレトは時の聖痕の影響で普通の子供よりも成長は早いが、精神的にはまだまだ子供である。だから難しいことを考え続けるのをやめ、彼は自分の母親に拘ることを止めた。これからは自分の人生を歩むために亡き母親のことを考えるのは止めた。


「アマネさん、カノンさん、僕はもう帰ります」
「は!?」
「帰るだと?いったい何処へ……」
「もうここには用はありませんから」


いきなりとんでもないことを言い出したミレトに二人は戸惑うが、最後にミレトは母親にそっくりなサクラと向き合う。彼女とイレアビトは外見は瓜二つだがミレトはサクラを初めて見た時から母親とは違うと思った。


「サクラさん、色々と教えてくれてありがとうございました」
「……まさか生きている内に甥と出会えるとは思わなかったわ」


サクラは虚ろな瞳でミレトを見下ろし、彼の元に近付いて抱きしめた。唐突に自分に抱きついてきたサクラにミレトは驚くが、不思議と嫌ではなかった。サクラは優し気な表情を浮かべながらミレトの頭を撫でる。


「貴方を縛る人間はもういなくなった。これからは自由に生きなさい」
「サクラさん……」
「叔母さんでいいわ」


自分を手駒として扱われていることを知りながらもサクラがイレアビトのために働いていたのは彼女を恐れていただけではなく、家族として姉のことを愛していた。サクラは姉の忘れ形見であるミレトを励まし、これからは彼の好きに生きる様に促す。


「ミレト、貴方に出会えて良かった」
「叔母さん……ありがとうございます。僕も貴方に出会えて良かったです」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!?あんたまで行ったら私はどうすればいいのよ!?この国では指名手配犯なのよ!?」
「他国にでも逃げればいい……ここまでの報酬だ」
「きゃっ!?」


アマネは懐から小袋を取り出し、それをカノンに投げ渡した。いきなり渡された小袋にカノンは驚いたが、中身を見ると大量の金貨が入っていた。これだけあれば逃亡資金には十分であり、彼女は酷く混乱する。


「あ、あんた……こんな大金を持ってたの!?」
「王妃様の遺産が金目の物ではないことは分かっていた。だから後で文句を言われないように私が城から抜け出す際に金庫から盗んできた金を用意してやった。有難く思え」
「こ、この……まあいいわ」


莫大な遺産が手に入ると思い込んでいたカノンは怒りに震えるが、手元の小袋を見て機嫌を直す。彼女がミレトとアマネに付き合う理由はなくなり、早々に立ち去ることにした。


「私は行かせてもらうわ!!私もこれからは自由よ!!」
「逃亡犯が何を言っている……ミレト、私はここに残る。王妃様の遺産を守りたい。お前も困ったことがあったらここへ来い」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です……僕は王都へ戻ります」
「王都へ?何をしに行くつもりだ?」
「やりたいことが決まったんです」


カノンは国外逃亡を決め、アマネは孤児院を守り、そしてミレトは王都へ戻る――






――王都へと帰還したミレトは兵士として志願した。彼の新しい目標は誰よりも尊敬して愛していた父親の「ミドル」の後を継ぎ、自分も大将軍となるべく冒険者の職を止めて兵士となった。


「ミレト!!しっかり付いて来い!!」
「遅れたらもう一周だぞ!!」
「は、はい!!」


他の兵士と共にミレトは訓練を行い、もう彼が王子であることに気付く人間はいない。それでもミレトは満足だった。これからは自分の意思で生きていけることに嬉しく思い、そして何時の日か父親やレナを越える武人になると誓う。


(僕の人生はここからなんだ!!)


この10年後、ミレトはバルトロス王国の大将軍へ就いた。歴史上では彼が王子である事実は記されず、父親を越える伝説の武人として語り継がれる――




※これにて不遇職の物語は完結とさせていただきます。ここまでお読みくださりありがとうございました!!
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