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闘人都市編
迷宮攻略編6
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「……熱い」
右腕に巻き付く銀の鎖は発熱をし続けながらも、レノは鬱陶しさを感じながらも先を進んでいた。二つの聖剣を吸収してから10分は経つが、未だに熱は収まず、火傷するほどの熱量ではないが、何時までも熱が冷めない金属を身体に巻き付かせるのはかなりのストレスが蓄積する。
あの後、勝手に聖剣を吸収した「聖爪」を回収し、すぐに透明化を試みたがどういう訳か反応せず、仕方なく結合されている銀の鎖ごと実体化させたまま歩いていた。
先ほどの死人が向かった通路側はすぐに行き止まりになっており、だからこそあの死人は引き換えってレノと相対したのだろう。ちなみに残骸からは最初の死人の死体と同じく、特に回収できそうなものは見当たらない。
仕方なく、最初の広間に戻ると残りの3つの通路から適当に選び直して先に進んでいるのだが、レノが選んだ通路は延々と真っ直ぐに続く通路が何時までも続いていた。
「どこまで歩けばいいんだ……?」
完全にアイリィからはぐれてしまったので、自分が迷子で居る事は間違いない。一応は今まで辿った道は覚えているが、あの赤いスライムを何とかしない限りは井戸に繋がる蔓の梯子までは戻れない。レノの魔法や、この「聖爪」ではスライムに対して致命傷を与えられず、一気に液体を蒸発させるだけの「火属性」の魔法ではない限り、スライムには通用しない。
「……?」
通路を歩き続けてから十数分は経つが、妙な違和感を感じ取る。最初は似たような造りの壁が続いていると思っていたが、どうにも先ほどから同じ場所を歩き回っている感覚に陥る。一本道であるため、そんな事が有り得るはずがないのだが、試しにレノは右腕の「銀の鎖」を発動させる。
「行け!」
ジャラララッ……!!
「銀の鎖」を前方に向けて射出し、延々と鎖を伸ばす。もしもレノの予測が正しければ、後方を振り返り、やがて30秒ほど経過と、
ジャラララッ――!!
「……やっぱりか」
バシィッ!!
レノの後方から、先ほど射出させたはずの銀の鎖と結合された聖爪(ネイルリング)が出現し、それを難なく左手で鎖の部分を掴み取る。同時に右腕が引っ張られる感覚が襲い掛かり、間違いなく、この握りしめている聖爪は自分が未だに延々と伸ばしている銀の鎖と同一物である事は間違いない。
「……戻れ!!」
左手で握りしめた鎖を解放し、右腕の銀の鎖を回収する作業を行うと、やはり後方から向かってきた鎖が引き戻され、10秒もしないうちに今度は前方から伸ばした鎖が戻ってくる。
間違いなく、レノは現在空間に干渉する魔術式の罠に引っ掛かっており、延々と同じ通路を歩き回っていたと思っていたが、どうやら本当に同じ場所を徘徊していたらしい。前方から放ったはずの「銀の鎖」が後方から現れたところ、空間を捻じ曲げらているのは間違いない。
前方も後方も、どちらに進んでもいずれは元の場所を延々と歩き続ける羽目になり、恐らくこの通路全体が罠であり、入り込んだ時点でレノがは罠に引っ掛かっていたのだ。
「どうすればいいのかね……」
上を見上げると何時の間にか天井らしき物が広がっており、脱出は不可能。試しに壁を破壊しようと左腕を向け、
「雷槍」
バチィイイイッ!!
撃雷よりも貫通性に優れた「雷の槍」を左腕全体に纏わせ、白狼の肉体さえも貫通した魔法を勢いよく壁に叩き付けようとするが、
バシュウウゥッ!!
「うわっ!!」
奇怪な音を生じさせ、雷と嵐で形成された槍が迷宮の壁に触れた途端、一瞬で消散する。レノは慌てて拳を引き止め、どうやらミキから受け取った短剣のように、あらゆる魔法を無効化する「魔力不可(キャンセル)」と呼ばれる現象が起きるらしい。
何らかの特殊な魔術式が刻まれているのか、それとも魔法を無効化する特殊金属なのかは分からないが、これではどうしようもない。先ほどの「サイクロプス」が攻撃した際も罅1つ入らなかったところを見ると相当に頑丈な素材で出来ている。
退路は封じられ、魔法で壁を破壊する事も不可能。完全に八方ふさがりの状況にレノはその場にへたり込む。よくよく考えれば、先ほどから魔物の類とも出会っていないのに随分と疲労している気がする。
「……参ったな……空間魔法か」
無属性の中でも異質な魔法であり、文字通り空間を屈折させる高等魔法だ。当然「転移」や「転送」も「空間魔法」の類に入る。ここまで高度な罠に嵌められた以上、外部からの助けがない限りはどうする事も出来ない。こちらも空間魔法を使えれば話は別だが――
「あっ……」
ここで自分にまかれている「銀の鎖」に気が付く。一度だけこの鎖を使用して「転移魔方陣」を使用し、この放浪島に戻ってきた時を思い出す。だが、あの時は「聖痕」とアイリィの助力があったからこそ成功したのであり、レノの単独の魔力では「転移魔方陣」は展開できないと釘を刺されたが、
「やってみるか……」
現在の銀の鎖は何もしていないのに発熱しており、これは大分前に初めてクズキから受け取った「魔石」を使用した際に感じ取った「魔力暴走」と似ている。
あの時は無理に魔石の魔力を使用していたため、魔石が耐え切れずに熱を放っていただけだが、今回は銀の鎖そのものに大きな「聖属性」の魔力が感じ取れる。先ほどの二つの聖剣を吸収したことが関係しているのは間違いないだろう。
今の銀の鎖は結合されている聖爪を通して、聖剣の欠片を吸収した事で多大な魔力を蓄積している状態であり、鎖が発熱している理由は魔力暴走で間違いない。ならば、その蓄積された聖剣の魔力を使用すれば転移魔法陣を展開できるのではないかと考え付き、
「……展開!!」
ジャラララッ!!
レノは地面に向けて「銀の鎖」を解き放ち、一か八かす記憶に鮮明に残っている「転移魔方陣」を描く――
右腕に巻き付く銀の鎖は発熱をし続けながらも、レノは鬱陶しさを感じながらも先を進んでいた。二つの聖剣を吸収してから10分は経つが、未だに熱は収まず、火傷するほどの熱量ではないが、何時までも熱が冷めない金属を身体に巻き付かせるのはかなりのストレスが蓄積する。
あの後、勝手に聖剣を吸収した「聖爪」を回収し、すぐに透明化を試みたがどういう訳か反応せず、仕方なく結合されている銀の鎖ごと実体化させたまま歩いていた。
先ほどの死人が向かった通路側はすぐに行き止まりになっており、だからこそあの死人は引き換えってレノと相対したのだろう。ちなみに残骸からは最初の死人の死体と同じく、特に回収できそうなものは見当たらない。
仕方なく、最初の広間に戻ると残りの3つの通路から適当に選び直して先に進んでいるのだが、レノが選んだ通路は延々と真っ直ぐに続く通路が何時までも続いていた。
「どこまで歩けばいいんだ……?」
完全にアイリィからはぐれてしまったので、自分が迷子で居る事は間違いない。一応は今まで辿った道は覚えているが、あの赤いスライムを何とかしない限りは井戸に繋がる蔓の梯子までは戻れない。レノの魔法や、この「聖爪」ではスライムに対して致命傷を与えられず、一気に液体を蒸発させるだけの「火属性」の魔法ではない限り、スライムには通用しない。
「……?」
通路を歩き続けてから十数分は経つが、妙な違和感を感じ取る。最初は似たような造りの壁が続いていると思っていたが、どうにも先ほどから同じ場所を歩き回っている感覚に陥る。一本道であるため、そんな事が有り得るはずがないのだが、試しにレノは右腕の「銀の鎖」を発動させる。
「行け!」
ジャラララッ……!!
「銀の鎖」を前方に向けて射出し、延々と鎖を伸ばす。もしもレノの予測が正しければ、後方を振り返り、やがて30秒ほど経過と、
ジャラララッ――!!
「……やっぱりか」
バシィッ!!
レノの後方から、先ほど射出させたはずの銀の鎖と結合された聖爪(ネイルリング)が出現し、それを難なく左手で鎖の部分を掴み取る。同時に右腕が引っ張られる感覚が襲い掛かり、間違いなく、この握りしめている聖爪は自分が未だに延々と伸ばしている銀の鎖と同一物である事は間違いない。
「……戻れ!!」
左手で握りしめた鎖を解放し、右腕の銀の鎖を回収する作業を行うと、やはり後方から向かってきた鎖が引き戻され、10秒もしないうちに今度は前方から伸ばした鎖が戻ってくる。
間違いなく、レノは現在空間に干渉する魔術式の罠に引っ掛かっており、延々と同じ通路を歩き回っていたと思っていたが、どうやら本当に同じ場所を徘徊していたらしい。前方から放ったはずの「銀の鎖」が後方から現れたところ、空間を捻じ曲げらているのは間違いない。
前方も後方も、どちらに進んでもいずれは元の場所を延々と歩き続ける羽目になり、恐らくこの通路全体が罠であり、入り込んだ時点でレノがは罠に引っ掛かっていたのだ。
「どうすればいいのかね……」
上を見上げると何時の間にか天井らしき物が広がっており、脱出は不可能。試しに壁を破壊しようと左腕を向け、
「雷槍」
バチィイイイッ!!
撃雷よりも貫通性に優れた「雷の槍」を左腕全体に纏わせ、白狼の肉体さえも貫通した魔法を勢いよく壁に叩き付けようとするが、
バシュウウゥッ!!
「うわっ!!」
奇怪な音を生じさせ、雷と嵐で形成された槍が迷宮の壁に触れた途端、一瞬で消散する。レノは慌てて拳を引き止め、どうやらミキから受け取った短剣のように、あらゆる魔法を無効化する「魔力不可(キャンセル)」と呼ばれる現象が起きるらしい。
何らかの特殊な魔術式が刻まれているのか、それとも魔法を無効化する特殊金属なのかは分からないが、これではどうしようもない。先ほどの「サイクロプス」が攻撃した際も罅1つ入らなかったところを見ると相当に頑丈な素材で出来ている。
退路は封じられ、魔法で壁を破壊する事も不可能。完全に八方ふさがりの状況にレノはその場にへたり込む。よくよく考えれば、先ほどから魔物の類とも出会っていないのに随分と疲労している気がする。
「……参ったな……空間魔法か」
無属性の中でも異質な魔法であり、文字通り空間を屈折させる高等魔法だ。当然「転移」や「転送」も「空間魔法」の類に入る。ここまで高度な罠に嵌められた以上、外部からの助けがない限りはどうする事も出来ない。こちらも空間魔法を使えれば話は別だが――
「あっ……」
ここで自分にまかれている「銀の鎖」に気が付く。一度だけこの鎖を使用して「転移魔方陣」を使用し、この放浪島に戻ってきた時を思い出す。だが、あの時は「聖痕」とアイリィの助力があったからこそ成功したのであり、レノの単独の魔力では「転移魔方陣」は展開できないと釘を刺されたが、
「やってみるか……」
現在の銀の鎖は何もしていないのに発熱しており、これは大分前に初めてクズキから受け取った「魔石」を使用した際に感じ取った「魔力暴走」と似ている。
あの時は無理に魔石の魔力を使用していたため、魔石が耐え切れずに熱を放っていただけだが、今回は銀の鎖そのものに大きな「聖属性」の魔力が感じ取れる。先ほどの二つの聖剣を吸収したことが関係しているのは間違いないだろう。
今の銀の鎖は結合されている聖爪を通して、聖剣の欠片を吸収した事で多大な魔力を蓄積している状態であり、鎖が発熱している理由は魔力暴走で間違いない。ならば、その蓄積された聖剣の魔力を使用すれば転移魔法陣を展開できるのではないかと考え付き、
「……展開!!」
ジャラララッ!!
レノは地面に向けて「銀の鎖」を解き放ち、一か八かす記憶に鮮明に残っている「転移魔方陣」を描く――
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