種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
187 / 1,095
腐敗竜編

世界を滅ぼす存在

しおりを挟む
「センチュリオン」の襲撃により、剣乱武闘は中断を余儀なくされ、多くの命が失われた。大会出場者の大半は誘拐され、他にも大会の報酬である聖剣やアトラス金貨も奪われており、計画的な犯行だと思われる。今回の襲撃によって出た死傷者の数は数百名、しかし、仮に隕石をミキが受け止めていなければ闘人都市に住む住民だけでなく、周囲に存在する村や町の住民を含めれば何十万人もの命が失われただろう。

聖導教会はミキの死を痛く悲しみ、特にヨウカは酷い衝撃を受け、数日間はまともに口を聞けない状況に陥る。そのため、彼女の友人である「盗賊王」のホノカが慰め、一時的に彼女を引き取ることを宣言した。

教会の最高権力者である「巫女姫」を砂漠の国の王とは言え、盗賊と言われる彼女に預けるなど信じ難い行為だが、教会は完全に「ヨウカ」を見限ったのだ。ミキが居ない以上、彼女の利用価値は無いと判断し、新しい「巫女姫」が選定されるまでの間、悪名が名高い盗賊王に預けたのだ。

最悪、ヨウカが粗相を起こし、ホノカの手に掛かれば聖導教会もすぐにでも新しい「巫女姫」を選定する理由が出来る。また、幾ら砂漠の王とは言えど、聖導教会を相手にする事は避けたがるはずと判断したのだ。



――この聖導教会の甘い考えは、後に大きな災いを招くことになるとは現時点では誰も予想できなかった。



王国は今回の不始末により、他種族からの信用を大きく失う。今回の「剣乱武闘」の失態により、他種族は責任を求める。しかし、現在は活性化の影響で魔物による被害が悪化し続けており、ここで他種族間で争いを起こすわけには行かず、まずは魔物の鎮圧の問題が最優先であり、今回の大会の失態の責任追及は後回しとなった。

流石に王国側も今回の問題は見逃せず、なりふり構わず今回の大会に収集した実力者たちを掻き集め、大規模な騎士団を作り上げる。



――その名は「テンペスト騎士団」であり、彼等は種族間の差別は無く入団が可能であり、剣乱武闘で集めた者以外にも王国が募集し、集めた腕利きの戦士を含め、1000人の大所帯となる。



その中でも騎士団長を務めるのは「鮮血のジャンヌ」であり、2人の副団長には「ストームナイツ」から配属された「アルト」と「リノン」が務める事になる。

若手の三人が高い地位に就くのは大勢の不満もあったが、3人は文句を告げる者を実力で叩きのめし、強制的に黙らせた。結果として「テンペスト騎士団」を結成したことは成功であり、各地で大きな成果を上げる。魔物の討伐の他にも、活性化の問題に乗じて犯罪を犯す盗賊の討伐を行い、徐々に信用を取り戻し始めた。



――そして、剣乱武闘から1年以上の時が経ち、最大の危機が全種族に訪れた。



始まりは学園都市から数十キロほど離れた村であり、一晩で村人全員が身体中の生気が吸われ、肉は落ち、骨が浮き上がった状態で発見されたという。

まるで「ヴァンパイア」に襲われた時と似たような状態であり、王国側は「センチュリオン」の仕業かと判断すると、現地に大勢の兵と騎士団を送り込む。

だが、その結果は最悪な物であり、何時まで経っても帰ってこない兵たちに訝しげに思い、すぐに第2陣が送られた。だが、後から送られた部隊も同様に帰還せず、王国側は何らかの大軍団でも潜んでいるのか、それとも奇病が発している可能性を考え、大々的に村の周辺を封鎖することにした。



――封鎖してから3日後、例の村から無数の「アンデット(いわゆるゾンビ)」が誕生し、それは村人だけではなく、大勢の兵士や騎士団の変わり果てた姿だったという。



この世界の「死人」と「アンデット」の違いは色々とあるが、どちらも死体であることは間違いない。だが、死人は遠方から死霊使いが操作しているにもかかわらず、アンデットは自分の意思で動いて行動する。

アンデットの知能は低いが、身体は腐敗しているにもかかわらず、その身体能力は凄まじく、俊敏な動きで襲い掛かる。その代り、感染力は以外にも低く、アンデットに何度も噛まれようが死亡しなければ治療可能である。但し、アンデットに成り果てた者は元に戻す事は出来ない。

王国側は大量の軍隊を送り込み、アンデットの侵攻を防ぐが、犠牲は大きかった。今回の死傷者は3000人を超し、さらにはアンデットになったそもそもの原因が掴めない。

アンデットに有効な武器は聖導教会が取り扱う「聖属性」の魔法だが、今回の件に教会側は「鮮血のジャンヌ」に討伐するように指示を出す。元々、聖導教会から抜け出した身ではあるが、彼女の目的はあくまでも「妹」の救済のためであり、私利私欲のために聖導教会から抜け出したわけではない。

ジャンヌはテンペスト騎士団を率いて現場に直行し、すぐに密偵に「アンデット」の発生源を調べるが、恐るべき存在が村の中に潜んでいた。


――それは一匹の黒い巨獣であり、外見は「ドラゴン」と呼ぶにふさわしい存在だが、肉の類は存在せず、全身は骨だけで形成されている。


ゲームでいう所の「ドラゴンゾンビ」であり、その存在は伝説として語り継がれており、何よりも厄介なのは彼女の「聖斧(ジャイアント・キリング)」ではどうにもならない存在だ。



「ドラゴンゾンビ」この世界では「腐敗竜」と呼ばれる魔物の最大の特徴とは、戦闘力の高さではなく身体全体にから生み出される「呪詛」に問題がある。死人使いが扱う呪われた魔力ではあるが、腐敗竜の場合は大量の呪詛をまるで「ウイルス」のように死体に感染させ、アンデットを生み出す。



嘗て、ドラゴンゾンビを浄化した例は1000年前の「魔族侵攻大戦」であり、魔王が解き放った複数体の個体に対して、当時存在していたという勇者が使用した「聖剣エクスカリバー」で浄化されたという記録が残っていた。


つまり、ドラゴンゾンビを浄化する方法は「聖剣エクスカリバー」級の聖剣だけであり、例え強力であろうが「エクスカリバー」の欠片でしか作られていないジャンヌの「ジャイアント・キリング」ではどうにもならないのだ。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:8,127

シモウサへようこそ!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:335

冷遇ですか?違います、厚遇すぎる程に義妹と婚約者に溺愛されてます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:837pt お気に入り:8,885

新宿アイル

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:138

処理中です...