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テンペスト騎士団編
地下酒場の戦闘
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「おおっ!!」
「何かの余興ですかな?」
「いいぞ姉ちゃん!!」
「たくっ……派手にするなって言っただろうが……」
酒場で派手に転倒したエルフの姿に酒場内の人間達が歓喜し、グラスを投擲したソフィアに声援が上がる。彼女はすぐに顔面を抑えて倒れるエルフの元に移動し、そのまま片手で起き上げる。
「さてと……手こずらせたな……」
「き、貴様……げふっ!!」
「ほぁたっ!!」
容赦なく急所に突きを入れ、大袈裟に苦しむエルフに酒場内の客は拍手を起こし、余程エルフ同士の抗争が面白いらしい。
「だから派手にするなって言ってんだろ!!」
「おわっ……」
「くっ……は、離せぇ!!」
だが、ギルドマスターはこれ以上の騒ぎは御免とばかりに2人に歩み寄り、そのまま服の裾を掴むと、悪戯した子供を放り出すように地下の酒場から追い出す。小柄とはいえ、2人分の人間を持ち上げるなど相当な怪力である。
地上へと続く長い階段を登り切り、地上の酒場にまで移動すると、そこにはお茶を啜るコトミと面倒気に彼女の様子を確認しながら資料を漁る女店主の姿があり、ギルドマスターの姿を見て慌てて立ち上がる。
「マスター!!表に上がってくるなんて……」
「ああ、大丈夫だ。別に問題が起きたわけじゃ……うおっ!?」
「ずずっ……?」
ワルキューレ騎士団の制服を纏ったコトミの姿を見てギルドマスターも驚愕するが、すぐにソフィアの方に視線を向け、
「あんたの連れか……毎回問題を起こすな」
「毎回?」
「やっと思い出したよ……あの時の生意気なエルフの嬢ちゃんだな」
どうやら1年半前に出会った事を思い出したようであり、ギルドマスターは深い溜息を吐き出す。
「……悪いが、あんたは出入り禁止だな」
「別にいいよ。どうせここにに用は無いし、陰気くさいし、なんかあんた臭うし」
「それはそれでムカつくなオイ!!」
そのままギルドマスターはソフィアと気絶したエルフを放りだし、ぶつぶつと「これだからエルフって奴は……」と愚痴りながら地下の方へと戻っていく。地面に放り投げられた際にエルフが意識を取り戻し、何が起きたのか理解できないというふうに辺りを見回すと、
「……逃がさない」
「ひっ!?」
コトミが通さないとばかりに両手を開いて逃走経路を封鎖し、後方からソフィアがエルフの肩に優しく手を置き、にっこりと笑みを浮かべて、
「どこへ行く……?」
「ひぃいいいっ!?」
バル直伝の腹黒い笑顔を浮かべながら顔を近づけると、エルフは恐怖で腰を抜かす。そんなレノ達のやり取りに女店主は後退り、小声で「終ったら帰ってくれよ……」と店の奥に避難する。
「さて……お前には色々と聞きたいことがある」
「は、離せ!!」
「コトミ」
「……いえっさー」
「うぐっ!?」
コトミが彼の頭を鷲掴み、暴れるのをソフィアが抑えつけながら、
「……はんどぱぅわぁ」
「ぐあっ……!?」
「無駄に良い発音だね……」
すぐにコトミが洗脳を発動し、エルフの瞳が虚ろへと変貌する。そして、ソフィアの尋問タイムが始まった。
「さてと……まずは君がどうしてこの酒場に立ち寄ったか聞こうか?」
「……待ち合わせ場所だからだ」
「待ち合わせ?」
他のエルフ達もこの酒場に立ち寄ったのかと疑問を抱くが、問い質すとエルフの男は首を振り、
「任務に失敗したら、ここを尋ねるように指示をされた……」
「誰からだ?」
「……レン様とラン様からだ」
「あいつらか……」
1年半前に地下闘技場で叩き潰した2人組のエルフを思いだし、顔を顰める。あの2人には幼少の頃に酷い目に遭わされたが、別に今は恨みは抱いていない。だが、敵として立ち塞がるなら今度は容赦はしない。
それよりもレンとランの名前が出てくる辺り、やはりこのエルフ達はソフィアの身体に「反魔紋」を刻み込んだ深淵の森のエルフ達で間違い無いようだ。
「……ここで誰と会う気だったの?」
「知らない……」
「知らないのに待ち合わせ場所で待ってたの……?」
「相手の方が気付いて近づいてくるとだけ言われた……」
「……出入り禁止は不味かったかな」
この場所でエルフ達と繋がりがある者が立ち寄る可能性があるならば、酒場内で待ち構えて置けばよかったかと考える。だが、相手の正確な素性が分からない以上はどうしようもないが。
「お前たちの目的は?」
「……我らはお前と、フレイの討伐のために集められた」
「それだけのためにこれだけの規模でやってきたのか?」
「仲間がいるとは聞いていた……だから我々も人数を用意した」
「なるほど……」
先日に送り出された刺客達よりは情報を知っているようであり、いよいよ核心を問いただす。
「……お前たちは何を隠している?第二の封印について、何か知っているのか?」
「それ、は……」
ここで初めてエルフの男が良い淀み、コトミが再び両手を翳すと、
「第二の封印という言葉は知らないが――」
――そして語られるエルフの言葉に、ソフィアは舌打ちをした。
「何かの余興ですかな?」
「いいぞ姉ちゃん!!」
「たくっ……派手にするなって言っただろうが……」
酒場で派手に転倒したエルフの姿に酒場内の人間達が歓喜し、グラスを投擲したソフィアに声援が上がる。彼女はすぐに顔面を抑えて倒れるエルフの元に移動し、そのまま片手で起き上げる。
「さてと……手こずらせたな……」
「き、貴様……げふっ!!」
「ほぁたっ!!」
容赦なく急所に突きを入れ、大袈裟に苦しむエルフに酒場内の客は拍手を起こし、余程エルフ同士の抗争が面白いらしい。
「だから派手にするなって言ってんだろ!!」
「おわっ……」
「くっ……は、離せぇ!!」
だが、ギルドマスターはこれ以上の騒ぎは御免とばかりに2人に歩み寄り、そのまま服の裾を掴むと、悪戯した子供を放り出すように地下の酒場から追い出す。小柄とはいえ、2人分の人間を持ち上げるなど相当な怪力である。
地上へと続く長い階段を登り切り、地上の酒場にまで移動すると、そこにはお茶を啜るコトミと面倒気に彼女の様子を確認しながら資料を漁る女店主の姿があり、ギルドマスターの姿を見て慌てて立ち上がる。
「マスター!!表に上がってくるなんて……」
「ああ、大丈夫だ。別に問題が起きたわけじゃ……うおっ!?」
「ずずっ……?」
ワルキューレ騎士団の制服を纏ったコトミの姿を見てギルドマスターも驚愕するが、すぐにソフィアの方に視線を向け、
「あんたの連れか……毎回問題を起こすな」
「毎回?」
「やっと思い出したよ……あの時の生意気なエルフの嬢ちゃんだな」
どうやら1年半前に出会った事を思い出したようであり、ギルドマスターは深い溜息を吐き出す。
「……悪いが、あんたは出入り禁止だな」
「別にいいよ。どうせここにに用は無いし、陰気くさいし、なんかあんた臭うし」
「それはそれでムカつくなオイ!!」
そのままギルドマスターはソフィアと気絶したエルフを放りだし、ぶつぶつと「これだからエルフって奴は……」と愚痴りながら地下の方へと戻っていく。地面に放り投げられた際にエルフが意識を取り戻し、何が起きたのか理解できないというふうに辺りを見回すと、
「……逃がさない」
「ひっ!?」
コトミが通さないとばかりに両手を開いて逃走経路を封鎖し、後方からソフィアがエルフの肩に優しく手を置き、にっこりと笑みを浮かべて、
「どこへ行く……?」
「ひぃいいいっ!?」
バル直伝の腹黒い笑顔を浮かべながら顔を近づけると、エルフは恐怖で腰を抜かす。そんなレノ達のやり取りに女店主は後退り、小声で「終ったら帰ってくれよ……」と店の奥に避難する。
「さて……お前には色々と聞きたいことがある」
「は、離せ!!」
「コトミ」
「……いえっさー」
「うぐっ!?」
コトミが彼の頭を鷲掴み、暴れるのをソフィアが抑えつけながら、
「……はんどぱぅわぁ」
「ぐあっ……!?」
「無駄に良い発音だね……」
すぐにコトミが洗脳を発動し、エルフの瞳が虚ろへと変貌する。そして、ソフィアの尋問タイムが始まった。
「さてと……まずは君がどうしてこの酒場に立ち寄ったか聞こうか?」
「……待ち合わせ場所だからだ」
「待ち合わせ?」
他のエルフ達もこの酒場に立ち寄ったのかと疑問を抱くが、問い質すとエルフの男は首を振り、
「任務に失敗したら、ここを尋ねるように指示をされた……」
「誰からだ?」
「……レン様とラン様からだ」
「あいつらか……」
1年半前に地下闘技場で叩き潰した2人組のエルフを思いだし、顔を顰める。あの2人には幼少の頃に酷い目に遭わされたが、別に今は恨みは抱いていない。だが、敵として立ち塞がるなら今度は容赦はしない。
それよりもレンとランの名前が出てくる辺り、やはりこのエルフ達はソフィアの身体に「反魔紋」を刻み込んだ深淵の森のエルフ達で間違い無いようだ。
「……ここで誰と会う気だったの?」
「知らない……」
「知らないのに待ち合わせ場所で待ってたの……?」
「相手の方が気付いて近づいてくるとだけ言われた……」
「……出入り禁止は不味かったかな」
この場所でエルフ達と繋がりがある者が立ち寄る可能性があるならば、酒場内で待ち構えて置けばよかったかと考える。だが、相手の正確な素性が分からない以上はどうしようもないが。
「お前たちの目的は?」
「……我らはお前と、フレイの討伐のために集められた」
「それだけのためにこれだけの規模でやってきたのか?」
「仲間がいるとは聞いていた……だから我々も人数を用意した」
「なるほど……」
先日に送り出された刺客達よりは情報を知っているようであり、いよいよ核心を問いただす。
「……お前たちは何を隠している?第二の封印について、何か知っているのか?」
「それ、は……」
ここで初めてエルフの男が良い淀み、コトミが再び両手を翳すと、
「第二の封印という言葉は知らないが――」
――そして語られるエルフの言葉に、ソフィアは舌打ちをした。
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