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テンペスト騎士団編
結界突入
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「上手く……行ったか……」
飛行船の先端部、正確に言えばフライングシャーク号の魔導砲弾が設置されている砲台にレノは跪き、右手には金色の雷を迸る聖剣「カラドボルグ」が握り締められており、魔方陣が出現して刀身を吸い込む。
「ありがとな……」
カラドボルグが完全に吸い込まれる前に礼を告げると、壁際に背中を預けながら身体を休ませる。大幅に魔力を消費したが、地下迷宮の時とは違い、万全な状態で発現させたお蔭で意識は失うほどではない。今日はこれ以上の発現は不可能だが、飛行船の水晶壁の窓から見える光景を察するに、どうやら無事に深淵の森の森人族の集落に侵入には成功したらしい。
周囲一帯が異常なまでに発達した巨大な樹木が広がっており、幼少の頃に見覚えのある光景である。普通の木々の何十倍も成長している大木が存在する森林は必ずエルフ達の保護下にある事を意味し、神秘的な風景だが今は景色を楽しむ余裕はない。
――シャアァアアアアアアアッ……!!
「くそっ……」
飛行船の背後から聞こえてくる大蛇の鳴き声に悪態を吐き、この深淵の森の結界内におびき寄せるの事は成功したようだが、未だにこの飛行船を追跡を止める気配はない。
『……殿……レノ殿!!聞こえるでござるか!?』
「……ああ、聞こえてるよ」
すぐ傍の飛行船の伝声管からカゲマルの声が聞こえ、他にもレノの安否を確かめる声が聞こえてくる。
『流石でござるな!!あれが伝説の聖剣の威力でござるか!?』
『森人族の結界を突破するとは……凄いです!!』
『レノ!!大丈夫か!?意識はあるのか!?』
『レノさん!?』
『大丈夫なのか……!?』
レノを称賛する声と心配する声が入り混じり、彼は苦笑いを浮かべながら紋様が光り輝いている事を確認し、
(……大丈夫だ。まだ、使うときじゃない)
紋様から感じ取れる「力」あのダークエルフを倒すために貯蓄した代物であり、今は使う時ではない。
「よっこいせ……ととっ……」
立ち上がろうとしたが、すぐにふらついて壁際に倒れこむ。やはり、カラドボルグの使用は相当に身体に負担が掛かっている。体調を取り戻すのに一日ほど休息が必要だろうが、今は何としても操縦室に向かわなければならない。
「くっ……」
壁際を這って移動を行い、扉を開けて通路に出た瞬間、
「……お帰り」
「……ただいま」
そこには何故か通路に体育座りで待ち構えていたコトミの姿があり、彼女は立ち上がるとすぐにレノの肩を担ぐ。
「何でここにいるの?」
「……迎えに来た」
「避難してろって言っただろ……」
「……やだ」
ぎゅううぅっ……
まるで子供のように抱き付いて離さないコトミにレノは溜息を吐き、彼女の肩を借りながら移動を行う。
「……あの剣、あんまり使っちゃ、だめ」
「ん?」
「……だめ」
通路を歩く途中、コトミが珍しく強い口調で話しかけ、レノは彼女の顔を見やる。いつも通りの無表情だが、何処となくその瞳から強い印象を受ける。確かにカラドボルグの使用は彼の身体に負担を掛ける。そのため、彼女の心配する気持ちは有り難いが、
「使わないといけない時もある」
「……それは」
「今回がその時だった……それだけ。俺もあんまり使いたくは無いよ」
「……うん」
完全に納得はしてはいないようだが、それでもコトミは頷く。レノとしてもカラドボルグはあまり表に出したくは無い。コトミに連れられ、レノは操縦室に向かう際中、飛行船のホノカ達も動き出す――
「さて……集落は見つかったかい?」
『いえ……こちらから確認する限り、まだ建物らしき物は見つかっていません』
「そうか……」
「思ったよりも随分と広いからね……あいつらの結界を舐めていたよ」
飛行船の周囲には巨大な木々が広がり、それなりに移動しているはずだが未だにエルフ達の集落らしき建物は見当たらない。予想以上に結界で覆われていた森の規模が大きく、最高速度で飛行しているにも関わらずに森人族の集落は見当たらない。
――ギャァアアアアアッ!!
「しつこいっすね……でも、随分と距離が空いたんじゃないすか?」
「この巨大な木々がバジリスクの進路を妨害しているからね……だが、こちらも脱出しないと燃料切れを起こすんじゃないのかい?」
「そうだね……もって、あと一時間が限界かな」
飛行船の後方からは巨大な樹木を薙ぎ倒しながら追跡してくるバジリスクの姿があり、障害物が存在しない空中を移動するフライングシャーク号の方が速度は早い。この調子なら逃げ切れる事が出来るかもしれないが、油断はできない。
「この結界の外に出れば僕たちの勝ちだが……妙だな」
「ええ……先ほどと様子が違いますね」
森の中に侵入する際は空間に「歪み」があり、すぐに結界の居場所がすぐに分かったが、今度は結界内部に入った瞬間に空間の歪みが消えている。
「もしかしたら……嵌められたのは僕たちかも知れないな」
飛行船の先端部、正確に言えばフライングシャーク号の魔導砲弾が設置されている砲台にレノは跪き、右手には金色の雷を迸る聖剣「カラドボルグ」が握り締められており、魔方陣が出現して刀身を吸い込む。
「ありがとな……」
カラドボルグが完全に吸い込まれる前に礼を告げると、壁際に背中を預けながら身体を休ませる。大幅に魔力を消費したが、地下迷宮の時とは違い、万全な状態で発現させたお蔭で意識は失うほどではない。今日はこれ以上の発現は不可能だが、飛行船の水晶壁の窓から見える光景を察するに、どうやら無事に深淵の森の森人族の集落に侵入には成功したらしい。
周囲一帯が異常なまでに発達した巨大な樹木が広がっており、幼少の頃に見覚えのある光景である。普通の木々の何十倍も成長している大木が存在する森林は必ずエルフ達の保護下にある事を意味し、神秘的な風景だが今は景色を楽しむ余裕はない。
――シャアァアアアアアアアッ……!!
「くそっ……」
飛行船の背後から聞こえてくる大蛇の鳴き声に悪態を吐き、この深淵の森の結界内におびき寄せるの事は成功したようだが、未だにこの飛行船を追跡を止める気配はない。
『……殿……レノ殿!!聞こえるでござるか!?』
「……ああ、聞こえてるよ」
すぐ傍の飛行船の伝声管からカゲマルの声が聞こえ、他にもレノの安否を確かめる声が聞こえてくる。
『流石でござるな!!あれが伝説の聖剣の威力でござるか!?』
『森人族の結界を突破するとは……凄いです!!』
『レノ!!大丈夫か!?意識はあるのか!?』
『レノさん!?』
『大丈夫なのか……!?』
レノを称賛する声と心配する声が入り混じり、彼は苦笑いを浮かべながら紋様が光り輝いている事を確認し、
(……大丈夫だ。まだ、使うときじゃない)
紋様から感じ取れる「力」あのダークエルフを倒すために貯蓄した代物であり、今は使う時ではない。
「よっこいせ……ととっ……」
立ち上がろうとしたが、すぐにふらついて壁際に倒れこむ。やはり、カラドボルグの使用は相当に身体に負担が掛かっている。体調を取り戻すのに一日ほど休息が必要だろうが、今は何としても操縦室に向かわなければならない。
「くっ……」
壁際を這って移動を行い、扉を開けて通路に出た瞬間、
「……お帰り」
「……ただいま」
そこには何故か通路に体育座りで待ち構えていたコトミの姿があり、彼女は立ち上がるとすぐにレノの肩を担ぐ。
「何でここにいるの?」
「……迎えに来た」
「避難してろって言っただろ……」
「……やだ」
ぎゅううぅっ……
まるで子供のように抱き付いて離さないコトミにレノは溜息を吐き、彼女の肩を借りながら移動を行う。
「……あの剣、あんまり使っちゃ、だめ」
「ん?」
「……だめ」
通路を歩く途中、コトミが珍しく強い口調で話しかけ、レノは彼女の顔を見やる。いつも通りの無表情だが、何処となくその瞳から強い印象を受ける。確かにカラドボルグの使用は彼の身体に負担を掛ける。そのため、彼女の心配する気持ちは有り難いが、
「使わないといけない時もある」
「……それは」
「今回がその時だった……それだけ。俺もあんまり使いたくは無いよ」
「……うん」
完全に納得はしてはいないようだが、それでもコトミは頷く。レノとしてもカラドボルグはあまり表に出したくは無い。コトミに連れられ、レノは操縦室に向かう際中、飛行船のホノカ達も動き出す――
「さて……集落は見つかったかい?」
『いえ……こちらから確認する限り、まだ建物らしき物は見つかっていません』
「そうか……」
「思ったよりも随分と広いからね……あいつらの結界を舐めていたよ」
飛行船の周囲には巨大な木々が広がり、それなりに移動しているはずだが未だにエルフ達の集落らしき建物は見当たらない。予想以上に結界で覆われていた森の規模が大きく、最高速度で飛行しているにも関わらずに森人族の集落は見当たらない。
――ギャァアアアアアッ!!
「しつこいっすね……でも、随分と距離が空いたんじゃないすか?」
「この巨大な木々がバジリスクの進路を妨害しているからね……だが、こちらも脱出しないと燃料切れを起こすんじゃないのかい?」
「そうだね……もって、あと一時間が限界かな」
飛行船の後方からは巨大な樹木を薙ぎ倒しながら追跡してくるバジリスクの姿があり、障害物が存在しない空中を移動するフライングシャーク号の方が速度は早い。この調子なら逃げ切れる事が出来るかもしれないが、油断はできない。
「この結界の外に出れば僕たちの勝ちだが……妙だな」
「ええ……先ほどと様子が違いますね」
森の中に侵入する際は空間に「歪み」があり、すぐに結界の居場所がすぐに分かったが、今度は結界内部に入った瞬間に空間の歪みが消えている。
「もしかしたら……嵌められたのは僕たちかも知れないな」
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