種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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第四部隊編

魔鎧×弾撃

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バルに連れられ、レノは地下闘技場に再び訪れる。今回はソフィアの姿で参加を申し込み、前回とは違って地下闘技場も大幅に改装されており、以前は複数の闘技場が存在したが、今回は巨大な闘技場が1つだけ存在した。

闘技場は10メートルほどであり、頑強な鉄柵が天井の部分まで覆っている。そのため、一度中に入ったら逃げる事は出来ない。規則も「飛び道具以外の武器の使用」は認められており、相手を完全に気絶させるか降参させるまで試合は続行される。

ソフィアは銀貨10枚というやたらと高い参加料を支払い、試合に出場する。最初の内は森人族の世間知らずの女子と参加者の大半は侮っていたが、彼女が準決勝にまで勝ち残る頃には、既に地下闘技場の観客達はソフィアの戦う姿に見入られていた。



「準決勝!!今大会初出場のソフィア対魔人族の猛者ライオネルだぁっ!!」
「「うおぉおおおおおっ!!」」


やたらとテンションが高い審判の声が地下闘技場に響き渡り、鉄柵の周囲には大勢の観客が集まっていた。その中にはバルとカゲマルの姿があり、


「絶対に勝ちなよソフィア!!あんたに全財産賭けてるんだからね!?」
「ソフィア殿~!!拙者も何故か無理やり、路銀を全て賭けられたでござる~!?絶対に負けないでほしいでござる!!」
「何してんねんっ」


バルだけではなく、カゲマルも巻き添えを喰らっており、ソフィアは呆れたよ表情を浮かべ、対戦相手の「獅子(ライオン)型」の魔人族と向かい合う。


「うおぉおおおおおっ!!」


ドンドンッ!!


身長は2メートルを超え、全身は分厚い体毛に覆われている。牙や爪が研ぎ澄まされており、ライオネルと呼ばれたは胸元を大きく叩き、獅子の獣人にも関わらずにゴリラを想像させる。

ちなみにこのライオネルが獣人族ではなく魔人族に分類される理由は、基本的に獣人族は「ポチ子」のような人間的な外見に「獣の特徴(犬耳、尻尾等)」が存在する者達であり、魔人族は逆に人間離れした外見である一方で、人間と同等の知能や二足歩行を行える者の事を差す。


「お前は強いな……楽しみだ」
「ゴンちゃんみたいな喋り方するな」
「は?」
「私語は慎め!!失格にされたい……」
「「あ?」」
「……あ、すいませんでした」


偉そうな審判の態度にソフィアとライオネルが睨み付けた瞬間、獅子(一方は本物の獅子だが)に睨まれた兎のように萎縮し、直後に彼は「し、試合開始!!」と一方的に告げて即座に離れる。


「ふんっ!!」
「?」


ドンッ!!


ライオネルは両拳を叩き付け、その場に仁王立ちしたまま動かない。ソフィアは首を傾げると、観客達も不審げに両者の動きを見守り、


「おい女、俺を殴れ」
「どМ?」
「違う!!お前を倒すのは容易いが、折角ここまで勝ち上がったんだ。好機(チャンス)をやろう……10発殴れ、その後は俺も攻撃するがな」
「そりゃまた、サービスがいいね」


本当に反撃する気は無いのか、ライオネルは腕を組んで佇むだけであり、ソフィアはどうしたものかと考え込む。少なくとも純粋な身体能力はライオネルが上であり、今の状態で拳を叩き付けてもたいした損傷は与えられないだろうが、


「ふんっ!!」


ズゥンッ!!


「「おおっ!!」」


ソフィアは大きく足を踏み込み、拳をライオネルの腹部に叩き込む。相当に強い衝撃で殴りつけたはずだが、


「ふむっ……女にしては、中々の重さだ」
「いたたっ……」


ライオネルは特に怯む様子は無く、逆にソフィアの右拳に痛みが走る。地下迷宮で大型の魔物や魔獣と戦い続けたが、この感触はゴーレムに匹敵する。やはり、撃雷や雷撃のように雷属性や嵐属性の魔力を纏わせない限り、単純な拳では損傷を与えられない。だが、この姿では強化術以外の魔法は扱えないが、


(……仕方ない)


ソフィアは右腕に魔力を集中させ、


「魔鎧(フラム)」


ボウッ……!!


「ぬっ!?」
「「「うおおっ!?」」」


右腕に青色の炎を想像させる魔力が形成され、炎のように揺らめく。レノの姿と違い、この姿ならば攻撃型に変換するため、魔鎧(フラム)の硬度を高める。


「これは……ま、待て!?」
「もう、遅い!!」


ダンッ!!


慌てた様子のライオネルが腕を解いて防御の体勢に入ろうとしたが、ソフィアは既に動き出しており、



ドォオンッ!!



ソフィアの足元の地面が罅割れ、そのまま足の裏から、足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳の順で身体を回転、及び加速させ、勢い良く拳を突き出し、



「魔弾撃!!」



ドゴォオオオオンッ!!



「ぬぐぉおおおおおっ!?」



ライオネルの交差した両腕に魔鎧を纏った拳を叩き込み、そのまま相手の巨体を勢いよく5メートルまで後退させ、そのまま跪かせた。


「おおっ……」


ソフィアは倒すまではいかなかったが、いつもと違う感触に声を漏らす。いつも弾撃を放つ時は拳を痛めていたのだが、魔鎧(フラム)を纏っているせいが、衝撃はあったが拳に痛みはない。


「ぐっ……何という、重さだ……が、耐え切れない物ではない!!」


ライオネルはゆっくりと立ち上がり、その腕は先ほどの魔弾撃の一撃で円形に陥没している。


「今度は、俺の番だ!!」
「何で?」
「は?」


立ち上がって襲い掛かろうとしたライオネルに、ソフィアは真顔で首をかしげると、


「あと8発分残ってるじゃん」
「いや、それは……」
「自分から言い出したのに……」
「うぐっ!?」
「おいおい!!ライオンちゃん!?男が一度言ったことを覆すのかい!?」
「バル殿……恥ずかしいでござるよ」


観客席からバルが兆発気味に声を上げ、カゲマルは彼女の後ろで恥ずかしそうに顔を伏せる。


「そうだそうだ!!」
「お前が言ったんだろ!!約束ぐらい守れよ!?」
「ぬぐぐっ……くそ、好きにしろ!!」


他の観客達も悪乗りし、完全に地下闘技場はライオネルのアウェーと化し、観念したのか彼はそのまま闘技場に座り込む。


「それじゃ、遠慮なく……」
「くっ……す、少しまっ」
「らあっ!!」


ズドドドドッ!!


「ぐはぁああああっ……!?」



――魔鎧(フラム)を纏ったソフィアの拳が次々とライオネルの急所にめり込み、数秒後、全身を痣だらけにしながらも、座り込んだ状態のまま気絶したライオネルが出来上がり、ソフィアの勝利が宣言された。
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