種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

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最後の三人目の審判員を探す際中、レノ達は冒険者の集団に遭遇してしまう。しかも運が悪いことに森人族の戦士達だった。


「そっちへ逃げたぞ!!」
「逃すな!!」
「殺せ!!」


現在、レノ達は街中で10人ほどの森人族に追い掛けられ、全力疾走中だった。


「れ、レノ!!あまり言いたくないが、流石に疲れてきたぞ!」
「え?まだ30分ぐらいしか逃げてないけど……」
「何で息切れすら起こさずに走れるんだぁああっ!?」


肉体強化を行い、全力で逃走するリノンに対してレノは余裕の表情で横に並ぶ。ちなみに2人は種族的に差があるため、同じ肉体強化にも身体能力の上昇の幅が大きく違う。


ギュルルルッ!!


「というかレノ!!君の走り方可笑しくないか!?」
「ああ、足元に嵐属性の車輪を形成してるから」
「それ、出来れば私にもして欲しいんだが!?」
「無理」
「白状者ぉおおっ!!」


更にはレノの足元、正確には踵の部分に嵐属性の魔力で作り出した風の車輪が生み出されており、まるでローラースケートの要領で高速移動を行う。瞬脚ほどの瞬間加速は出来ないが、それでも最高時速は80キロ前後は誇り、肉体強化で走るリノンは既に汗だくだった。


「ま、前のようにあの姿になって、蹴散らすことは出来ないのか!?」
「あの姿になると疲れるし、身体も動かなくなるし、第一に大陸中に俺が性転換もできるハーフエルフだってバレるしなぁ……」
「くっ……クリスタルか……!!」


ちなみにこの予選場である闘人都市の街中には、無数の撮影用の魔水晶(クリスタル)が浮揚しており、大陸中の種族が観賞用のミラー・クリスタルを通して大勢の人間が観戦している。現在のレノ達の姿も映し出されているはずであり、下手な行動は出来ない。


「というか、大陸中に放送されてるのに全力で殺しに来てるなぁ……失格にならないのかな?」
「クリスタルは映像は移しても、細かい音声までは送れないはずっ!!それに、この大会は故意の殺人だけが認められていないだけだ!!」
「ああ……だからか」


どうやらこの世界のクリスタルとやらは現実世界のテレビカメラほどの高性能ではないらしく、エルフ達もあくまでも事故に見せかけてレノを殺害すれば罪に問われないらしい。


「くそっ……回り込め!!」
「射的部隊、早く矢を放て!!」
「駄目です……奴らが放つ土煙で上手く狙えません!?」


ゴォオオオッ!!


レノの足元の「風輪」が激しい土煙を放ち、普段ならば周囲に迷惑を掛けるため封印している移動術だが、今現在は有効的だった。だが、このままではリノンの方が先に体力が尽きてしまう。方なく、ある程度まで疲労したエルフ達に振り返り、右手を向ける。


「魔法だ!!散れ!!」


ダァアンッ!!


エルフ達がそれぞれ別方向に移動を開始し、これでは狙いが定まらない。レノは右手でしか魔法を発現できないため、一か所しか攻撃できない弱点が存在する。どうやら敵も何の対策も立てずに追跡を掛けた訳ではないようだ。

だが、レノとしても複数の相手に戦い続けた経験が無いわけではない。北部山岳や地下迷宮では魔獣達に囲まれるなど多々あり、この場合は冷静に対象を1人に絞り込んで確実に討つ。


「嵐弾」


ズドォンッ!!


「なっ……うわぁっ!?」
「カイル!!」


空中に迂闊に飛び上がった1人に風の弾丸を放ち、そのまま遥か後方まで吹き飛ばす。しかし、その間にもエルフ達は無数に分かれてレノとリノンに接近してくる。


「死ね!!」
「隙を見せたな!!」
「終りだぁっ!!」


3人のエルフ達が迫ってくるが、即座にリノンが前に出ると、剣を抜き放ち、


「火炎刃!!」


ボウッ!!


「「なっ……うわぁああああっ!?」」


彼女は刀身から炎を纏わせ、周囲にレノの乱刃を想像させる三日月状の火の刃が複数に放たれる。エルフ達は大げさなまでに回避し、どうやら森人族の本能が火属性の魔法を恐れたらしい。2人は距離を取ったエルフ達に視線を向け、レノは右手をリノンの炎を纏った刀身に向けると、


「そのまま構えて!!」
「建物に火が回らないように気を付けろ!!」
「了解……はっ!!」


レノが嵐属性の魔力を送り込み、刀身に纏うリノンの炎が勢いを増大化させて「火炎」に変化し、エルフ達の方向に向けて放出される。


「うおおおおおっ!?」
「き、貴様等ぁあああっ!!」
「正々堂々と戦えぇえええっ!!」


慌てて距離を取るエルフ達だが、レノが送り出す嵐の魔力によって炎が増大し、まるで大蛇のように追いかける。


「れ、レノ!!もういいだろう!?」
「そうだな……こっちも熱いし」


ボウッ!!


右手を離すとリノンの火炎剣も鎮静化し、エルフ達は散り散りになりながら逃走する。余程、炎が恐ろしいのか、それとも一時撤退しただけなのかは分からないが少しは休憩は出来る。


「ふうっ……しかし、参ったな。こう何度も襲われるようでは審判員も探せない」
「何で簡単に居場所がばれるのか……」


何度か追っ手をやり過ごそうと隠れたりして見たが、どういう訳かレノ達を襲撃する参加者たちは的確に2人の位置を把握しており、度々戦闘に陥ってしまう。


「まさか、私達がメダルを所持している事がばれたのか?」
「だろうね……けど、一体何で……ん?」


レノは自分達の居場所を確認するため、自らの木札の鏡に浮かび上がる地図を確認すると、どういうわけか最初の頃には無かった赤いマークが表示されており、眉を顰める。



「……ふむっ」


試しに少しばかり後方に移動すると、地図上のマークも後ろに移動し、今度は前方に戻ると、やはりマークも移動する。


「……リノン、ちょっと木札確認してくれない?」
「ん?どうかしたの……これは」
「どうやら……この地図、参加者が手にしたメダルの位置を表示するらしい」
「どうりで隠れても意味が無いわけだ!!」


ここまで逃げながら木札の変化に気付かなかったことに2人は頭を抑えると、


「見つけたぞ!!あいつらのどっちかだ!!」
「逃がすなよ!!」
「大人しく渡しやがれぇええええっ!!」
「「しつっこい!!」」


新たな参加者が現れ、レノ達に向けて突進してきた――
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