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剣乱武闘編
処罰
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「全く………小さい頃から一緒にいたのに、アルトの変化に気付けなかった自分が情けない」
「……アルトの処分は?」
「当然、剣乱武闘は失格だ。規則で禁じられていた街の建物を破壊し、さらには噴水広場を破壊したからな。だが、問題はそれだけじゃない……王国の名前を使って大会側に交渉した事、さらにデュランダルの力に溺れて暴走した件、何よりも観衆の前で君に敗北したことが決め手だ……王位継承権の剥奪も有り得る」
「そんな……」
「むうっ……」
聞き耳を立てていたポチ子とゴンゾウが複雑そうな表情を浮かべるが、アルトの仕出かした行為は本来なら「死刑」に処されても可笑しくは無く、彼が王族で無ければ命は無かった。
それにどのような理由があろうと、自分の欲のためにレノを殺害しようとしたのは事実であり、さらには自分の地位を利用して大会側に交渉したのが決めてだった。
今ままでの彼ならばこのような愚かな行為に陥る事は無かったはずだが、少し前からアルトの様子がおかしい事は報告されており、それにレノが浄化させた黒蛇の件も気にかかり、取りあえずはここ最近の彼の行動を調べ直す事が決まる。
「私も最近は剣乱武闘の訓練で顔を会わせていなかったからな……全く、世話のかかる奴だ」
「……ちなみにリノンはアルトの事をどう思ってるの?」
「わうっ……私も気になります」
「ん?どういう意味だ?」
不思議そうに首を傾げるリノンにレノとポチ子は顔を見合わせ、どうやら質問の意図が伝わっておらず、率直に尋ねる。
「リノンさんはアルトさんの事が好きですか?」
「ああ、幼馴染だからな」
「……いや、そういう意味じゃなくてさ……男として見てないの?」
「ん?」
再び、首を傾げるリノンにどうやら質問の意味を理解しておらず、さらに砕いて質問する。
「ぶっちゃけ、リノンはアルトの事をどう思ってるの?恋人になりたいとか、夫婦になりたいとか思ったことは……」
「ないな」
「あ、そうすか」
ばっさりと答える彼女にレノとポチ子は苦笑いを浮かべ、今は大会の救護室で眠っているであろうアルトに同情する。どうやらアルトの片思いらしく、さらには今回の一件でリノンの彼に対する評価は大幅に下がった。
この2人が幼馴染であり、仲が良好だと思い込んでいたが、アルトはリノンに対して強い執着心を持つのに対し、リノンにとってアルトはあくまでも親友であり、恋愛感情は抱いていない様子だった。
「それに問題があるのはアルトだけじゃないぞ。君も今回の件で、ナナさんにこってり絞られただろう?」
「まあね……まさか、ここまで大騒ぎになるとは」
――予選が終了し、ナナにこってりと説教された後、レノは闘技場を出て街中を移動中に大勢の人間に囲まれた。
『おい!!あんたハーフエルフだって本当か!?』
『信じられねぇ……まさかこんなガキが、聖剣の持ち主かよ!!』
『あの~……もしよかったら、うちのギルドに……!!』
『ちょっと!!抜け駆けはやめなさいよ!!』
『応援してるぜ!!』
無数の人間に覆い囲まれ、彼等はミラークリスタルを通してレノとアルトの戦闘を観戦した者達であり、カラドボルグを所有する彼を勧誘するために冒険者ギルドの人間達もいた。
レノが世界的に差別されるハーフエルフという存在であることは知られているが、それでもカラドボルグを所有するという点が大きく、彼がギルドに入る事で大きな戦力が得られるのは間違いない。だが、レノの前に現れたのは友好的な相手ばかりではなく、
『おい、てめぇ……調子に乗ってんじゃないぞこらっ……ぶげっ!?』
『へっへっへっ……あんた、金をふぎゃっ!?ちょっ、最後まで言わせ……!?』
『はっ、半端者が調子にぎゃあぁあああっ!?』
中にはレノのカラドボルグを狙った盗賊や冒険者、さらには裏稼業の人間も居た(最も、全員が喋り切る前に撃退されたが)。
良くも悪くもレノは今回の大会で目立ちすぎたため、大勢の人間から注目を集めている。また、ハーフエルフでありながら聖導教会やバルトロス王国から保護されている存在のため、すぐに腐敗竜の討伐に参加したメンバーの1人だと知られてしまう。
面倒だったため、人気の無い場所でソフィアの姿に変化して移動を行ったが、このままでは女の姿に変化する事も隠し通せない事態に陥る可能性も出てきた。
「さ、先ほどはナナが失礼をしました……!!このお詫びはいずれ私が……!!」
「いや、別に気にしなくていいよ……というか、半分寝てたから聞いてなかったし」
ナナから今回の自分の行動の迂闊さを説教されたが、予選の疲れのせいか説教中に眠ってしまい、そんな彼の態度がより一層に彼女の憤らせたが、ジャンヌが仲裁してくれたお蔭で助かった。
確かにハーフエルフであるレノが活躍する事で、世界中のハーフエルフという種の扱いに影響が出るのは間違いないため、これ以上目立つのは避けるべきだろう。王国側の指示であるカラドボルグの力を見せつけるという点は果たしているため、5日目の本戦で適当な場所で敗退するのが良策だろう。
「あんた達、こんな時まで小難しい話してんじゃないよ!!ほらほら飲みな!!」
「うぷっ!?」
「いや、バルさん私は……むぐぐっ!?」
酔っぱらったバルに無理やり酒を飲まされ、
――その晩は夜が明けるまで宴が続けられ、結局全員が黒猫酒場に泊まり込む形となった。
「……アルトの処分は?」
「当然、剣乱武闘は失格だ。規則で禁じられていた街の建物を破壊し、さらには噴水広場を破壊したからな。だが、問題はそれだけじゃない……王国の名前を使って大会側に交渉した事、さらにデュランダルの力に溺れて暴走した件、何よりも観衆の前で君に敗北したことが決め手だ……王位継承権の剥奪も有り得る」
「そんな……」
「むうっ……」
聞き耳を立てていたポチ子とゴンゾウが複雑そうな表情を浮かべるが、アルトの仕出かした行為は本来なら「死刑」に処されても可笑しくは無く、彼が王族で無ければ命は無かった。
それにどのような理由があろうと、自分の欲のためにレノを殺害しようとしたのは事実であり、さらには自分の地位を利用して大会側に交渉したのが決めてだった。
今ままでの彼ならばこのような愚かな行為に陥る事は無かったはずだが、少し前からアルトの様子がおかしい事は報告されており、それにレノが浄化させた黒蛇の件も気にかかり、取りあえずはここ最近の彼の行動を調べ直す事が決まる。
「私も最近は剣乱武闘の訓練で顔を会わせていなかったからな……全く、世話のかかる奴だ」
「……ちなみにリノンはアルトの事をどう思ってるの?」
「わうっ……私も気になります」
「ん?どういう意味だ?」
不思議そうに首を傾げるリノンにレノとポチ子は顔を見合わせ、どうやら質問の意図が伝わっておらず、率直に尋ねる。
「リノンさんはアルトさんの事が好きですか?」
「ああ、幼馴染だからな」
「……いや、そういう意味じゃなくてさ……男として見てないの?」
「ん?」
再び、首を傾げるリノンにどうやら質問の意味を理解しておらず、さらに砕いて質問する。
「ぶっちゃけ、リノンはアルトの事をどう思ってるの?恋人になりたいとか、夫婦になりたいとか思ったことは……」
「ないな」
「あ、そうすか」
ばっさりと答える彼女にレノとポチ子は苦笑いを浮かべ、今は大会の救護室で眠っているであろうアルトに同情する。どうやらアルトの片思いらしく、さらには今回の一件でリノンの彼に対する評価は大幅に下がった。
この2人が幼馴染であり、仲が良好だと思い込んでいたが、アルトはリノンに対して強い執着心を持つのに対し、リノンにとってアルトはあくまでも親友であり、恋愛感情は抱いていない様子だった。
「それに問題があるのはアルトだけじゃないぞ。君も今回の件で、ナナさんにこってり絞られただろう?」
「まあね……まさか、ここまで大騒ぎになるとは」
――予選が終了し、ナナにこってりと説教された後、レノは闘技場を出て街中を移動中に大勢の人間に囲まれた。
『おい!!あんたハーフエルフだって本当か!?』
『信じられねぇ……まさかこんなガキが、聖剣の持ち主かよ!!』
『あの~……もしよかったら、うちのギルドに……!!』
『ちょっと!!抜け駆けはやめなさいよ!!』
『応援してるぜ!!』
無数の人間に覆い囲まれ、彼等はミラークリスタルを通してレノとアルトの戦闘を観戦した者達であり、カラドボルグを所有する彼を勧誘するために冒険者ギルドの人間達もいた。
レノが世界的に差別されるハーフエルフという存在であることは知られているが、それでもカラドボルグを所有するという点が大きく、彼がギルドに入る事で大きな戦力が得られるのは間違いない。だが、レノの前に現れたのは友好的な相手ばかりではなく、
『おい、てめぇ……調子に乗ってんじゃないぞこらっ……ぶげっ!?』
『へっへっへっ……あんた、金をふぎゃっ!?ちょっ、最後まで言わせ……!?』
『はっ、半端者が調子にぎゃあぁあああっ!?』
中にはレノのカラドボルグを狙った盗賊や冒険者、さらには裏稼業の人間も居た(最も、全員が喋り切る前に撃退されたが)。
良くも悪くもレノは今回の大会で目立ちすぎたため、大勢の人間から注目を集めている。また、ハーフエルフでありながら聖導教会やバルトロス王国から保護されている存在のため、すぐに腐敗竜の討伐に参加したメンバーの1人だと知られてしまう。
面倒だったため、人気の無い場所でソフィアの姿に変化して移動を行ったが、このままでは女の姿に変化する事も隠し通せない事態に陥る可能性も出てきた。
「さ、先ほどはナナが失礼をしました……!!このお詫びはいずれ私が……!!」
「いや、別に気にしなくていいよ……というか、半分寝てたから聞いてなかったし」
ナナから今回の自分の行動の迂闊さを説教されたが、予選の疲れのせいか説教中に眠ってしまい、そんな彼の態度がより一層に彼女の憤らせたが、ジャンヌが仲裁してくれたお蔭で助かった。
確かにハーフエルフであるレノが活躍する事で、世界中のハーフエルフという種の扱いに影響が出るのは間違いないため、これ以上目立つのは避けるべきだろう。王国側の指示であるカラドボルグの力を見せつけるという点は果たしているため、5日目の本戦で適当な場所で敗退するのが良策だろう。
「あんた達、こんな時まで小難しい話してんじゃないよ!!ほらほら飲みな!!」
「うぷっ!?」
「いや、バルさん私は……むぐぐっ!?」
酔っぱらったバルに無理やり酒を飲まされ、
――その晩は夜が明けるまで宴が続けられ、結局全員が黒猫酒場に泊まり込む形となった。
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