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剣乱武闘編
アイリィの憑依術
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「とりあえず何処から説明したらいいですかね……何から知りたいですか?」
「じゃあ、人は何故生きるのか……」
「そんな重苦しい相談されても困るんですけど……まあ、前世であんな死に方をしたらそう考える気持ちも分からなくもないですけどね」
「ん?」
今のアイリィの発言にレノは疑問を抱くが、まずは彼女が今まで何をしてきたのかを尋ねてみると、
「あの後、私は貴方を助けるために力を使い果たしました……というのは建前で、あのくそ生意気な小娘に殺されましたよ」
「くそ生意気な小娘……」
「よりにもよって、私の聖痕を使って私を殺そうとするなんて、片腹痛いっ!!」
「今はノリに付き合ってられないから真面目に話せ」
「あ、はい」
――アイリィによると、地下迷宮(ロスト・ラビリンス)の戦闘の後、レノを助けるためにカラドボルグと新たな紋様を右手に刻み込み、アイリィはダークエルフによって跡形も無く消し飛ばされたという。
しかし、彼女は魂だけの存在と変わり果てた後、事前に回収していた聖痕の力を利用して転生したという。
「転生って……そんなに簡単に出来るもんなの?」
「正確に言えばレノさんも知ってる憑依術に似てますね。今の私はこのラビットさんの身体に憑りついている状態です」
「センリ辺りに浄化されそうだな」
「私に浄化なんか効きませんよ。聖属性の聖痕も回収済みですし」
アイリィ(ラビット)は自分の額を見せつけ、そこには十字架を想像させる聖痕が刻まれていた。以前はジャンヌの額に在った聖痕だが、レノが回収したことで彼女の元に戻ったようだ。
「今までに回収したレノさんの聖痕のお蔭で、私も随分と力を取り戻せましたからね。まあ、全盛期の4分の1というところでしょうか」
「半分以上も聖痕を回収したのに4分の1かい」
「正確に言うと、聖痕だけじゃあ復活できないんですよ。私の本来の肉体も取り戻さない限りは」
「本来の肉体……?前の肉体とは違うのか?」
レノの脳裏に放浪島にいた頃の彼女の姿を思い浮かべるが、彼女は首を振り、
「あの肉体は憑依術で私が乗り移っていただけですよ。このラビットさんのようにね」
「おい……まさかお前」
「いや、あの子はもう死んでましたからね?私の巻き添えで殺されたとかは無いですよ」
「良かった……ん、という事はお前はあの時は死人……いや、グールだったのか?」
以前に死霊使いが自分自身を死人に変える事でグールに変化するとは聞いたことはあるが、それにしては放浪島にいた彼女はあまりにも生気に満ちていたように思える。
「誰がグールですか誰が……私は正確に言うと「生霊」ですよ。まだ、完全には死んでいません。というか、死ねないんですよ……」
「ん?」
彼女は視線を反らし、何かを思い出すように寂しげな表情を浮かべ、レノが不思議そうに見つめると、
「……そうですね、私の正体を語る前にどうして放浪島にいたのか、そして憑依術を使って他の人間に乗り移っているのかを語りましょうか」
「それはいいけど……俺の身体って今どういう状況なんだ?」
現実世界では気絶したままなのは分かるが、あまりにも長い間、昏睡状態に陥っていたらバルたちに心配を掛けてしまうが、
「平気ですよ。こっちの精神世界とあっちの世界の時間の流れは大きく違います。まあ、ご都合主義って奴ですね」
「……具体的にどれくらいの時間の流れが違うんだ?」
「現実世界の1秒が、こちらの10秒くらいですかね」
「微妙だな……」
「文句言わないで下さいよ。まあ、安心してください。あっちの方ではレノさんは飲み過ぎて倒れたことになってますから……あ」
「待って、今の「あ」って何?」
「いえその……眠っているレノさんに猫耳みたいな女の子が抱き付いたり、ポチ子さんがベッドに潜り込んだり、ホノカさんがそんなあなた達を見て両手をわきわきとしながら近づいているだけです」
「そうか、何も問題ないな」
「いや、問題ないんですかこれ?結構な状況ですよねこれ」
「いいから話を続けろ。現実から逃避したいんだよっ」
「全く……えっと、どこまで話しましたっけ?」
「お前が実は幽霊だと判明したところから」
「だから生霊ですって!!まだ、肉体は生きてますから!!」
アイリィの話によると、彼女の本体はまだ存在するらしく、現在は魂だけの存在で行動しているという。今までは他者の死体に乗り移る事で行動しており、自分の元から離れた聖痕の回収を行っていたという。
このラビットの肉体も既に本人は死亡しており、1年半ほど前に彼女の肉体に憑依したという。彼女が扱う「憑依術」とは自分の魂の波長とあった死体にしか乗り移れず、だがはレミアと違って憑依できる時間に制限は無い。
ラビットに憑依した理由は他にもあり、彼女は不慮の事故で家族ともども死亡しており、単独行動を取るには都合がいい存在だったからだ。もちろん、自分の肉体を取り戻せるまで借りるだけであり、全てが終れば肉体は埋葬するき気らしい。
「さて……それじゃあ、真面目に話しましょうか。私の正体と……聖痕の秘密を」
「じゃあ、人は何故生きるのか……」
「そんな重苦しい相談されても困るんですけど……まあ、前世であんな死に方をしたらそう考える気持ちも分からなくもないですけどね」
「ん?」
今のアイリィの発言にレノは疑問を抱くが、まずは彼女が今まで何をしてきたのかを尋ねてみると、
「あの後、私は貴方を助けるために力を使い果たしました……というのは建前で、あのくそ生意気な小娘に殺されましたよ」
「くそ生意気な小娘……」
「よりにもよって、私の聖痕を使って私を殺そうとするなんて、片腹痛いっ!!」
「今はノリに付き合ってられないから真面目に話せ」
「あ、はい」
――アイリィによると、地下迷宮(ロスト・ラビリンス)の戦闘の後、レノを助けるためにカラドボルグと新たな紋様を右手に刻み込み、アイリィはダークエルフによって跡形も無く消し飛ばされたという。
しかし、彼女は魂だけの存在と変わり果てた後、事前に回収していた聖痕の力を利用して転生したという。
「転生って……そんなに簡単に出来るもんなの?」
「正確に言えばレノさんも知ってる憑依術に似てますね。今の私はこのラビットさんの身体に憑りついている状態です」
「センリ辺りに浄化されそうだな」
「私に浄化なんか効きませんよ。聖属性の聖痕も回収済みですし」
アイリィ(ラビット)は自分の額を見せつけ、そこには十字架を想像させる聖痕が刻まれていた。以前はジャンヌの額に在った聖痕だが、レノが回収したことで彼女の元に戻ったようだ。
「今までに回収したレノさんの聖痕のお蔭で、私も随分と力を取り戻せましたからね。まあ、全盛期の4分の1というところでしょうか」
「半分以上も聖痕を回収したのに4分の1かい」
「正確に言うと、聖痕だけじゃあ復活できないんですよ。私の本来の肉体も取り戻さない限りは」
「本来の肉体……?前の肉体とは違うのか?」
レノの脳裏に放浪島にいた頃の彼女の姿を思い浮かべるが、彼女は首を振り、
「あの肉体は憑依術で私が乗り移っていただけですよ。このラビットさんのようにね」
「おい……まさかお前」
「いや、あの子はもう死んでましたからね?私の巻き添えで殺されたとかは無いですよ」
「良かった……ん、という事はお前はあの時は死人……いや、グールだったのか?」
以前に死霊使いが自分自身を死人に変える事でグールに変化するとは聞いたことはあるが、それにしては放浪島にいた彼女はあまりにも生気に満ちていたように思える。
「誰がグールですか誰が……私は正確に言うと「生霊」ですよ。まだ、完全には死んでいません。というか、死ねないんですよ……」
「ん?」
彼女は視線を反らし、何かを思い出すように寂しげな表情を浮かべ、レノが不思議そうに見つめると、
「……そうですね、私の正体を語る前にどうして放浪島にいたのか、そして憑依術を使って他の人間に乗り移っているのかを語りましょうか」
「それはいいけど……俺の身体って今どういう状況なんだ?」
現実世界では気絶したままなのは分かるが、あまりにも長い間、昏睡状態に陥っていたらバルたちに心配を掛けてしまうが、
「平気ですよ。こっちの精神世界とあっちの世界の時間の流れは大きく違います。まあ、ご都合主義って奴ですね」
「……具体的にどれくらいの時間の流れが違うんだ?」
「現実世界の1秒が、こちらの10秒くらいですかね」
「微妙だな……」
「文句言わないで下さいよ。まあ、安心してください。あっちの方ではレノさんは飲み過ぎて倒れたことになってますから……あ」
「待って、今の「あ」って何?」
「いえその……眠っているレノさんに猫耳みたいな女の子が抱き付いたり、ポチ子さんがベッドに潜り込んだり、ホノカさんがそんなあなた達を見て両手をわきわきとしながら近づいているだけです」
「そうか、何も問題ないな」
「いや、問題ないんですかこれ?結構な状況ですよねこれ」
「いいから話を続けろ。現実から逃避したいんだよっ」
「全く……えっと、どこまで話しましたっけ?」
「お前が実は幽霊だと判明したところから」
「だから生霊ですって!!まだ、肉体は生きてますから!!」
アイリィの話によると、彼女の本体はまだ存在するらしく、現在は魂だけの存在で行動しているという。今までは他者の死体に乗り移る事で行動しており、自分の元から離れた聖痕の回収を行っていたという。
このラビットの肉体も既に本人は死亡しており、1年半ほど前に彼女の肉体に憑依したという。彼女が扱う「憑依術」とは自分の魂の波長とあった死体にしか乗り移れず、だがはレミアと違って憑依できる時間に制限は無い。
ラビットに憑依した理由は他にもあり、彼女は不慮の事故で家族ともども死亡しており、単独行動を取るには都合がいい存在だったからだ。もちろん、自分の肉体を取り戻せるまで借りるだけであり、全てが終れば肉体は埋葬するき気らしい。
「さて……それじゃあ、真面目に話しましょうか。私の正体と……聖痕の秘密を」
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