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剣乱武闘編
成長具合
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「しかし、驚いたな……まさかレノとラビットさんが同じ孤児院の出身とは」
「……ロプス君も連れてきたのも、兎さん?」
「いや~……ロプス君については本当に偶然、この森の近くに居たのを発見して連れて来ただけですよ」
――突然、枯葉の森に訪れたラビットに対し、レノはリノン達に彼女が自分と同じ「孤児院」の出身であり、この森に事前に招待していたと誤魔化す。
色々と苦しい言い訳だが、不自然なほどにリノン達はその説明を受け入れ、黙ってレノがラビットに治療される姿を観察する。恐らく、何らかの洗脳系統の魔術でも使用しているのか、いとも簡単にラビットはレノ達の輪の中に入り込む。
(……何のつもりだ?)
(さっきも言ったじゃないですか?会いに行くって)
(速すぎるだろ……どうやってやってきた)
(ふふん……転移魔法を使えるのは自分だけとは思わないでください。レノさんの右手の紋様から位置を特定し、この場所まで飛んできただけです)
ひそひそとリノン達に聞こえない声量で会話を行い、レノは上半身を脱がされ、ラビットが背中に掌を押し当てる。
(……随分と成長しましたね。最初に在った頃より、何十倍も魔力要領が増大しています)
素直にアイリィはレノの成長に感心し、この成長具合はアイリィが与えた紋様の影響もあるが、元々のレノ自身が大幅に魔力を蓄積できる器を持っていたのだろう。
また、レノは反魔紋とカラドボルグの影響で森人族が習得できるはずが無い「雷属性」を習得しており、風属性と掛け合わせて戦闘を行ってきた。だが、その反面に魔術師ではなく戦士のような近距離戦闘に特化してしまう。
(元々は魔法使い向きの肉体だったんでしょうけど……流石にダークエルフの血を受け継いでいるせいか、過酷な環境に適応性が高いですね。少し異常なくらいですけど……)
森人族の中でも魔人族の血を受け継ぐ「ダークエルフ」は、様々な環境でも適応できる高い生命力を所有する。レノが幼少の頃に過ごした北部山岳や地下迷宮で生き残れたのはこの生命力が関係しているかもしれない。
既に背中に刻まれたムメイの反魔紋はアイリィによって完全に消し去られたが、新たにカラドボルグを彼の体内に埋め込むため、特別な術式を施している。
――しかし、この術式は同時にレノの成長を妨げる仕掛けであり、カラドボルグが体内に存在する限り、彼の本当の意味での全力は解放されない。強大な力を持つ大聖剣を身体の内側に宿しているからこそ、逆にそれがレノの体内の魔力の流れを掻き乱している。
(う~ん……どうしますかね)
ここでカラドボルグを回収する事は容易い。そうすればレノは今以上の力を発揮できるのは確かだであり、本来の所有者であるアイリィが大聖剣を取り戻せば彼女も十分に戦える。
しかし、これからの事を考えればレノがセンチュリオンと相対した時、カラドボルグの力無しで勝てる保証は無い。確かに彼の身体は急成長によって大幅に強化されているが、それでもアイリィの不安は拭えない。
彼女もこの1年半、何もしていなかったわけではない。身寄りがいないラビットの身体で一から金銭を集め、適当に人心を掌握して人脈を築き上げ、そして今の剣乱武闘の「実況者」という立場を得た。
闘人都市を拠点とした理由はいずれ「レノ」が黒猫酒場に訪れる事を予測し、さらにセンチュリオンの狙いを探るために訪れた。彼らは何度もこの都市に姿を現しているのは間違いなく、実際にアイリィも度々センチュリオンの気配を感じ取っている。
(……あの連中、まだ奥の手を隠してるんと思うんですよね)
センチュリオンの幹部が装備している「ブラックチェーン(レノの「銀の鎖」の原型)」は相手を捕獲するための武器だが、幹部クラスの人員はそれぞれが特殊な能力を所有している。例えばカトレアは嵐の聖痕を扱い、聖堂で暴れ回った青年も普通の人間ではない。マドカもレノと同じ性別変化を行えるハーフエルフであり、他に存在する幹部達も一筋縄ではいかない猛者揃いである。
(どうしますかね……)
レノの背中をさすりながら、ラビットは自分の掌から感じ取れるカラドボルグを感じ取り、この剣がある限りは「センチュリオン」の対抗策は十分だろう。
(……なるほど、あの女に対抗する準備は整っていますね)
それに彼の右手の紋様から感じ取れる膨大な魔力を感じ取り、この1年半の間でレノも「ダークエルフ」に対抗する手段を立てていた事に気付く。
(仕方有りませんね。もう少しだけ、貸し与えますよ?)
アイリィはレノの乱れた魔力の流れを修正するため、指先を這わせた。
「……ロプス君も連れてきたのも、兎さん?」
「いや~……ロプス君については本当に偶然、この森の近くに居たのを発見して連れて来ただけですよ」
――突然、枯葉の森に訪れたラビットに対し、レノはリノン達に彼女が自分と同じ「孤児院」の出身であり、この森に事前に招待していたと誤魔化す。
色々と苦しい言い訳だが、不自然なほどにリノン達はその説明を受け入れ、黙ってレノがラビットに治療される姿を観察する。恐らく、何らかの洗脳系統の魔術でも使用しているのか、いとも簡単にラビットはレノ達の輪の中に入り込む。
(……何のつもりだ?)
(さっきも言ったじゃないですか?会いに行くって)
(速すぎるだろ……どうやってやってきた)
(ふふん……転移魔法を使えるのは自分だけとは思わないでください。レノさんの右手の紋様から位置を特定し、この場所まで飛んできただけです)
ひそひそとリノン達に聞こえない声量で会話を行い、レノは上半身を脱がされ、ラビットが背中に掌を押し当てる。
(……随分と成長しましたね。最初に在った頃より、何十倍も魔力要領が増大しています)
素直にアイリィはレノの成長に感心し、この成長具合はアイリィが与えた紋様の影響もあるが、元々のレノ自身が大幅に魔力を蓄積できる器を持っていたのだろう。
また、レノは反魔紋とカラドボルグの影響で森人族が習得できるはずが無い「雷属性」を習得しており、風属性と掛け合わせて戦闘を行ってきた。だが、その反面に魔術師ではなく戦士のような近距離戦闘に特化してしまう。
(元々は魔法使い向きの肉体だったんでしょうけど……流石にダークエルフの血を受け継いでいるせいか、過酷な環境に適応性が高いですね。少し異常なくらいですけど……)
森人族の中でも魔人族の血を受け継ぐ「ダークエルフ」は、様々な環境でも適応できる高い生命力を所有する。レノが幼少の頃に過ごした北部山岳や地下迷宮で生き残れたのはこの生命力が関係しているかもしれない。
既に背中に刻まれたムメイの反魔紋はアイリィによって完全に消し去られたが、新たにカラドボルグを彼の体内に埋め込むため、特別な術式を施している。
――しかし、この術式は同時にレノの成長を妨げる仕掛けであり、カラドボルグが体内に存在する限り、彼の本当の意味での全力は解放されない。強大な力を持つ大聖剣を身体の内側に宿しているからこそ、逆にそれがレノの体内の魔力の流れを掻き乱している。
(う~ん……どうしますかね)
ここでカラドボルグを回収する事は容易い。そうすればレノは今以上の力を発揮できるのは確かだであり、本来の所有者であるアイリィが大聖剣を取り戻せば彼女も十分に戦える。
しかし、これからの事を考えればレノがセンチュリオンと相対した時、カラドボルグの力無しで勝てる保証は無い。確かに彼の身体は急成長によって大幅に強化されているが、それでもアイリィの不安は拭えない。
彼女もこの1年半、何もしていなかったわけではない。身寄りがいないラビットの身体で一から金銭を集め、適当に人心を掌握して人脈を築き上げ、そして今の剣乱武闘の「実況者」という立場を得た。
闘人都市を拠点とした理由はいずれ「レノ」が黒猫酒場に訪れる事を予測し、さらにセンチュリオンの狙いを探るために訪れた。彼らは何度もこの都市に姿を現しているのは間違いなく、実際にアイリィも度々センチュリオンの気配を感じ取っている。
(……あの連中、まだ奥の手を隠してるんと思うんですよね)
センチュリオンの幹部が装備している「ブラックチェーン(レノの「銀の鎖」の原型)」は相手を捕獲するための武器だが、幹部クラスの人員はそれぞれが特殊な能力を所有している。例えばカトレアは嵐の聖痕を扱い、聖堂で暴れ回った青年も普通の人間ではない。マドカもレノと同じ性別変化を行えるハーフエルフであり、他に存在する幹部達も一筋縄ではいかない猛者揃いである。
(どうしますかね……)
レノの背中をさすりながら、ラビットは自分の掌から感じ取れるカラドボルグを感じ取り、この剣がある限りは「センチュリオン」の対抗策は十分だろう。
(……なるほど、あの女に対抗する準備は整っていますね)
それに彼の右手の紋様から感じ取れる膨大な魔力を感じ取り、この1年半の間でレノも「ダークエルフ」に対抗する手段を立てていた事に気付く。
(仕方有りませんね。もう少しだけ、貸し与えますよ?)
アイリィはレノの乱れた魔力の流れを修正するため、指先を這わせた。
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