種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

カゲマルの帰郷

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深淵の森からレノが帰還してから翌日、朝早くから転移の門でウルを放浪島に送り返した彼の前に久方ぶりにカゲマルが姿を現す。


「久しぶりでござるなレノ殿」
「カゲマル……生きてたのか」
「勝手に殺さないでほしいでござる‼任務で一ヶ月ほど離れていただけでござるよ⁉」
「そう言えばそうだった」


一ヶ月ほど前からカゲマルはちある任務で王城を離れており、彼女が受けた任務とは全ての伝説獣を討ち取ってから数日後、突如として大陸各地に大きな地震が生じた事が関係している。



――オルトロスの討伐を完了した後、まるで六体の伝説獣の死亡に呼応するように世界各地で大きな地震が「六度」も発生し、それに呼応するように今まで発見されたなかった土地に奇妙な「遺跡」が誕生したという。



魔法的な何かで隠蔽されていたのか、それとも別の仕組みで今まで発見されなかったのかは分からないが、地震の後に誕生したと思われる「六つの遺跡」は六種族のそれぞれの領土内に誕生し、今までに発見された事がない魔物が生息している事が判明した。

この遺跡の正体が何なのかは不明であり、過去の文献を調べても手掛かりすら得られず、どことなく放浪島の地下迷宮と似たような素材で造られている事だけは確かであり、アルトは隠密部隊に調査を指示する。また、引退したテラノも今回の件は協力しており、現在はカノンも捜査に加わっているらしい。


「カノン大将軍とテラノ殿は既に国王様に謁見して調査資料を渡している頃でござるよ。レノ殿も国王様の元に赴いたらどうでござる?」
「そうなんだ……面倒だからカゲマルからここで聞く」
「別に構わぬでござるが……時間は大丈夫でござるか?」
「将軍て言っても部隊を操るわけでも無いし、任務が無い時は案外暇だよ」


大将軍のソフィアにしろ副団長のレノにしろ昇格したのはいいが、基本的には兵士を指示を与える事はない。レノの場合は主に普通の人間では出来ない任務を請け負い、単独で行動することが多い。1人では無理な仕事もポチ子やリノン達に協力してもらって当たり、場合によっては聖導教会から人手も借りるが、兵士を引き連れる事はない。

ちなみにこの半年の間でレノが果たした任務は活性化の影響で異常繁殖した魔物の討伐、及びアルトと共に他種族の領地に訪れて親交を深め、場合によっては専属騎士のリノンを差し置いてアルトの警護を行う場合もある。また、色々と聖導教会に世話になっている以上は教会側の仕事の依頼も行っている。


「それで調査の結果はどうだったの?」
「拙者たちの一ヶ月にも渡る調査の結果、やはりどの遺跡も放浪島の地下迷宮と同じような造りでござった。但し、出現する魔物に関しては六つの遺跡は共通性が存在せず、放浪島の地下迷宮の魔物達は地上に出た事はないのでござるが、地上に出現した遺跡からは魔物達が地上に出向いて生態系を乱している事が判明したのでござる」
「それってやばくない?」


ゲームと違い、実際に建物などの一か所の場所に魔物のような生物が留まる事は有り得ず、例外があるとすれば地下迷宮の魔物達だが、彼等は脅威を誇れるのはあの島に眠る最下層の「大きな力」の恩恵があるからであり、仮に地下迷宮から抜け出すと異様なまでに弱体化してしまうから自ら地下迷宮から出て行こうとはしない。

だが、新たに地上に出現した六つの遺跡の中に生息する魔物達は建物から抜け出し、元々生息していた生物達を捕食して地上の生態系に大きく関わり、現在は遺跡を取り囲むように各領地の兵士たちが配備されているが焼け石に水であり、既に数多くの新種の魔物が地上に出現している。


「遺跡の中に住む魔物達は地下迷宮同様に地上に存在する種とは比べ物にならない戦闘力を誇り、中には魔法のような特別な能力を扱う種もいるでござる。各領土では大々的に地上に出現した魔物の討伐軍が組まれるようでござるが、王国側に誕生した「大迷宮」だけは未だに無反応でござる」
「大迷宮……ああ、遺跡の事か」
「前回の世界会議で決定された名前でござる」


伝説獣の死後から発見された六つの遺跡は世界会議の結果で数時間の口論の末に「大迷宮」と名付けられ、バルトロス王国の領土内にも遺跡が発見されたが、何故か他の種族と違って出入口は厳重に閉ざされ、魔物が現れたという報告はない。


「うちの領土の大迷宮の場所はどこだっけ?」
「王国内の大迷宮は学園都市から少し離れた場所にある湖の中心に存在するでござるよ。元々は平原だったそうでござったが、大雨期の影響で大きな湖が誕生したと聞いているでござるが……」
「大雨期か……」


現在の大陸は全壊の大雨期によって微妙に地形が変化しており、今までは存在しなかったはずの湖が誕生したり、泉や川も存在する。学園都市に誕生した湖も大雨期の影響で生まれ、現在は「ホウオウ湖」と呼ばれていたりする。

そんな湖の中心に島のように突とつに大地が盛り上がり、その上に遺跡が誕生する。訪れるには船に乗り込む必要があり、さらにはこの遺跡だけは厳重に出入口が戸締りされ、容易に侵入する事は出来ない。


「非常に頑丈な素材でどんな爆薬も魔法も受け入れず、結局は侵入は諦めたでござったが、レノ殿ならば何とか出来るのではないでござるか?」
「迂闊に開いてヤバいもんが眠ってたら危ないじゃん」


聖遺物級の攻撃ならば出入口を破壊して侵入する事も出来るかも知れないが、もしも内部に危険な魔物が潜んでいたとしたら厄介極まりない。またもや地下施設の時のように攫われるのは御免であり、発見した遺跡は隔離しておくしかないだろう。


「そう言えば先ほどデルタ殿を見かけたでござるが、何故か給仕服ではなく騎士団の服装に着替えていたようでござるが……」
「ああ、最近はリノンに剣術も学んでるんだよ。剣以外にもセンリから魔法、レミアから歴史を学んでるよ」
「勉強熱心でござるな~」


現在のデルタは親元(?)を離れて王城に滞在しており、この世界の知識を学んでいる。最初の頃はレノに付きまとって彼の身の危険となりそうなものを排除しようとしていたが、最近では普通に他者とも受け答えが出来るほどに社交性は身に着けており、人間らしく生活している。


「それでは拙者はこれで失礼するでござる。久々に休暇を頂いた故、里の方に帰るでござる」
「忍者の隠れ里?」
「別に隠れているつもりはないでござるが……そうだ。良かったらレノ殿も一緒に来ないでござるか?」
「何故そうなる?」


カゲマルとは親しい間柄ではあるが、実家に呼び出されるほどの仲ではないはずだが、彼女は頭を搔きながら少し照れくさそうに、


「いや~……実は拙者の里にいる忍頭がレノ殿に興味を抱かれて、機会があれば呼んでくるように言伝されていたでござるよ」
「忍頭?」
「拙者たちは王国に仕える「影」の中でも一番偉い人で、実は拙者の祖母でござる」


カゲマルは忍頭の孫娘という事になり、血筋からでは次期の忍頭は彼女の両親のどちらかとなり、その次にカゲマルが忍頭を受け継ぐ事になる。


「実は拙者、祖母から見合いするように執拗に言い渡されて、でまかせでレノ殿とやんごとなき関係だと言っちゃったでござる」
「なに言ってんだこの忍者娘」
「いや、拙者の周りで親しい男性はレノ殿と国王様ぐらいしかいなかったのでつい咄嗟に……流石に国王様に迷惑をかけるのは心苦しかったので、消去法でレノ殿の名前を出しちゃったでござる」
「面倒事に巻き込むなっ」


またもや色々と面倒そうな話になりそうなことにレノは溜息を吐き、それでも彼女には色々とお世話になっているので仕方なく付き合う事にした。
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