種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

メンバー交代

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「爆弾の爆心地みたいになった……」
「ゴーレムの大部分の討伐を確認しました。まだ残っている生体反応もありますが、その全ての数値が低下しています」


レノ達の目の前に広がる大広間は、途轍もない爆発によって地形が変化し、ゴーレム達の無数の残骸が群がっていた。爆発から生き延びた残党のゴーレムも損傷が激しく、再生するのに時間が掛かるだろう。


「ぜえっ……はあっ……流石に、きついですね」
「美香、あまり無理をするな……レノ、彼女の様子は?」
「一応は応急処置は終えたよ、デルタが」
「医療キットも搭載しておいて正解でした」


デルタは何処からか医療器具を取り出し、生存者の治療を瞬く間に終える。この中で回復魔法を扱える美香も疲労しており、更にいつ魔物に襲われるか分からない場所に生存者を何時までも置いておくわけにもいかず、レノたちはここで一度大迷宮の出入口に戻る事にする。


「転移するよ。悪いけど、誰かはここで見張り番をお願い」
「それなら僕が……」
「いえ、私が残ります‼ 国王様をこのような場所には残して置けませんから‼」
「そ、そうか……」


カノンの強い要望により、レノは地面に転移魔方陣を刻み込み、そのまま生存者を連れて転移を発動させる。


「それじゃあ、すぐに戻るからあんまり遠くに行っちゃ、めっ‼だよ?」
「何故、お母さん口調……わ、分かりましたから」
「カノン将軍、気を付けてくれ」
「い、行くなら早く行きましょうよ……あんまり長居すると、フラグっぽいですから」




レノは地面に敷いた魔方陣に魔力を送り込み、転移を発動させる。次の瞬間、風景が入れ替わり、大迷宮の出入口に移動する。すぐにレノは見張り番を行っているはずのリノンとポチ子を探すと、彼女達は暇そうに地上に繋がる階段に座り込んでいた。




「あっ‼ 皆さん‼」
「戻ってきたのか‼」


慌ててリノンとポチ子が駆け寄り、すぐにレノが背負っている生存者に視線を向け、重傷の彼女の姿を表情を引き締める。


「……生きているのか?」
「辛うじてだけど、ちゃんと治療を施せば助かるよ」
「そうか……こっちの方は異常はない。というより、異常が無さすぎる。魔物が一匹も姿を現さなかった」


合流したリノン達と情報を交換を行い、リノン達はあれから転移魔方陣の見張り番を行っていたが、レノ達が去った後にこの場所で待機していたが、魔物達が現れる様子は無かったという。レノの防御魔法陣と美香の魔物除けの効果があったのか、2人でこの場所で皆が帰ってくるのを待っていたらしい。その一方で、レノ達もこれまでの経緯を説明する。


「そうか……そんな事が起きていたのか」
「2人は無事だったのは嬉しいが、この人の事も心配だ。ここに置いて行こうと思う」
「また行くのか? それなら私も……」
「わぅんっ‼私も一緒に行きたいです‼」
「気持ちは有難いが、見張り番がいなくなるのは……」
「ご主人様。私が残ります」
「デルタ?」


2人の申し出にデルタが反応し、彼女は指先を動かし、何かを確認するように俯き、


「電池バッテリーが20パーセントを切りました。しばらくの間、ソーラー充電をする必要があります」
「どのくらいで回復する?」
「この迷宮内の光量では完全回復するまでに3時間ほどかかります。戦闘モードに移行するためには最低でも1時間の充電を必要とします」
「まあ、それなら残ってもらおうかな。危なくなったら、この人を連れて地上に逃げられる?」
「問題ありません」
「あ~……それなら私も少しだけ休憩していいですか? アルト様の傍に離れたくないんですけど、こっちも色々と限界なのでぇっ……」
「美香さんも?」


ぐったりとした様子で美香が地面に座り込み、彼女も相当に魔力を消費しているらしく、この場所にはデルタと共に残しておいた方が良いだろう。という事は美香とデルタと交代という形でリノンとポチ子が合流し、レノ達はすぐにカノンが待っているはずの転移魔方陣まで移動を開始する。


「2人とも、その人の事を頼むよ」
「問題ありません。充電中でも医療キットは展開できます」
「私もマッハで回復するんで、その時はちゃんと交代してくださいよ‼」
「あ、ああっ……分かった」


美香とデルタに見送られ、レノ達は転移魔方陣を発動し、ゴーレムの大広間が存在する通路へと転移する。



――無事に転移が完了し、レノ達は見覚えのある景色が広がり、リノンとポチ子が物珍しそうに視線を向ける。



「ここが迷宮の奥なのか……? 本当に地下迷宮と似ているな」
「すんすん……なんだか爆発したような臭いがします?」
「ちょっとやんちゃしてね……カノンは?」


レノ達は周囲を見渡し、ここで転移魔方陣の見張り番をしているはずの彼女の姿を探すが、どういう事か何処にも見えない。


「カノン将軍⁉」
「カノンさん‼ 何処ですか~⁉」
「まさか……先に進んだのか?」
「そんな……」


カノンは今回の救出任務を誰よりも責任を感じており、先走って1人で先行したのかと思ったが、それにしては奇妙だ。レノが敷いた転移魔方陣の見張り役を放って先に進むなど彼女らしくなく、あまりにも無責任すぎる。


「魔物に襲われたのか?」
「それにしては地面が綺麗すぎる。魔方陣が乱れていないのはおかしい」


仮にこの場所でカノンが魔物に襲われて移動したとしても、魔方陣が無事だったことが可笑しい。魔物は魔力に敏感であり、こんな場所で魔方陣を刻んでいたら間違いなく反応して姿を現すだろうが、地面に刻まれた魔方陣が無傷なままで残っているのは可笑しい。

考えられるとしたらカノンが自発的にこの場所を離れ、先に進んだとしか思えないが、それにしても書置きを残さずに進むなど余程の事態であり、何か起きたのは間違いない。


「追いかけよう‼ ポチ子‼」
「すんすん……この石焼鍋のような臭い、カノンさんです‼」
「カノン将軍はそんな臭いがするのか……」


獣人族のポチ子が最大限に嗅覚を発揮し、そのままカノンの追跡が開始される。ポチ子が四足歩行で移動を開始し、レノ達も肉体強化で加速しながら後を追う。



――ズドォンッ‼



通路の何処かから発砲音が響き渡り、レノ達はカノンの魔銃による物だと確信する。レノ達は急いで音が鳴り響いた方角に移動し、少し開けた場所に出る。


「くっ……⁉ 銃が、効かない⁉」
『敵対生物の発砲を確認。これより、殲滅に移る』



――そこには右腕から血を流しながら魔銃を構えるカノンと、彼女の目の前でトンファーを想像させる武器を構えた男が立っており、レノはその人物を見て驚愕する。



「……デルタ?」



その「男」はデルタやベータと似通った顔立ちであり、彼女たちの姿が重なる。だが、身体つきは間違いなく男性であり、何よりも気にかかるのはデルタたちのような旧世界の「機器」を身体中に取り付けていた。



『敵対生物の増加を確認、これより観測モードに移行する』



男は両目にサングラスを想像させる機器を装備しており、レノ達に視線を向け、瞼を光らせる。その姿にレノはベータの姿が重なり、間違いなく彼は「アンドロイド」なのだ。


「な、何者だ⁉」
「分かりません……急に襲ってきて」
「この人……変な臭いがします‼」
「誰であろうと、敵には変わりない‼」


リノンは剣を構え、アルト達も続く。その一方でレノは男のアンドロイドを観察し、まさかベータたち以外のアンドロイド、しかも男性型が存在した事に驚く。観測とやらが終了したのか、男はレノに視線を向け、


『……人型種4人、クローン種1体を確認。速やかに排除する』
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