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大迷宮編 〈後半編〉
救出作戦
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――無事に塔内の全員を転移魔方陣で移動させると、すぐに彼等に森人部隊の守護戦士達が全員攫われた事を伝え、各々がそれぞれの反応を示す。
「あの至高の戦士と謳われた守護戦士達が攫われただと!?俄かには信じがたいが、お前たちの姿を見る限り、冗談ではないようだな」
「面目有りやせん」
「油断し過ぎ……実戦から離れすぎて、勘が鈍った?」
「そんな言い方はないでしょう!!すぐに救出に向かわないと!!」
「ですが、救い出すとしてもどうやって?彼等が何処に連れ去られたのかも分からなければどうしようも……」
各部隊の隊長達が集合し、どのように攫われた守護戦士達の行方を捜すのか相談を行うが、その間にレノはコトミに耳を掴まれて治療を行ってもらう。
「……はんどぱぅわぁっ」
「無駄に良い発音……ああ、癒される」
「大丈夫か?」
植物の規制された巨人の咆哮によって乱された聴覚が回復し、レノは十分に聞こえる事を確認すると、すぐに起き上がる。体調が戻った以上、何としても攫われた彼等を救わなければならない。
「よし……問題ない。探しに行こう」
「待て、探すと言っても宛はあるのか?」
「ウルが臭いで辿れば良いんじゃない?」
「クゥ~ンッ?」
レノの発言にウルは首を傾げるが、確かに白狼種の嗅覚ならば攫われた守護戦士達の追跡も可能ではあるだろうが、問題は彼の巨体では密林を移動するには苦労するという点である。
「臭いを探ると言っても、レノさんは攫われた方々の臭いが分かるような物をお持ち何ですか?」
「その点については問題あり痩せん。念のために攫われる直前、彼等が落とした武器の類は回収していやすから」
ハヤテは守護戦士の1人が装着していた短剣を差し出し、ウルは鼻先を近づけ、臭いを確かめるようにひくつかせる。本当ならば衣服などが良いのだが、常日頃から戦士が装備していた武器には十分に臭いが残っており、ウルは頷くように首を下げる。
「ウォンッ!!」
「臭いは覚えたようだけど、探すにしてもさっきの場所まで戻らないと……」
「道は覚えているんですか?」
「一応……でも、この人数で移動するのは厳しいな」
守護戦士達が攫われたとはいえ、現在は30名程の人員が集まっており、これだけの人数で移動するにしても時間が掛かり過ぎる。あまりに時間を掛け過ぎると守護戦士達の安否が心配であり、ここは少数精鋭で移動するしかない。
「ウルは俺達以外に乗せないから王国組は全員来るとしても、ハヤテさんとフウカさんはどうする?」
「当然、わっしも参加しやす。この度の失態はわっしの油断から招いたに等しい……何としても取り返してみせやす」
「私も行く。仲間は見捨てない」
「俺達はどうすればいい?」
「黒柱に書き込んだ手に魔方陣の見張り役も必要だから、ライオネル達は残っていてよ。巨人族の人達はこんな密林じゃ、正直移動しにくいだろうし……」
「申し訳ありません……我等の同胞がこのような事態を引き起こす何て……」
「一体、何があったというのだ……」
自分たちの仲間が植物に寄生され、調査部隊を襲撃したという報告に四柱将のカイリとリキは衝撃を受けており、他の巨人族達も同様であり、先に侵入を果たした仲間が変わり果てた姿でエルフ達に襲い掛かったという事実は受け入れがたいだろう。
彼等としても自分の目で仲間達の変貌した姿を見届けたいだろうが、密林は巨人族の彼等が移動するには狭く、不自由な環境であり、供に行動したとしても進行速度が大幅に遅れてしまう。今は一刻も猶予が無く、すぐにでも守護戦士達を救出しなければならない。
「レノ、転紙で皆を呼び出そう」
「それが今回は一枚しか用意してなくて……複製するのは無理だから、一度しか使えない」
アイリィから渡された転移魔法で遠方の物体を召喚できる「転紙」は今回は二枚しか用意しておらず、呼び出せる人間は限られている。それでも場合によっては使用する機会が訪れる可能性もあり、レノはゴンゾウに転紙の召喚陣が書き込まれた用紙を渡す。
「いざという時は呼び出すから、何時でも戦闘に入れるようには準備してて」
「分かった!!」
「レノ、こいつを連れていけ。何かの役に立つかもしれん」
「熱いのは苦手だが、一時的とはいえ、仲間を見捨てる事は出来ん」
ゴンゾウに用紙を手渡すと、ライオネルが自分の隣に立つ剣乱武闘でゴンゾウと熱線を繰り広げた黒牛のミノタウロスを紹介し、名前はギュウキという魔人族の中でも腕利きの冒険者である。
「俺は他のミノタウロスと違い、足の速さには自信がある。お前たちに遅れは取らんぞ」
「そう……なら一緒に付いてきて欲しいけど、相手は生身じゃ分が悪いよ?」
「案ずるな。おい!!俺の武器を持ってこい!!」
「キュロロッ」
ギュウキは魔人部隊の配下のサイクロプスに声を掛けると、すぐにサイクロプスはギュウキの背丈に匹敵する大剣を取り出し、彼に手渡す。剣乱武闘では素手で予選を勝ち抜き、ゴンゾウと喧嘩同然の試合内容を繰り広げていたが、大剣を軽々と振り回して背中に収める。
「これで問題ない。さあ、行くぞ!!」
「よし……皆、ウルに乗って」
「ウォンッ!!」
レノがウルに乗り込み、すぐに背中にリノンとコトミが張り付くと、ハヤテとフウカは自分達が愛用する騎竜に乗り込む。彼等が登場している生物はこのような密林でも問題なく動けるらしく、ギュウキは本当に自分の足だけで追跡する気なのか、クラウチングスタートのような体勢で待機する。
「ウル、俺の言う通りに移動するんだぞ」
「ウォンッ!!」
「だ、大丈夫か?木に当たったりしないだろうな……」
「……ワンちゃんを信じる」
「よし、行け!!」
主人の号令にウルが駆け出し、密林に向けて突進する。その背後にハヤテとフウカが騎乗した騎竜が後に続き、ギュウキも全力疾走で追いかけてくる。
「右、左、左、そこを右!!」
「ウォンッ!!」
「あわわわっ……!?」
「……はわわっ」
ウルはレノの指示通りに移動を行い、器用に密林の樹木の間を駆け抜け、守護戦士達が攫われた場所に目掛けて移動する。流石は放浪島の地上を収める白狼種であり、その速度は密林の中であろうと衰えず、まるで樹木が巨体を避けるように移動を行う。
その後方に騎竜に搭乗したハヤテとフウカが続き、ギュウキは派手に砂煙を上げながら最後尾を疾走する。流石に護衛長が使用する騎竜は並の速度ではなく、ミノタウロスのギュウキもウルの後に続く。
移動を開始してから数分後、予想以上の速さでレノ達は植物と化した巨人族に襲われた場所に辿り着くと、ウルはすぐに地面に跪いて臭いを嗅ぐ動作を行う。その後方には息が荒い騎竜と全身に汗を流したギュウキの姿があり、周囲の様子を伺う。
「こ、ここで襲われたのか……?」
「そうでやんす。唐突に現れて、わっしもレノさんも気付くのが遅れてしまいやした」
「……心眼でも捉え切れなかったの?」
「その点については申し開きも出来やせん……この密林のせいか、どうにも感覚が狂わされて上手く相手との距離が掴めなくなっている事に気付かなかったわっしの不手際でして……」
「ウォンッ!!」
会話の最中にウルが鳴き声を上げ、攫われた守護戦士の臭いを見つけ出し、即座に移動を再開した。
「あの至高の戦士と謳われた守護戦士達が攫われただと!?俄かには信じがたいが、お前たちの姿を見る限り、冗談ではないようだな」
「面目有りやせん」
「油断し過ぎ……実戦から離れすぎて、勘が鈍った?」
「そんな言い方はないでしょう!!すぐに救出に向かわないと!!」
「ですが、救い出すとしてもどうやって?彼等が何処に連れ去られたのかも分からなければどうしようも……」
各部隊の隊長達が集合し、どのように攫われた守護戦士達の行方を捜すのか相談を行うが、その間にレノはコトミに耳を掴まれて治療を行ってもらう。
「……はんどぱぅわぁっ」
「無駄に良い発音……ああ、癒される」
「大丈夫か?」
植物の規制された巨人の咆哮によって乱された聴覚が回復し、レノは十分に聞こえる事を確認すると、すぐに起き上がる。体調が戻った以上、何としても攫われた彼等を救わなければならない。
「よし……問題ない。探しに行こう」
「待て、探すと言っても宛はあるのか?」
「ウルが臭いで辿れば良いんじゃない?」
「クゥ~ンッ?」
レノの発言にウルは首を傾げるが、確かに白狼種の嗅覚ならば攫われた守護戦士達の追跡も可能ではあるだろうが、問題は彼の巨体では密林を移動するには苦労するという点である。
「臭いを探ると言っても、レノさんは攫われた方々の臭いが分かるような物をお持ち何ですか?」
「その点については問題あり痩せん。念のために攫われる直前、彼等が落とした武器の類は回収していやすから」
ハヤテは守護戦士の1人が装着していた短剣を差し出し、ウルは鼻先を近づけ、臭いを確かめるようにひくつかせる。本当ならば衣服などが良いのだが、常日頃から戦士が装備していた武器には十分に臭いが残っており、ウルは頷くように首を下げる。
「ウォンッ!!」
「臭いは覚えたようだけど、探すにしてもさっきの場所まで戻らないと……」
「道は覚えているんですか?」
「一応……でも、この人数で移動するのは厳しいな」
守護戦士達が攫われたとはいえ、現在は30名程の人員が集まっており、これだけの人数で移動するにしても時間が掛かり過ぎる。あまりに時間を掛け過ぎると守護戦士達の安否が心配であり、ここは少数精鋭で移動するしかない。
「ウルは俺達以外に乗せないから王国組は全員来るとしても、ハヤテさんとフウカさんはどうする?」
「当然、わっしも参加しやす。この度の失態はわっしの油断から招いたに等しい……何としても取り返してみせやす」
「私も行く。仲間は見捨てない」
「俺達はどうすればいい?」
「黒柱に書き込んだ手に魔方陣の見張り役も必要だから、ライオネル達は残っていてよ。巨人族の人達はこんな密林じゃ、正直移動しにくいだろうし……」
「申し訳ありません……我等の同胞がこのような事態を引き起こす何て……」
「一体、何があったというのだ……」
自分たちの仲間が植物に寄生され、調査部隊を襲撃したという報告に四柱将のカイリとリキは衝撃を受けており、他の巨人族達も同様であり、先に侵入を果たした仲間が変わり果てた姿でエルフ達に襲い掛かったという事実は受け入れがたいだろう。
彼等としても自分の目で仲間達の変貌した姿を見届けたいだろうが、密林は巨人族の彼等が移動するには狭く、不自由な環境であり、供に行動したとしても進行速度が大幅に遅れてしまう。今は一刻も猶予が無く、すぐにでも守護戦士達を救出しなければならない。
「レノ、転紙で皆を呼び出そう」
「それが今回は一枚しか用意してなくて……複製するのは無理だから、一度しか使えない」
アイリィから渡された転移魔法で遠方の物体を召喚できる「転紙」は今回は二枚しか用意しておらず、呼び出せる人間は限られている。それでも場合によっては使用する機会が訪れる可能性もあり、レノはゴンゾウに転紙の召喚陣が書き込まれた用紙を渡す。
「いざという時は呼び出すから、何時でも戦闘に入れるようには準備してて」
「分かった!!」
「レノ、こいつを連れていけ。何かの役に立つかもしれん」
「熱いのは苦手だが、一時的とはいえ、仲間を見捨てる事は出来ん」
ゴンゾウに用紙を手渡すと、ライオネルが自分の隣に立つ剣乱武闘でゴンゾウと熱線を繰り広げた黒牛のミノタウロスを紹介し、名前はギュウキという魔人族の中でも腕利きの冒険者である。
「俺は他のミノタウロスと違い、足の速さには自信がある。お前たちに遅れは取らんぞ」
「そう……なら一緒に付いてきて欲しいけど、相手は生身じゃ分が悪いよ?」
「案ずるな。おい!!俺の武器を持ってこい!!」
「キュロロッ」
ギュウキは魔人部隊の配下のサイクロプスに声を掛けると、すぐにサイクロプスはギュウキの背丈に匹敵する大剣を取り出し、彼に手渡す。剣乱武闘では素手で予選を勝ち抜き、ゴンゾウと喧嘩同然の試合内容を繰り広げていたが、大剣を軽々と振り回して背中に収める。
「これで問題ない。さあ、行くぞ!!」
「よし……皆、ウルに乗って」
「ウォンッ!!」
レノがウルに乗り込み、すぐに背中にリノンとコトミが張り付くと、ハヤテとフウカは自分達が愛用する騎竜に乗り込む。彼等が登場している生物はこのような密林でも問題なく動けるらしく、ギュウキは本当に自分の足だけで追跡する気なのか、クラウチングスタートのような体勢で待機する。
「ウル、俺の言う通りに移動するんだぞ」
「ウォンッ!!」
「だ、大丈夫か?木に当たったりしないだろうな……」
「……ワンちゃんを信じる」
「よし、行け!!」
主人の号令にウルが駆け出し、密林に向けて突進する。その背後にハヤテとフウカが騎乗した騎竜が後に続き、ギュウキも全力疾走で追いかけてくる。
「右、左、左、そこを右!!」
「ウォンッ!!」
「あわわわっ……!?」
「……はわわっ」
ウルはレノの指示通りに移動を行い、器用に密林の樹木の間を駆け抜け、守護戦士達が攫われた場所に目掛けて移動する。流石は放浪島の地上を収める白狼種であり、その速度は密林の中であろうと衰えず、まるで樹木が巨体を避けるように移動を行う。
その後方に騎竜に搭乗したハヤテとフウカが続き、ギュウキは派手に砂煙を上げながら最後尾を疾走する。流石に護衛長が使用する騎竜は並の速度ではなく、ミノタウロスのギュウキもウルの後に続く。
移動を開始してから数分後、予想以上の速さでレノ達は植物と化した巨人族に襲われた場所に辿り着くと、ウルはすぐに地面に跪いて臭いを嗅ぐ動作を行う。その後方には息が荒い騎竜と全身に汗を流したギュウキの姿があり、周囲の様子を伺う。
「こ、ここで襲われたのか……?」
「そうでやんす。唐突に現れて、わっしもレノさんも気付くのが遅れてしまいやした」
「……心眼でも捉え切れなかったの?」
「その点については申し開きも出来やせん……この密林のせいか、どうにも感覚が狂わされて上手く相手との距離が掴めなくなっている事に気付かなかったわっしの不手際でして……」
「ウォンッ!!」
会話の最中にウルが鳴き声を上げ、攫われた守護戦士の臭いを見つけ出し、即座に移動を再開した。
応援ありがとうございます!
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