力も魔法も半人前、なら二つ合わせれば一人前ですよね?

カタナヅキ

文字の大きさ
45 / 215
一人旅編

力を示せ

しおりを挟む
「さ、さっきも言った通り、オークの討伐に関しては冒険者の力は借りるつもりはない。私の部下と、ここにいるレノ殿に任せる事にしたのだ。今回、ここへ訪れたのはその報告だけだ」
「おいおい、それはおかしいんじゃないのかい?魔物退治ならその道の専門家に任せるのが一番だろう?あんた、あたしの事が嫌いだからってうちの冒険者に頼るつもりはないだけじゃないのかい?」
「ふ、ふん!!私も商人だ、私情で仕事に影響を及ぼすような真似はしない!!いいか、ここにいるレノ殿はゴブリンの大群とホブゴブリンを相手にたった一人で倒されたのだ!!そんな芸当がお前の所に所属する冒険者に真似できるのか!?」
「……何だって?この坊主がゴブリン共を……?」
「えっと……」


ネカの言葉を聞いてテンは驚いた表情を浮かべ、長年の付き合いでネカがこんな状況で嘘を吐く人間ではない事はテンも良く理解している。それでも彼女はレノがゴブリンとホブゴブリンを倒したという言葉に疑問を抱く。

ギルドマスターとしてはテンは様々な冒険者を目にしており、若かりし頃は彼女も一流の冒険者として活躍していた。そのために人を見る目に関しては彼女も自信はあるが、テンの目から見たレノがホブゴブリンを倒せるほどの実力者には見えない。


(……確かに普通の人間にしては身体を鍛えこんでいるね。だけど、とてもホブゴブリンを倒せる程とは思えないね)


レノの様子を見てテンは服越しでも彼がどれほどの筋肉を身に付けているのか見抜く事は出来た。山暮らしで幼少期から身体を鍛えていたレノはとしてはよく鍛えこまれている肉体だが、それでもホブゴブリンのような化物を倒せる程の力を持っているとは思えなかった。


「ネカ、本当にこの坊主がホブゴブリンを倒したのかい?」
「ああ、間違いない!!私はこの目ではっきりと見たのだ、このレノ殿が一撃でホブゴブリンを打ち破る姿をな!!」
「……その話、本当かい?」
「えっ……あ、はい。倒しました」


ネカが興奮気味にレノの肩を掴んでホブゴブリンを倒した時の事を語ると、テンは頭を掻きながら眉をしかめる。ネカの態度から彼が嘘を吐いている様に見えないが、テンからすればレノがホブゴブリンを倒せる程の実力者にはどうしても見えなかった。


(あたしの観察眼も錆びついたのかね……それともこの坊主が巧妙に弱者を演じているのか、どちらにしろ確かめる必要があるね)


自慢そうにレノの強さを語ってくるネカに対してテンは腕を組み、このまま二人を帰すわけにはいかず、どうするべきかと頭を悩ませる。

このままではネカはレノと部下を連れてオークの住処に向かってしまい、もしもテンの観察眼通りの実力しかレノは持ち合わせていなかった場合、二人の命どころか彼等に付いていく人間の命も危うい。そう考えた彼女はレノの本当の実力を確かめる事にした。


「ネカ、そこまであんたがその坊主の強さに信頼しているというのなら、あたしにもその坊主の強さを見せてくれないかい?」
「な、何だと!?」
「それはどういう意味ですか?」
「な~に、簡単な話さ。ネカはあんたがうちで働いている冒険者よりも余程頼りになると言ってるんだろう?それなら、うちの冒険者とあんたがどっちか強いのかはっきりさせたいのさ」
「急に何を言い出すのだ!?そんな話、引き受ける必要はありませんぞレノ殿!!」
「別に嫌なら無理強いはしないよ。但し、冒険者ギルドのギルドマスターとしてあたしは一般人であるあんたらをオークの住処に行かせるわけにはいかないね。どうしても行くというのならうちの冒険者も同行させるよ」
「なっ!?ふ、ふざけるな!!私はお前の所の冒険者など雇う気はないぞ!?」


テンの言葉を聞いてネカは立ち上がって彼女の冒険者を雇うつもりはない事を断言するが、そんな彼に対してテンは机を蹴り上げて怒鳴りつける。


「ふざけた事をいっているのはあんたさ、よりにもよって冒険者でもなければ傭兵にも見えない一般人にオークの討伐を任せる?馬鹿も休み休み言いな!!」
「うっ……!?」
「ふん、あんたが一度でもあたしの言葉に逆らえた事はあったかい?言っておくが、これは決定事項だ!!あたしの言葉に従えないないのならこのまま帰すつもりはないよ!!」


凄まじいテンの気迫にネカは圧倒され、腰が抜けた様に座り込む。その様子を見てテンは鼻を鳴らし、堂々とふんぞり返る。

二人の様子を見てレノはネカが彼女に対してどうして敵対心を抱いている理由が分かった。どうやらこの二人の力関係は完全にテンが上らしく、ネカは彼女に逆らえないらしい。


(なるほど、ネカさんが冒険者に頼りたくはない理由はこの人の事が苦手だからなのか……でも、間違った事は言ってないんだよな)


テンの言葉は一方的な暴論というわけでもなく、冷静に考えれば彼女の告げた話は至極まっとうな内容だった。普通ならば冒険者に頼むべき仕事を最近出会ったばかりの少年に任せるという方がおかしな話であり、そんな話を聞かされれば冒険者ギルドのギルドマスターとしてテンも反対せざるを得ない。


(このままだと、ネカさんも断れなさそうだな……うわ、こっちを見てるよ)


ネカはレノに助けを求めるようにちらちらと視線を向け、そんな態度を取られてもレノとしては困るのだが、彼としてはこのままテンの言う通りに従えば二人の関係性は変わらないと考えていた。

昔からテンに苦手意識があるネカはどうにか彼女の提案を断る事で二人の力関係を逆転させたいと考えているのはレノにも察しがついた。流石に逆転とまではいかなくとも、いつも素直に従うばかりではない事を示すだけでも二人の立場は変わるだろう。


(仕方ないな……冒険者と手合わせする機会なんて滅多にないだろうし、それに対人戦も経験しておいても悪くはないか)


レノはネカに助け舟を出す事を決め、テンに対して彼の代わりにその条件を引き受けることを告げた。


「分かりました。なら、俺が実力を示せば納得してくれるんですね?」
「れ、レノ殿……!!」
「……へえ、あんた本気かい?いっておくけど、うちの冒険者は荒っぽい奴等ばっかりでね。手加減なんて出来ないよ」
「大丈夫です、こう見えて俺も……結構修羅場を潜り抜けてますよ」
「へえっ……言うじゃないかい」


テンに対してレノは自信に満ちた表情を浮かべると、その言葉に対してテンは一瞬だけ驚いた表情を浮かべるが、すぐに口元に笑みを浮かべる。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”

どたぬき
ファンタジー
 ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。  なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。

処理中です...