最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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冒険者編

進路変更

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ドリスの屋敷に一泊した後、ルノ達は彼女とその弟子たちに見送られて獣人国に向けて移動を行おうとしたが、道中でイチ、ニイ、サンの三匹に囲まれながらリーリスが提案を行う。


「ルノさん、次の依頼人に会う前にちょっと寄り道しませんか?」
「寄り道?」
「帝国と獣人国の間に日の国があるんですよ。少し前にも話題に出た国ですけど、ちょっと立ち寄りませんか?」
「俺達の様な地球の人が作り出した国だっけ?」
「そうです。私達にも全く縁がないとは言い切れないでしょう?」
「まあ、そうなるのかな?」


ルノとリーリスは地球人(リーリスの場合は前世)のため、同じく地球から訪れた人間が作り出した「日の国」には用身を抱く。そのため、急遽進路を変更して獣人国に赴く前に日の国へ向かう事にした。


「このまま馬車で向かうの?」
「そうですね、ここから遠くないですし、のんびりと行きましょうか。道中に私の知る限りの日の国の知識も教えてあげますよ」
「ブモォッ」
「ウォンッ」
『クゥ~ンッ』


運転はミノとウルに任せ、馬車の中でルノはリーリスから日の国の歴史を学ぶ。彼女も訪れた事はないが、前々から興味は抱いてたらしく、実は旅の当初からこの国に立ち寄ろうとは考えていたらしい。



――日の国は帝国とは数百年以上も同盟を結んでいる小国であり、彼等は侍や忍者という特殊な職業の人間が数多く存在する。どちらの職業も普通の剣士や暗殺者よりも特殊な技能を身に着ける事が出来る特別な職業らしく、帝国や獣人国とは友好的な関係を築いていた。

小国ではあるが日の国が管理する米や麦はこちらの世界の物よりも良質であり、獣人国は彼等から食料を輸入しており、帝国は日の国を保護する代わりに彼等が世界中に放った「忍者」が集めた情報を提供して貰っている。

帝国と獣人国の両国から保護を約束されているため、日の国に攻め入る国家は存在せず、現在では二か国以外からの国家からも親交を求められている。また、日の国は比較的に魔物の危険度が低い地域に住んでいるため、世界で最も安全な国とも言われていた。


「日の国は一度も戦争した事がないの?」
「いえ、実際は何度か戦争に巻き込まれようとした事はあります。だけどその度に日の国に仕えている忍者が事前に阻止しています」
「どういう事?」


長い歴史の中で帝国や獣人国の王族や皇族の中には日の国の土地を狙い、何度か軍隊を派遣しようとした者もいた。しかし、彼等が軍を動かそうとする度に日の国は事前に忍者を送り込み、重要な人材を誘拐して彼等の命と引き換えに軍隊を撤退させるように命じたという。

皇族や王族、あるいは大臣や将軍などの有力な人材を先に誘拐し、軍隊が派遣される前に要求を伝える。この方法で日の国は何度も危機を乗り越えており、忍者という存在がどれほど有能な職業なのかを思い知らされた。無論、日の国に対抗するために暗殺者の職業の人間を集めて忍者に対抗する組織を作り出そうとしたこともあったが、結局は失敗に終わっている。


「戦争を仕掛けられる前に自分の国の王様や王子が攫われるんですから、流石に周辺諸国も日の国の恐ろしさを自覚しました。そもそも仮に軍隊を派遣しても、日の国には数千人の侍の職業の人間がいますからね。大きな被害は免れませんよ」
「侍か……そんなに凄いの?」
「私と同じ帝国四天王のギリョウさんは職業は剣士ですけど、実は若い頃に日の国に訪れて剣術を学んだんですよ。ギリョウさんの強さはご存知ですよね?」
「なるほど」


ギリョウの実力に関してはルノはあまり彼が戦う姿を見たことがないので何とも言えないが、それでも帝国の四天王に選ばれる程の実力者である事は理解しており、彼の剣技が日の国から学んだ技術である事が判明し、日の国の剣の技術が非常に優れている事が伺える。


「本物の侍とか忍者に会えるのかな?」
「どうでしょうかね、少なくとも私達の想像通りの侍や忍者と会えるとは限りませんよ。この世界に順応した職業だと考えた方が良いです」
「そうだね。だけど、この世界に飛ばされてよく生きてたよね」
「ルノさんのようにきっとこちらの世界に訪れた時点で特別な力を授かっていた可能性が高いですよ。多分、最初にこちらに訪れた日の国を築き上げた人間の方々も勇者のような力を身に着けていたのかも知れませんね」
「そうなのか」
「もしかしたら日の国の人間が特別な職業を覚えられるのは異世界人の血を継いでいる可能性が高いですね。そう考えるとルノさんがこちらで誰かと結婚して、子供が出来たらその子供も有能な初級魔術師の職業の人間に育つかもしれません」
「どうかな……俺はあっちの世界に戻りたいんだけど」
「私はこっちの世界も気に入ってますけどね。まあ、長々と話しましたけど実際に私も訪れた事はないので日の国がどんな場所なのかはこの目で確かめましょう」
「そうだね」


リーリスの言葉にルノは頷き、これから訪れる日の国の期待を高める一方、自分と同じ異世界人が築き上げたという国がどんな場所なのか気になっていた。
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