最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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外伝 〈一人旅〉

死霊船

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「凄いの見たな……でも、参ったな。周りは海しか見えないし、何処を目指せばいいんだろ」


飛翔術を利用してルノは海の上を移動し、大陸や島らしき物を探すが移動を開始してから数十分は経過するが、未だに何も見えない。このままでは魔力が尽きて海の中に落ちてしまい、海中の魔物の餌になってしまう。


「参ったな……氷塊で船でも作り出すかな。いや、どっちにしろ魔法を使ったら魔力がなくなっちゃうし……ん?あれは……」


海上に何かが浮かんでいるのを目撃したルノは「遠視」と「観察眼」の能力を発動させ、正体が「大船」である事を確認する。しかし、随分と錆び付いており、帆も存在しなかった。


「廃船……かな?でも、どうしてこんな所に……まあ、いいか」


ルノは船が存在する方向に移動し、船の上に移動する。予想通りに人の気配は存在せず、浮かんでいること自体が奇跡としか思えない程に古ぼけていた。しかし、元々は立派な船で会った事は間違いなく、船の大きさ自体はガリオン船にも匹敵する。


「お邪魔します」


船の甲板に着地したルノは周囲の様子を確認し、大分前に船が放置されている事を確認する。甲板には骸骨と化した人間の死体が散乱しており、ルノは剣を握りしめた状態で横たわる骸骨を確認して違和感を抱く。


「この船の人達かな?でも、おかしいな……死んでから随分と時間が経っているはずなのに妙に綺麗なような……」


船の甲板に存在する骸骨の衣服も朽ち果てており、それにも関わらずに骸骨だけは妙に小奇麗な状態で残っていた。まるで誰かが骸骨だけを洗い流したように妙な清潔感が感じられ、ルノは試しに骸骨に近付く。


「お、この人の持っている武器って日本刀かな。日の国で作られた代物かな?」


倒れている骸骨の中に日の国で生産されたと思われる日本刀が混じっている事に気付き、ルノは手を伸ばそうとした時、唐突に眼球が存在しないはずの骸骨の瞳が赤色に光り輝く。そして既に筋肉も内蔵も皮膚も存在しないはずの骸骨が起き上がり、ルノに向けて日本刀を突き刺す


「うわっ!?」
「カタカタカタッ……!!」


顎を小刻み震わせながら起き上がった骸骨は日本刀を振り翳すが、咄嗟にルノは後ろに下がって回避する。予想していたとはいえ、やはりただの死体ではなく、ルノはリーリスから教わった魔物の事を思い出す。


「アンデッド……死霊系の魔物か」
『カタカタカタッ……!!』


一体が起き上がると甲板に存在した他の骸骨も起き上がり、それぞれが武器を手に取る。大半が装備している武器や防具は破損しているが、それでも数が多く、甲板に数十体のアンデットが集う。


「意外と多いな。まあ、これだけ大きい船なら当然か」
「カタカタカタッ!!」


声帯が存在しないので喋ることが出来ないのか、アンデッドは顎を何度も噛み合わせながらルノに向けて駆け出す。筋肉が存在しないにも関わらずに警戒な動作で接近する骸骨達に対し、ルノは掌を構えて光球の魔法を発動させる。


「うざい」
『ッ……!?』


ルノが上空に掌を翳した瞬間、無数の光球が誕生し、アンデッド達に光を浴びせる。聖属性の魔力で構成された光球の光はアンデッドに絶大な効果を発揮し、骸骨達は光を浴びた瞬間に身体から黒色の煙を放って倒れこむ。


「死霊系には聖属性の魔法が効果的……リーリスの言う通りだな」


光球の魔法で甲板を照らしながらルノは骸骨が次々と倒れていく姿を確認し、その場に座り込む。体を休めるはずが思わぬ敵と遭遇した事でまたもや魔法を使ってしまい、流石に疲労も限界に達していた。


「今日はここに泊まるしかないか……明日には戻れるといいけどな」


船に帆が存在すれば風圧の魔法で移動も楽になったかもしれないが、生憎とこの船には帆どころか帆柱も存在しない。魔物に襲われたのか全ての帆柱は砕け折れており、操作する事は難しい。


「小船とかあったらアイテムボックスに収納して移動しよう……もう寝るか」


大分日も暮れ始めており、ルノは甲板で夜を迎える事にした。風邪を引く可能性もあったが、どうしても身体の脱力感に抗えず、そのまま一晩を過ごした――





――翌日の早朝、ルノは目を覚ますと最初に見えたのは真っ白な世界だった。何事かと身体を起き上げると、どうやら船が白霧に覆われているようであり、周囲の光景が全く見えなかった。


「なんだ……?霧?」


白霧を見ると昨日に殺された双子の事を思い出して嫌な気分に陥り、ルノは一応は周囲を警戒しながら身体の埃を振り払う。昨日のうちにアンデッドは全滅させており、この船には彼以外は誰も存在しないはずだが、妙な気配を感じる。


「嫌な感じだな……」


最初に魔物と遭遇した時の事を思い出し、ルノは周囲を警戒する。まるで何者かに「殺気」を向けられているような感覚を感じ取り、飛翔術を発動する準備を行う。
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