最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
2 / 207
バルトロス帝国編

発端

異世界に召喚された少年「霧崎レナ」は白鐘学園高校に通っている普通の高校生だが、実は彼は幼少の頃に両親を亡くしており、今現在は両親の友人に引き取られて育てられていた。子供の頃に彼と両親は交通事故に遭い、両親は死亡してしまったが奇跡的に子供だったレナは命は助かり、それでも事故の影響なのか心臓を患い、本来ならば普通の生活を送れるような肉体ではなかった。

しかし、両親の友人である1人の女性によってレナの人生は一変する。彼女は有名な医者に頼んで彼に新しい心臓の移植手術を行わせ、治療に必要な莫大な費用を全て支払ってくれた。彼の心臓移植の手術は成功に終わり、レナは普通に生活出来る程回復を果たす。

本来ならばレナは両親の親戚に預けられるはずだったのだが、友人の女性がそのまま彼を引き取る。彼女はゲーム業界の中でも世界的に有名な大企業の会長を務めており、レナは何不自由がない生活を過ごした。但し、高校の入学が決まると彼はこれ以上に両親の友人に迷惑は掛けられないと考え、1人暮らしを申し込む。幸いにも学生寮が存在する高校を探し出し、高校に入学を果たしてからは女性の元を離れて生活していた。

レナは幼い頃は身体が弱く、同世代の中でも小柄で女性のように整った顔立ちをしていたため、その事で他の子供からからかわれていた時期もあった。しかし、事故が起きた時に彼の肉体は傷だらけとなり、今でも胸元を中心に傷跡が残っている。



だが、事故が起きた日から彼は奇妙な特技を覚えた。正確に言えば特技というよりは「技能」であり、彼は他人の「嘘」を見抜く力を身に着けた。しかも相手の挙動や動作を見抜くような読唇術の類ではなく、声を聞くだけで相手が自分に対してどのような意識を向けているのか理解できた。より正確に言えば相手の「感情」さえも読み取れる能力を手に入れた。



この能力がどうして芽生えたのかは彼本人も分からないが、人が死にかけた時に思いも寄らぬ力を手にする事があり、彼の場合は虚実を見抜く能力を手に入れたと考えられた――






――そして現在、レナと他の4人はローブ姿の中年男性の集団に囲まれながら廊下を移動していた。先ほどまで居た場所は「玉座の間」と呼ばれる場所らしく、驚くべき事に5人は自分達が西洋風の大きな城の中に存在した事を理解する。通路を歩いていると甲冑姿の人間が頻繁に徘徊しており、使用人と思われるメイド服姿の女性も数多く見かけた。

未だに5人は自分達が住んでいる世界とは違う世界に訪れたという話は完全には信じていないが、すぐに彼等は窓の外の風景を目撃した瞬間、この世界が異世界である事を思い知らされる。それは空の上に明らかに鳥ではない巨大な生物が浮揚しており、ファンタジーの世界で最も有名で代表的な存在の「ドラゴン」が空に存在したのだ。



『オォオオオオオオオオオオオッ……!!』



全身が白色の鱗に覆われた巨大な生物が翼を羽ばたかせて空を移動する光景に5人は圧倒され、言葉を失ってしまう。一目見ただけで空を飛んでいる生物が作り物の類ではない事を悟り、実際に目の当たりにした事で嫌でも自分達が他の世界に訪れた事を理解してしまう。そんな彼等の反応に気付いたのか、同行していた男性の1人が誇らしげに答える。


「はっはっはっ!!勇者殿は白銀竜を見るのは初めてですかな?あれはこの地方にだけ姿を見る事が出来る竜種ですぞ!!」
「それにしても勇者殿が召喚された時に白銀竜がこの帝都に姿を現すとは……これは吉兆ですな」
「は、白銀竜……?」
「嘘……信じられない」
「まさか……本当に僕達は……」
「うわぁ~綺麗な生物だったね」
「え、あ、うん」


男性の説明は耳に入らず、5人は空を通り過ぎる竜の姿に呆然とする。あのような生物を見た以上、ここが自分達の住んでいる世界ではない事を嫌でも認めるしかない。しかし、だからといって自分達が国王やデキンが言っていた「世界を救う勇者」とはまだ信じられない。


「あの……さっき気になっていたんですけど、この世界には魔法が存在するんですか?」
「はあっ……?仰っている意味が分かりませんが……」
「ああ、そう言えば伝承では勇者様の世界では魔法が存在しないと聞いておりましたが本当ですか?」


デキンが思い出した風に言葉を告げるが、レナは彼の声を聞いた瞬間に眉を顰める。彼は「嘘」を言っている訳ではないが、だからといって「真実」だけを告げた訳ではなかった。恐らくは嘘と真実を混ぜ合わせた言葉を口にしており、彼は最初から勇者達が魔法の存在を知らないと確信して置きながら敢えて黙っていた事をレナは見抜く。


「じゃ、じゃあ俺達も魔法を使えるようになるのかよ!?」
「当たり前ですな。まさか魔法を覚えないで魔王軍を討伐する気だったのですか?」
「マジかよ……信じられねえっ……!!」


デキンの言葉に加藤が興奮したように口を漏らし、他の人間も少なからず自分達が魔法という非現実的な能力を扱えるという話に大きな興味を抱いた。レナは今回のデキンの言葉には嘘は感じられず、本当に魔法という力を自分達が身に着ける事が出来ると確信した。

そして移動を開始してから10分程経過すると、5人は魔法陣が刻まれた床の広間に到着し、周囲には七つの柱が存在する変わった部屋に案内される。柱の上には七色の水晶玉が存在し、それぞれが緑、赤、青、黄、茶、白、黒と分けられ、中心には無色の水晶玉が空中に浮かんでおり、完全に台座の上空に浮揚していた。


「ここは儀式の間と呼ばれている魔術師だけしか立ち入ることが出来ない広間です。ここで今から勇者様方の適性を検査し、それと同時にステータスの魔法を覚える儀式を施します」
「ぎ、儀式?」
「別に怖がる必要はありません。中央に存在する台座の水晶玉に掌を翳すだけでいいのです。それだけで皆様は女神の加護を授かるでしょう」
「女神の……加護?」


また新しい単語が出て着た事に5人は戸惑い、説明を求めるように視線を向けると、デキンはこの世界の魔法の存在を説明してくれた。


「この世界では成人した人間は「ステータスの儀式」を受ける必要があります。これによって自分に適した職業が現時点の能力を確かめる事が可能であり、同時にスキルと呼ばれる技能も身に着ける事が出来るのです。このステータスを受ける事によって「女神の加護」と呼ばれるスキルを修得した人間だけが魔法を扱えるのです」
感想 263

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)