最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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バルトロス帝国編

占い師

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「おおっ……ファンタジーな光景だな」


王城から抜け出したレナは城下町に辿り着き、ゲームや漫画でしか見た事が無い煉瓦製の建築物を目撃し、更には街道を行き交う人々の中には「エルフ」や「ドワーフ」と思われる外見の人種も存在した。他にも獣の耳や尻尾を生やした「獣人」や普通の人間の2倍近くの体格の「巨人」も見かけ、目の前の光景がここが彼の知らない異世界である事の証明であり、まずは街の中をを少し歩く事にした。


「おい、そこの兄ちゃん!!観光客かい?見た事もない服を着ているが……うちで何か買ってくれよ」
「串焼き……?」


声を掛けられて振り返ると屋台で串焼きのような食べ物を販売している男性が存在し、普通の人間ではないのか頭に犬耳を生やしていた。中年男性が獣耳を生やしているのを目撃するのは中々に衝撃的な光景だが、この世界ではこれが普通らしく、周りを行き交っている人間は特に反応はしない。


「これ幾らですか?」
「どれも銅貨1枚だよ。1つ買っていくかい?」


肉が突き刺さった串が熱せられた鉄網の上で香ばしい匂いを発しており、レナは小袋を確認して銅貨を1枚払い、串焼きを1つ受け取る。あまり考えずにデキンから渡された金銭を使ってしまったが、それでも空腹には勝てず、レナは串に突き刺さった肉に食らいつき、予想以上の美味しさに感動する。


「美味いっ……だけど、これで銅貨1枚なの?」
「少し高いと思うかい?だけどこれくらいの値段じゃないと利益が出ないんだ……味には自信があるんだけどね……」
「そうなんですか……」


この世界の金銭の価値はレナはまだ知らないが、周囲に売り出されている露天商の品物から値段を確認し、ある程度の予測を行えた。恐らく銅貨は日本円に換算すると「1000円」銀貨は「1万円」ぐらいの価値であり、金貨は「10万円」と同程度の価値だと判断した。レナの所持金は「銀貨」が5枚と銅貨が30枚程であり、日本円にすると8万円程となる。

これくらいの値段ならばデキンが言っていたように街で数日程過ごすには問題はないだろうが、一先ずは今夜の宿を見つけなければならず、レナはもう一つだけ串焼きを購入し、屋台の男性に尋ねる。


「ここに宿屋とかありますか?出来れば値段が安い所を知りませんか?」
「宿屋かい?この街には腐るほどあるからな……俺のお勧めは幸運猫という宿屋かな。値段は少し高いけど、サービス良いよ」
「ちなみにその宿屋の値段はどれくらいですか?」
「食事無しで止まるだけなら銀貨1枚ぐらいかな」


日本円で換算すると1万円の値段で宿泊できるという事だが、高いのか安いのか微妙な値段である。それでも屋台の男性から正確な位置を教えてもらい、まずは今夜の宿を確保するためにレナは移動を行う。


「あれ……そう言えば何で日本語だろう?」


移動の最中、レナは先ほどの屋台や露天商の品物の値札を確認した時、元の世界の数字や日本語で描かれていた事を思い出す。ここは間違いなく異世界にも関わらずに自分が理解できる文字が浸透している事に疑問を抱き、先ほど儀式の際に開いた自分のステータス画面をもう一度表示する。


「もしかしてこいつのせいかな……」



――スキル一覧――

・翻訳スキル――熟練度:1
(この世界の共通言語と文字を理解する)



画面をスクロールすると一番下の部分に「スキル一覧」という文章が存在し、表示されている内容によると「翻訳スキル」と呼ばれるスキルをレナは既に修得していたようであり、文面から察するにこちらの世界の文字や数字が理解できるのは翻訳スキルの効果だと判明する。他に彼が覚えているスキルは存在せず、画面の上部に表示されているSPスキルポイントを消費する事で新しいスキルを覚える事ができると考えられた。


「この熟練度って何だろう……」


レナは翻訳スキルの隣に表示されている「熟練度」という項目が気にかかり、現時点でもこの世界の言語を理解できるのは分かるが、この熟練度を上昇させる事で更に効果が高まるのかと予測していると、不意に周囲の人々に視線を向けて違和感を抱く。


「……そういえば武器を持っている人が多いな」


行き交う人間の中には武器を所持している人間が多く、剣、槍、弓、あるいは斧や盾を所持している。中には日本刀のような武器を所有している者も存在し、漫画やゲームなどでは定番の「冒険者」と呼ばれる存在をレナは思い出す。


「冒険者か……この世界には存在するのかな?」
「ん?貴方は今、冒険者って言った?」
「え?」


無意識にレナが自分の考えた言葉を呟いた瞬間、すぐ傍に占い師風の露天商が存在した。視線を向けるとまだ随分と若い女性が笑いかけてくる。その笑顔は見惚れる程の美しさだったが、同時に彼女の声を耳にしたレナは途轍もない違和感を抱く。


「どうかしたの?私の顔をじっと見て……何か顔に付いてたかしら」
「あ、いえ……」
「うふふっ……可愛い坊やね。少しお話しない?」
「あっ、そのっ……」


レナは女性の言葉に逆らえず、無意識に机を挟んで対面の席に座り込む。どうして自分がそのような行動を取ったのかが不思議だが、それ程までに女性が「魅力的」に見えた。彼女の事を見ていると胸の鼓動が高鳴り、どうしても視線を外せなくなる。



――だが、彼女の言葉にはデキンの時よりも圧倒的な「悪意」に満ちており、レナは内心冷や汗が止まらない。外見は魅力的で言動も優しいのだが、何故か彼女の言葉を聞いているだけで恐怖を抱く。この女性を信用してはいけないという確信を抱き、レナは何とか身体を動かそうとするが、どういう事なのか言う事を聞かない。



「……どうしてそんな顔をするのかしら?お姉さん、怖がらせちゃった」
「あ、いやっ……」
「うふふ……照れているだけよね」


女性の外見は金髪に赤眼であり、ローブで覆い隠されているが豊満な肉体の持ち主らしく、グラビアアイドルのように大きな胸が特徴的だった。彼女に見つめられるだけでレナは思考が薄らぐが、声を聴いた瞬間に悪意を感じ取って意識を覚醒する。

この女性が自分に対して何か仕掛けているのが分かるが、別に話をしているだけで特に身体を触れられたわけでもなく、妙な薬を嗅がされた覚えはない。異変が起きたのを明確に感じ取ったのは彼女の「瞳」を向けられたときであり、宝石のように光り輝く赤色の瞳にレナは魅入られていた。
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