文字の大きさ
大
中
小
20 / 207
バルトロス帝国編
襲撃
「おかしいな……まだかな」
5冊目の魔法書を読み終えたレナは戻って来ないホノカに疑問を抱き、既に彼女が店の奥に移動してから30分を経過しようとしていた。どういう訳なのかレナは1冊の魔法書をほぼ5分ペースで読み終えており、ステータス画面を確認すると着実に熟練度が上昇していた。そして彼は4冊目の「聖属性」の魔法書を読み終えた時点で熟練度が「9」を迎えており、あと1冊読めば熟練度の限界値に到達する事になる。
このまま本を読み続ける事も考えたが、少し心配になったレナは店の奥を覗き込むが、ホノカの姿は見えず、階段が垣間見えたので上の階に居るのかも知れず、レナは彼女の名前を呼び出す。
「ホノカさ~ん?」
名前を呼んでも返答はなく、レナの持ち込んだ鞄を「収納袋」に改造する作業に時間が掛かっているのかと疑問を抱くが、不意に二階の方から大きな物音が聞こえた。天井から駆け回るような音が聞こえ、明らかに何かが破壊されたような騒音まで聞こえてくる。何かが起きているのは間違いなく、レナは店の奥の階段に移動する。
「ホノカさん!?」
「くっ……逃げるんだっ!!」
階段を見上げると肩から血を流すホノカの姿があり、彼女は無残に切り刻まれたレナの鞄を持っており、すぐに彼に逃げるように指示する。何が起きているのか分からなかったが、ホノカが何者かに襲われているのは間違いなく、レナは彼女を助けるために階段を登ろうとした時、嫌に聞き覚えのある声が響いた。
「あら……貴方は何処かで会った事があるわね?」
「あっ……!?」
倒れているホノカの前に金髪の女性が姿を現し、間違いなく最初にこの世界に召喚された時、レナが遭遇した占い師の女性であり、彼女の右手は血が染まっていた。しかも右手の爪が肉食動物のように鋭利に研ぎ澄まされており、状況的に考えてホノカの肩とレナの鞄を切り裂いたのは女性の仕業で間違いない。
「丁度良かったわ……あの時は逃がしたけど、今回は……」
「うっ……」
女性に視線を向けられただけでレナは身体が上手く動かず、最初に遭遇した時のように彼女の言葉が嫌に頭に響く。それでも前回の時と比べたら意識は残っており、レナは頭を抑えながらホノカに視線を向けると、彼女は片を抑えながら叫び声を上げる。
「こいつは……ヴァンパイアだ!!魅了の眼で君を操ろうとしている!!早く逃げるんだ!!」
「うるさいわね……無駄よ。前の時は失敗したけど、私が本気になればどんな人間も虜に出来るのよ……ねえ、坊や?」
「あうっ……」
ヴァンパイアと呼ばれた女性はレナに微笑み掛け、そのあまりの美貌に意識が遠くなりそうだが、前回に習得した「魅了耐性」の影響なのか完全には意識を失わない。それでも時間の問題であり、どうにか逃げないとこのままでは2人とも捕まってしまう。
「ヴァンパイア……」
レナの知る限り、神話などでは十字架等を恐れる悪魔のような存在として描かれているが、この世界のヴァンパイアが同じような弱点を持っているとは限らない。それでも対抗する手段を見出さなければならず、レナは自分の扱える魔法を考える。
付与魔法は物体に魔法の力を付与させる魔法であり、そもそも武器の類を所持していなければ使用する事も出来ない。現在のレナの付与魔法の中で熟練度が高いのは火属性と聖属性だけであり、この二つを攻撃に利用する方法を考え、ある作戦を思いついた。彼は懐に手を伸ばし、一昨日に眠る前に付与魔法の練習としてポケットに入れたままだった元の世界の硬貨を取り出し、指先で掴んで構える。その行動にヴァンパイアは眉を顰めるが、レナは付与魔法を発動する。
「聖属性!!」
「きゃああっ!?」
「くぅっ!?」
硬貨に聖属性の付与魔法を発動した瞬間、硬貨が閃光のように光り輝き、ヴァンパイアの視界を奪う。レナは直前に目を閉じていたので助かったが、ホノカも瞼を閉じてしまう。先ほどまで読み込んでいた魔法書のお蔭で聖属性の熟練度が「9」まで上昇した影響もあり、訓練の時よりも光量が大きく増していた。これで厄介なヴァンパイアの「瞳」から解放された事でレナの身体が楽になり、すぐに店内に戻って武器になりそうな物を探し出す。
「弓矢……!?」
自分が唯一扱える武器を探し出そうとするが、以前に借りた時はホノカは店の奥から弓矢を持ってきた事を思い出し、店の方では展示していない。それでも武器を探そうとすると机の上に並べられている魔石が目に入り、レナは1つ握りしめると階段に戻る。
「こ、のっ……ガキィッ!!」
「くっ!?」
だが、ヴァンパイアは完全に視力が回復する前に充血した目を見開きながらレナに飛びかかる。その光景に彼は自分が殺されると思ったが、次の瞬間、目の前のヴァンパイアに異常が生じた。
「こぉろぉしぃてぇ……!!」
「えっ……?」
――階段から飛び降りたはずのヴァンパイアが空中で唐突に減速し、憤怒の表情を浮かべたまま口を開いた状態でゆっくりと叫び声を上げていた。レナは唖然としていたが、同時に自分の身体も上手く動かせない事に気付き、まるでテレビのスローモーションのように自分たちの肉体が遅く動く事に気付く。
レナは何が起きているのか理解できなかったが、確実に近づいてくるヴァンパイアに向けて魔石を握りしめ、付与魔法を発動して投擲を行う。
「火属性!!」
「やぁ……!?」
魔石を投げ込んだ瞬間に付与魔法の効果で発火し、ヴァンパイアの眼前に迫る。魔石は魔法の媒介に利用される道具だが、もしも火属性の魔石に付与魔法を施した場合はどうなるのか、結果から言えば魔法を強化させる魔石その物を発火させた事によって魔石が暴走し、小規模の爆発を引き起こした。
「ぐぎゃあぁあああああああっ!?」
「うわっ!?」
「ぐっ!?」
顔面に爆炎を受けた事でヴァンパイアは悲鳴を上げ、そのまま階段を転げ落ちる。その光景にホノカは驚愕し、一方でレナは周囲の時間の流れが元に戻った事に気付き、慌てて後退した。
5冊目の魔法書を読み終えたレナは戻って来ないホノカに疑問を抱き、既に彼女が店の奥に移動してから30分を経過しようとしていた。どういう訳なのかレナは1冊の魔法書をほぼ5分ペースで読み終えており、ステータス画面を確認すると着実に熟練度が上昇していた。そして彼は4冊目の「聖属性」の魔法書を読み終えた時点で熟練度が「9」を迎えており、あと1冊読めば熟練度の限界値に到達する事になる。
このまま本を読み続ける事も考えたが、少し心配になったレナは店の奥を覗き込むが、ホノカの姿は見えず、階段が垣間見えたので上の階に居るのかも知れず、レナは彼女の名前を呼び出す。
「ホノカさ~ん?」
名前を呼んでも返答はなく、レナの持ち込んだ鞄を「収納袋」に改造する作業に時間が掛かっているのかと疑問を抱くが、不意に二階の方から大きな物音が聞こえた。天井から駆け回るような音が聞こえ、明らかに何かが破壊されたような騒音まで聞こえてくる。何かが起きているのは間違いなく、レナは店の奥の階段に移動する。
「ホノカさん!?」
「くっ……逃げるんだっ!!」
階段を見上げると肩から血を流すホノカの姿があり、彼女は無残に切り刻まれたレナの鞄を持っており、すぐに彼に逃げるように指示する。何が起きているのか分からなかったが、ホノカが何者かに襲われているのは間違いなく、レナは彼女を助けるために階段を登ろうとした時、嫌に聞き覚えのある声が響いた。
「あら……貴方は何処かで会った事があるわね?」
「あっ……!?」
倒れているホノカの前に金髪の女性が姿を現し、間違いなく最初にこの世界に召喚された時、レナが遭遇した占い師の女性であり、彼女の右手は血が染まっていた。しかも右手の爪が肉食動物のように鋭利に研ぎ澄まされており、状況的に考えてホノカの肩とレナの鞄を切り裂いたのは女性の仕業で間違いない。
「丁度良かったわ……あの時は逃がしたけど、今回は……」
「うっ……」
女性に視線を向けられただけでレナは身体が上手く動かず、最初に遭遇した時のように彼女の言葉が嫌に頭に響く。それでも前回の時と比べたら意識は残っており、レナは頭を抑えながらホノカに視線を向けると、彼女は片を抑えながら叫び声を上げる。
「こいつは……ヴァンパイアだ!!魅了の眼で君を操ろうとしている!!早く逃げるんだ!!」
「うるさいわね……無駄よ。前の時は失敗したけど、私が本気になればどんな人間も虜に出来るのよ……ねえ、坊や?」
「あうっ……」
ヴァンパイアと呼ばれた女性はレナに微笑み掛け、そのあまりの美貌に意識が遠くなりそうだが、前回に習得した「魅了耐性」の影響なのか完全には意識を失わない。それでも時間の問題であり、どうにか逃げないとこのままでは2人とも捕まってしまう。
「ヴァンパイア……」
レナの知る限り、神話などでは十字架等を恐れる悪魔のような存在として描かれているが、この世界のヴァンパイアが同じような弱点を持っているとは限らない。それでも対抗する手段を見出さなければならず、レナは自分の扱える魔法を考える。
付与魔法は物体に魔法の力を付与させる魔法であり、そもそも武器の類を所持していなければ使用する事も出来ない。現在のレナの付与魔法の中で熟練度が高いのは火属性と聖属性だけであり、この二つを攻撃に利用する方法を考え、ある作戦を思いついた。彼は懐に手を伸ばし、一昨日に眠る前に付与魔法の練習としてポケットに入れたままだった元の世界の硬貨を取り出し、指先で掴んで構える。その行動にヴァンパイアは眉を顰めるが、レナは付与魔法を発動する。
「聖属性!!」
「きゃああっ!?」
「くぅっ!?」
硬貨に聖属性の付与魔法を発動した瞬間、硬貨が閃光のように光り輝き、ヴァンパイアの視界を奪う。レナは直前に目を閉じていたので助かったが、ホノカも瞼を閉じてしまう。先ほどまで読み込んでいた魔法書のお蔭で聖属性の熟練度が「9」まで上昇した影響もあり、訓練の時よりも光量が大きく増していた。これで厄介なヴァンパイアの「瞳」から解放された事でレナの身体が楽になり、すぐに店内に戻って武器になりそうな物を探し出す。
「弓矢……!?」
自分が唯一扱える武器を探し出そうとするが、以前に借りた時はホノカは店の奥から弓矢を持ってきた事を思い出し、店の方では展示していない。それでも武器を探そうとすると机の上に並べられている魔石が目に入り、レナは1つ握りしめると階段に戻る。
「こ、のっ……ガキィッ!!」
「くっ!?」
だが、ヴァンパイアは完全に視力が回復する前に充血した目を見開きながらレナに飛びかかる。その光景に彼は自分が殺されると思ったが、次の瞬間、目の前のヴァンパイアに異常が生じた。
「こぉろぉしぃてぇ……!!」
「えっ……?」
――階段から飛び降りたはずのヴァンパイアが空中で唐突に減速し、憤怒の表情を浮かべたまま口を開いた状態でゆっくりと叫び声を上げていた。レナは唖然としていたが、同時に自分の身体も上手く動かせない事に気付き、まるでテレビのスローモーションのように自分たちの肉体が遅く動く事に気付く。
レナは何が起きているのか理解できなかったが、確実に近づいてくるヴァンパイアに向けて魔石を握りしめ、付与魔法を発動して投擲を行う。
「火属性!!」
「やぁ……!?」
魔石を投げ込んだ瞬間に付与魔法の効果で発火し、ヴァンパイアの眼前に迫る。魔石は魔法の媒介に利用される道具だが、もしも火属性の魔石に付与魔法を施した場合はどうなるのか、結果から言えば魔法を強化させる魔石その物を発火させた事によって魔石が暴走し、小規模の爆発を引き起こした。
「ぐぎゃあぁあああああああっ!?」
「うわっ!?」
「ぐっ!?」
顔面に爆炎を受けた事でヴァンパイアは悲鳴を上げ、そのまま階段を転げ落ちる。その光景にホノカは驚愕し、一方でレナは周囲の時間の流れが元に戻った事に気付き、慌てて後退した。
感想 263
あなたにおすすめの小説
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
S級冒険者の子どもが進む道
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。