最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
35 / 207
スラム編

回復薬の作り方

アイリィと出会ってから翌日、3人は黒猫亭の食堂で今後の事を話し合っていた。流石に3人分の宿代も馬鹿にならず、まだ金銭的には余裕があるとはいえ、どうにか路銀を稼ぐ方法がないのか相談し合う。だが、結局は身分証が存在しないと働く事は難しく、商売を行う事も出来ない。


「身分証か……本当に面倒だな」
「そうですね~……手っ取り早く稼ぐ方法があればいいですけど」
「……ぐぅっ」
「また寝てる……コアラみたい」


コトミンとアイリィはレナの魔力の補給だけで食事は必要としないのが唯一の救いではあるが、やはり3人分の宿代を払い続けるのは厳しく、なんとかホノカが戻ってくる前に路銀を少しでも稼ぐ方法を見つけ出したい。それでも身分証が無ければ働くむずかしく、それ以外の方法で路銀を稼ぐ方法があるとすれば所持物の売却しかないが、こちらの方はホノカに既にレナは教科書の類を販売しており、他に彼が所持している物の中で買い取ってくれそうな貴重品は元の世界の学校の制服程度しか存在しない。


「スマートフォンを売れば幾らか金になるかな……」
「止めてくださいよ。こんな貴重な物を売り払うなんて……あ、そう言えばコトミンさんは回復薬の回復液を生みだせましたよね?それなら特別な回復薬としてお店に販売したらどうですかね?」
「コトミンの?」
「ふぁっ……呼んだ?」


自分の名前を呼ばれてコトミンが目を覚まし、彼女は眠たそうに瞼を擦りながら2人に視線を向けると、アイリィから説明を聞く。


「コトミンさんは回復液を生みだせますよね。それはどれくらいの量が出せますか?」
「……分からない。だけど、レナが魔力を分けてくれればいっぱい生み出せると思う」
「俺が?」
「なるほど……レナさんの聖属性の付与魔法の力を吸収する事でコトミンさんは魔力を回復できますよね。それならレナさんの魔力がある限りは回復液を生み出せる……でも実際にどれくらいの量が生み出せるのか調べて見る必要がありますね。回復薬用の硝子瓶もようい用意しないといけませんし……」
「本当に大丈夫なのコトミン?」
「レナの役に立つなら頑張る」




――3人は食堂を移動して自分達の部屋に一度戻り、そしてアイリィの提案した「回復薬生産計画」を実行するため、まずはレナが魔法の訓練のために購入した先ほどの桶に水を入れ、木製のコップを幾つか用意する。最初にコトミンが回復液を注ぎ込むため、彼女は両手をコップの前に構える。


「ほぁあっ……」
「力が抜ける掛け声だな……欠伸?」
「でも結構な量が出てますよ」


コトミンの右手から緑色の回復液が迸り、さらに左手からは青色の液体が放たれる。驚くべき事に彼女は二種類の回復液を生み出せるらしく、緑色の回復液は体力や怪我を治療する「回復薬」の原液であり、一方で青色の方は魔力を回復させる「魔力回復薬」の原液だった。


「ふうっ……溜まった」
「凄いよコトミン!!」
「おおっ……これは期待できそうですね」


コップにそれぞれの回復薬の原液が溜まり、まずはアイリィが試飲を行う。彼女も魔力を定期的に補給しなければならない立場であり、まずは青色の「魔力回復液」を飲み込むと、アイリィは難しそうな表情を浮かべる。


「ふむ……確かに魔力が回復しましたけど、思ったよりそれほど回復量は大きくないですね」
「……そっちの方は作るの慣れていない」
「まあ、それでも下級の魔力回復薬ぐらいの効果はありますよ。続いてこちらは……」


今度はもう一つのコップを飲み込み、先ほどとは打って変わって満面の笑顔を浮かべる。


「これは凄いですね。上級回復薬にも劣らない回復量ですよ!!これなら高価で買い取ってくれると思いますけど……でもあまりに高級品を売り捌くと目を付けられそうですね?」
「どういう事?」
「どういう事って……上級回復薬はこの帝都ですらも数が限りない超高級品なんですよ。生成方法があまりにも難しすぎて調合できる人間も限られているから価値が高いんです。場合によっては金貨で取引される程の品物ですからね……そんな高級品をどう見ても一般人にしか見えない私達が幾つも売り捌いたらどう思われると思います?」
「どうって……」
「間違いなく私達の身元を調べようとする人間がいますよ。どうやって貴重な上級回復薬を作り出したのか、あるいは入手した方法を調べるために私達を捕まえようとする人間も出てきますね。それにこちらの身分証がない事に気付かれると警備兵に突き出さない代わりに薬を寄越すように取引を結ばせようとする輩も出てきますよ」
「な、なるほど……」


アイリィの言葉には説得力があり、確かに帝都でも数少ない上級回復薬を迂闊に大量売却したら怪しまれるだろう。それならば効果は劣る低品質の回復薬を生成して売却するが方が怪しまれず、アイリィはコップに溜まった回復薬の原液と桶に入った井戸水と机の上に並べられた硝子瓶を確認する。


「それじゃあ、早速これを使って回復薬を増やしましょうか」
感想 263

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)