最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
52 / 207
スラム編

カトレア捕縛

「コトミン……いや、コトミンさん。そんなに強かったんですね」
「これからはコトミン様と呼んだ方が良いですかね?」
「……違う。この子、元から弱っていた」


コトミンの一撃で倒されたカトレアは目覚める様子がなく、アイリィが念のために様子を伺う。その間にレナはコトミンの右腕の異変に気付き、彼女が「白銀拳」に変化させた腕が大きく凹んでいる事に気付く。


「それは……?」
「これは腕を変形させただけ……これぐらいなら元に戻せる」
「本当の金属に変化した訳じゃないんですね」


彼女の話によるとコトミンは自分の腕は外見だけはレナの白銀拳に変化させたが、外見を真似ただけで実際に本物の並の硬度が存在する訳ではなく、すぐに彼女は自分の右腕を元の状態に戻す。それでもカトレアを吹き飛ばした時の威力は凄まじく、意外にもコトミンの腕力は強いのかも知れない。


「そう言えばコトミンさんはスライムでしたよね。どんな形にも変形できるという事は全身を筋肉に変化させて相手に殴りつける事も出来る……そう考えるとコトミンさんはスライムの中でも高性能ハイスペックなスライムなんですね」
「……照れる」
「全身を筋肉に変化……凄そうだな」


最後のコトミンの一撃はアイリィの説明によると自分の肉体を全て筋肉のように変化させる事で驚異的な運動能力を生み出し、カトレアに強烈無比な攻撃を加えたらしい。スライムならではの攻撃方法であり、常人では決して真似する事は出来ない。


「どうやら本当に気絶しているみたいですね。だけどすぐに意識を取り戻しますよ。サキュバスは回復力も半端ないですから」
「どうすればいいかな……」
「普通に警備兵に突き出しましょう。これだけ弱っていれば鎖か何かで拘束して置けば何も出来ませんよ」
「大丈夫かな……」



――アイリィの言葉通りにレナはカトレアの拘束に取り掛かる。鎖は所持していなかったので彼の鞄の中に入れていた予備の衣服を利用し、まずは服を引き千切り、両手と両足を千切った布で拘束する。その状態からレナは水属性の付与魔法を発動させ、拘束した個所の布を凍結させる。これならば簡単に抜け出す事は出来ず、後はカトレアを警備兵に突き出す必要がある。

帝国から厄介者扱いされているレナが警備兵にサキュバスを引き渡すのは面倒な事体に発展する可能性が高く、念のために引き渡す際はコトミンの擬態能力を利用して屈強な男性冒険者に変装を行い、この状態でレナは帝都の兵士の駐屯所に赴き、スラム街に現れたサキュバスを帝国軍に引き渡す。


『な、なんだお前は!?』
『その女は一体……』
『……こいつはサキュバスだ。後は任せたぞ(裏声)』
『あ、おい!?』


当然だがスラム街を騒がせていたサキュバスを捕獲した男性冒険者レナの対応に兵士は動揺するが、カトレアの引き渡しを終えた直後にレナは逃げ出し、聖属性の付与魔法を利用して建物の屋根の上を跳躍して兵士達から逃走する。



何故かサキュバスを引き渡して逃げ去った男性冒険者の行動に兵士は呆然と見送る事しか出来ず、即座に王城に連絡を送る。兵士の報告に防衛大臣のデキンは先日のヴァンパイアを打ち倒したという冒険者の事を思い出し、すぐに今回のサキュバスを捕獲した男性冒険者こそが同一人物であると推測を行い、兵士から男性冒険者の特徴を聞き出し、絵師を呼んで似顔絵を行わせて捜索を開始する。

しかし、兵士達が遭遇したのはあくまでもコトミンの能力で姿形を変化させたレナであり、デキンはまさか自分が追放した人間がヴァンパイアとサキュバスを打ち倒した人間だと気付かず、存在しない人間の捜索を行う。



一方で帝国に捕獲されたサキュバスは王城の地下牢に隔離され、下手に他の囚人の牢屋に送り込むと魅了の力で囚人達や見張りの兵士を従える可能性があり、最低限の食事だけを与えてしばらくの間は様子を伺う事が決定した。彼女が魔王軍と関わりがある可能性は高いが、この帝国では法律によって死刑は存在せず、拷問を行おうにもサキュバスの魅了の能力によって長時間同じ空間に存在するだけで兵士や拷問官が魅了される可能性があり、結局は地下牢に拘束する事しか出来なかった。

帝国がカトレアの扱いに難儀している所、レナ達は独自に上質の回復薬を生成し、市場の露天商に取引を行いながら地道に金銭を稼ぎ続ける。結果的には帝国の危機を二度も救った形になるのだが、当のレナ本人は城に戻るつもりはなく、のんびりとアイリィとコトミンと一緒に過ごす。



――そしてサキュバスの騒動から数日後、予定よりも早く魔道具店にホノカが帰還した。
感想 263

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)