最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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ゴブリンキング編

閑話 〈作戦決行〉

――佐藤の視界が閃光に覆われ、やがて光が収まると彼は見覚えのある廊下に立っており、無事に異世界の王城に転移した事に成功した事を確信する。彼は周囲を見渡し、窓の外の光景を確認すると予想通りに夜を迎えており、月の光が差している事に気付く。


「やった……いや、安心する事じゃないな」


転移に成功したのは良かったが、佐藤としては失敗してくれた方が気が楽だったかもしれない。成功した以上は最低でも24時間はこちらの世界に存在しなければならず、それまでの間に誰にも見つからずに行動しなければならない。佐藤の予想通り、王城の通路を照らしているのは蝋燭だけであり、照明の類は存在しなかった。そのため、蝋燭の火が照らされている箇所しか暗闇は照らされておらず、外は月の光があるとはいえ、廊下は暗闇で覆われていた。

すぐに佐藤は一番近くの部屋の扉を発見し、リュックからスタンガンを取り出してスイッチを入れる。電流が問題なく流れ込むのを確認し、彼は右手で握りしめながら左手を扉の前に構え、冷や汗を流しながら覚悟を決めてノックを行う。


「…………」


扉をノックしても内側から返事は帰らず、念のためにもう一度ノックを行う。やはり扉の内側から反応はなく、彼は掌を伸ばしてドアノブを回そうと鍵が掛かっている事が判明し、胸元のポケットに入れて置いた針金を取り出す。


「よし……」


鍵穴に身長に針金を差し込み、佐藤は「開錠」のスキルを発動させて鍵を開ける。油断せずにゆっくりと扉を開き、中を覗き込むと使用人が利用する物置部屋のようであり、掃除用具が収められていた。佐藤は安堵の息を吐くと一先ずは中に入り込んで扉を閉めようとするが、内側からは鍵が掛けられないようであり、誰かがこの部屋に入ろうとしたら阻止する事は出来ない。


「落ち着け……今の所は作戦通り……!?」


扉の外の通路から唐突に足音が響き渡り、佐藤の背筋が凍り付き、誰かが自分の隠れているこの部屋に近づいているのではないかと焦燥感を抱き、彼は慌ててスタンガンを握りしめて扉の内側から飛び出す準備を行う。


『……ん?』


通路を歩いている人間が佐藤の隠れている扉の前で立ち止まり、彼は息を飲む。


『こんな所にも汚れが……くそ、手を抜きやがって』


だが、足跡の主は悪態を吐きながら立ち去る足音が響き渡り、廊下を通り過ぎた兵士は壁際に汚れを見つけて立ち止まっただけであり、佐藤に気付いたわけではなく、そのまま通路を通り過ぎる。


「ふうっ……助かったのか」


完全に足跡が聞こえなくなったのを確認し、佐藤は部屋の扉を少しだけ開いて先に通路を確認した後、人影がない事を確かめて慎重に廊下に出る。足跡の聞こえた方向を判断し、先ほど通り過ぎた兵士の反対方向の通路に佐藤は移動をする事を決め、彼の理想としては誰にも見つからずに王城に抜け出す事だが現実は甘くはなかった。


「っ!?」


通路を進んでいると前方の方角から足音が聞こえ、彼は慌てて周囲を見渡すが自分の近くに部屋に繋がる扉は存在せず、仕方なく佐藤は通路に存在する柱の影に隠れると二人組の兵士の会話が廊下に響き渡る。


「おい、聞いたかよ。最近、街の方で変死体が見つかったそうだぜ?」
「変死体?どんなだよ?」
「なんでも全身の血液が抜けきった死体だとよ。巷ではヴァンパイアの仕業だって言われてるぜ」
「馬鹿言えよ。ここは帝都だぜ?魔人族が近付いて来れるはずがないだろ」
「でもよ、例の異世界人の役立たずを覚えているか?大臣が暗殺者を送り込んだけど、結局その暗殺者が戻って来ないとか……」
「只の噂だろ……召喚されたのは一般人だったんだろ?」
「それでも異世界人だぜ?もしかしたら特別な能力を授かっているかも……何てな」
「……もう行くぞ。お前のほら話は聞き飽きた」


兵士は佐藤が隠れている柱を通り過ぎると、彼は兵士が立ち去る姿を確認し、自分が見つからなかった事に安堵するが、彼等の会話を聞いた事で佐藤はある人物を思い出す。


「……そうだ。霧崎君は……!?」


自分達に巻き込まれてこちらの世界に召喚された「霧崎レナ」の事を彼は完全に思い出す。どうして今まで自分が忘れていたのかと激しく動揺し、幾ら接点が少なかった相手とはいえ、クラスメイトの人間を忘れていた事に佐藤は激しい衝撃を受ける。


「くそっ……!!僕はなんてことを!!」


自分達だけで元の世界に帰還して平和な日常を過ごしている間、クラスメイトの霧崎レナはこの異世界に取り残され、今頃は何をしているのかも分からない。正義感の強い佐藤は彼の事に気付けなかった自分を恥じて柱に拳を叩きつけ、この城から無事に抜け出す事に成功したら真っ先に彼の行方を捜す事を決め、自分が城から抜け出すために行動を開始する。
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