文字の大きさ
大
中
小
104 / 207
ゴブリンキング編
脱出準備
数十分後、食堂内の人間の治療を終えたレナ達の目の前には100人近くの人間が地面に座り込んでおり、毒から回復しても体力までは取り戻せず、全員が疲弊しきっていた。この様子では武器を取り戻してもゴブリンと戦闘を行える状態ではなく、食堂から移動するのも難しい。
レナが気になったのは治療の最中にゴンゾウの姿が見えない事であり、彼等の話しを聞くと炭鉱内に居た唯一の巨人族であり、毒に耐性を持つ彼はゴブリンナイトに連れられて何処かに移動されたらしい。その話を聞いたレナは助けに向かおうとしたが全員に引き留められる。正確な居場所を把握せずに炭鉱内を移動するのは危険であり、今現在の状況では迂闊な行動が命取りとなる。
「ゴブリンナイトがどうしてゴンゾウ君を……」
「理由は分かりませんけど、ゴンゾウさんは最後まで抵抗していたようですね。なのに殺さずに連れて行ったことが気になります。だけど今はここから抜け出してどうやってワルキューレ騎士団に救援を求めるかです」
「この場所以外に人質になっている人は」
「いないよ……ここにいるのが全員だ。他の奴等は抵抗して殺されたんだよ……その巨人族以外はな」
人質にされていた男性の言葉にレナは考え込み、ゴンゾウを救出したい気持ちはあるがアラン炭鉱の外に存在するワルキューレ騎士団に人質の治療を終えた件と炭鉱内の状況を報告する必要があり、既に騎士団の元からレナ達が離れてから時間も経過しており、彼女達も心配しているだろう。だが、レナはどうしてもゴンゾウの事が気にかかり、アイリィとコトミンに振り返る。
「悪いけど、2人だけで戻ってくれない?コトミンがアイリィと合体すれば問題ないと思うから……」
「え?レノさんはどうする気ですか?」
「ここの人達も放っておけないし……それにゴンゾウ君も気になる。炭鉱の出入口までは送り届けるから……」
「駄目ですよ。レナさんを1人だけ置いて行くなんて……それに炭鉱にはまだ他のゴブリンやゴブリンナイトが居るはずです。1人でどうにか出来るはずが……」
「なあ……ちょっといいか?お前さん達は転移石を持っているのか?」
「転移石……ああ、これの事ですか?出発前に騎士団に渡されましたけど……」
会話の途中で冒険者と思われる男性が口を挟み、アイリィは自分が所持している「転移石」を取り出す。この転移石を利用すれば帝都に中央部に存在する「転移結晶」の台座にまで一瞬で移動する事が可能であり、万が一の場合を考えてワルキューレ騎士団はレナ達に転移石を渡していた。だが、アイリィが取り出した転移石を見た瞬間、人質として捕まっていた人間達が慌てて駆け寄ってくる。
「た、頼む!!そいつを渡してくれ!!こんな場所うんざりだ!!」
「それを使えば帝都に戻れるんでしょう!?」
「金なら後で幾らでも払う!!俺達の転移石はあいつらに奪われてちまったんだ!!だから頼む!!」
「お、落ち着いて下さいよ」
今にも奪いかねない勢いで近づいてきた人間達にアイリィは距離を取り、転移石を使用すれば陽光教会に帰還した人間達のように帝都に戻ることは可能だが、1つの転移石で100人の人間を全員移動させる事は出来ない。転移石を利用して一度に移動出来る人数は20人程度が限界であり、この場で使用した場合は残りの80人は炭鉱内に残されること位なる。だが、レナは彼等の中に気になる言葉を告げた人間を聞き逃さなかった。
「ちょっと待ってください。皆さんの中には転移石を持っていた人がいるんですか?」
「あ、ああ……一応はな。希少品だから持っている奴は少なかったが……でもゴブリンの奴等に奪われたよ。武器と防具と一緒にな」
「奪われた……?破壊されたんじゃなくて?」
「そこが不思議なんだよな……あいつら、俺達から奪い取った魔石や魔道具を大事そうに袋に入れて取り上げやがった。普通の魔物ならそんな事せずにぶっ壊すか、もしくは無視するんだがな……」
「おかしいですね……魔物が魔石を奪うなんて聞いたことがありません。まさか、転移石の価値に気付いていた?」
「有りえなくはないんじゃないの?ここのゴブリンキングは人語を理解できるぐらい頭が良いんでしょ?」
「それはそうですけど……問題はどうして転移石なんか奪ったのかですよ。魔法が扱えないゴブリンには何の使い道もありませんよ」
アイリィの言葉通り、魔石の類は魔力を操れる種族にしか扱えず、ゴブリンのような魔法を扱えない生物には魔石を使用する事は出来ない。それにも関わらずに冒険者から魔石や魔道具の類を奪った事が気にかかり、アイリィは考え込む。
「……いくら知能が高くてもゴブリンが魔法を扱えるようになるとは思えません。もしかしたら……今回の襲撃は何者かが関わっている可能性があります」
「何者って……」
「一番可能性が高いのは魔人族ですね。彼等なら魔物を従わせる術を知っているかも知れませんし、もしかしたら今回の騒動は全て魔人族の仕業かも……」
「……魔王軍?」
レナの脳裏に「魔王軍」という単語が思い浮かび、他の人間が息を飲む。状況的に考えても今回のゴブリンの襲撃は明らかに計画的であり、ゴブリン達が人間に対抗するために毒矢を使用した事、厄介な冒険者から魔石や魔道具を奪った事、そしてゴブリンキングが捕まえた盗賊の職業の人間を利用して陽光教会から聖剣を盗み出すように指示を出している時点で怪しい。
レナが気になったのは治療の最中にゴンゾウの姿が見えない事であり、彼等の話しを聞くと炭鉱内に居た唯一の巨人族であり、毒に耐性を持つ彼はゴブリンナイトに連れられて何処かに移動されたらしい。その話を聞いたレナは助けに向かおうとしたが全員に引き留められる。正確な居場所を把握せずに炭鉱内を移動するのは危険であり、今現在の状況では迂闊な行動が命取りとなる。
「ゴブリンナイトがどうしてゴンゾウ君を……」
「理由は分かりませんけど、ゴンゾウさんは最後まで抵抗していたようですね。なのに殺さずに連れて行ったことが気になります。だけど今はここから抜け出してどうやってワルキューレ騎士団に救援を求めるかです」
「この場所以外に人質になっている人は」
「いないよ……ここにいるのが全員だ。他の奴等は抵抗して殺されたんだよ……その巨人族以外はな」
人質にされていた男性の言葉にレナは考え込み、ゴンゾウを救出したい気持ちはあるがアラン炭鉱の外に存在するワルキューレ騎士団に人質の治療を終えた件と炭鉱内の状況を報告する必要があり、既に騎士団の元からレナ達が離れてから時間も経過しており、彼女達も心配しているだろう。だが、レナはどうしてもゴンゾウの事が気にかかり、アイリィとコトミンに振り返る。
「悪いけど、2人だけで戻ってくれない?コトミンがアイリィと合体すれば問題ないと思うから……」
「え?レノさんはどうする気ですか?」
「ここの人達も放っておけないし……それにゴンゾウ君も気になる。炭鉱の出入口までは送り届けるから……」
「駄目ですよ。レナさんを1人だけ置いて行くなんて……それに炭鉱にはまだ他のゴブリンやゴブリンナイトが居るはずです。1人でどうにか出来るはずが……」
「なあ……ちょっといいか?お前さん達は転移石を持っているのか?」
「転移石……ああ、これの事ですか?出発前に騎士団に渡されましたけど……」
会話の途中で冒険者と思われる男性が口を挟み、アイリィは自分が所持している「転移石」を取り出す。この転移石を利用すれば帝都に中央部に存在する「転移結晶」の台座にまで一瞬で移動する事が可能であり、万が一の場合を考えてワルキューレ騎士団はレナ達に転移石を渡していた。だが、アイリィが取り出した転移石を見た瞬間、人質として捕まっていた人間達が慌てて駆け寄ってくる。
「た、頼む!!そいつを渡してくれ!!こんな場所うんざりだ!!」
「それを使えば帝都に戻れるんでしょう!?」
「金なら後で幾らでも払う!!俺達の転移石はあいつらに奪われてちまったんだ!!だから頼む!!」
「お、落ち着いて下さいよ」
今にも奪いかねない勢いで近づいてきた人間達にアイリィは距離を取り、転移石を使用すれば陽光教会に帰還した人間達のように帝都に戻ることは可能だが、1つの転移石で100人の人間を全員移動させる事は出来ない。転移石を利用して一度に移動出来る人数は20人程度が限界であり、この場で使用した場合は残りの80人は炭鉱内に残されること位なる。だが、レナは彼等の中に気になる言葉を告げた人間を聞き逃さなかった。
「ちょっと待ってください。皆さんの中には転移石を持っていた人がいるんですか?」
「あ、ああ……一応はな。希少品だから持っている奴は少なかったが……でもゴブリンの奴等に奪われたよ。武器と防具と一緒にな」
「奪われた……?破壊されたんじゃなくて?」
「そこが不思議なんだよな……あいつら、俺達から奪い取った魔石や魔道具を大事そうに袋に入れて取り上げやがった。普通の魔物ならそんな事せずにぶっ壊すか、もしくは無視するんだがな……」
「おかしいですね……魔物が魔石を奪うなんて聞いたことがありません。まさか、転移石の価値に気付いていた?」
「有りえなくはないんじゃないの?ここのゴブリンキングは人語を理解できるぐらい頭が良いんでしょ?」
「それはそうですけど……問題はどうして転移石なんか奪ったのかですよ。魔法が扱えないゴブリンには何の使い道もありませんよ」
アイリィの言葉通り、魔石の類は魔力を操れる種族にしか扱えず、ゴブリンのような魔法を扱えない生物には魔石を使用する事は出来ない。それにも関わらずに冒険者から魔石や魔道具の類を奪った事が気にかかり、アイリィは考え込む。
「……いくら知能が高くてもゴブリンが魔法を扱えるようになるとは思えません。もしかしたら……今回の襲撃は何者かが関わっている可能性があります」
「何者って……」
「一番可能性が高いのは魔人族ですね。彼等なら魔物を従わせる術を知っているかも知れませんし、もしかしたら今回の騒動は全て魔人族の仕業かも……」
「……魔王軍?」
レナの脳裏に「魔王軍」という単語が思い浮かび、他の人間が息を飲む。状況的に考えても今回のゴブリンの襲撃は明らかに計画的であり、ゴブリン達が人間に対抗するために毒矢を使用した事、厄介な冒険者から魔石や魔道具を奪った事、そしてゴブリンキングが捕まえた盗賊の職業の人間を利用して陽光教会から聖剣を盗み出すように指示を出している時点で怪しい。
感想 263
あなたにおすすめの小説
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
S級冒険者の子どもが進む道
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。