最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
127 / 207
ゴブリンキング編

草原のレッドゴブリン

「いいですか?絶対に見つかっちゃ駄目ですよ……最悪の場合は私はホネミンになって死んだふりします」
「マジか……いや、よく考えたらコトミンとアイリィは見つかっても問題ないんじゃないの?」
「……確かに」


現在、レナ達は草原を匍匐前進で移動しており、ゴブリンキングの群れに見つからないように慎重に移動する。ゴブリンの数は500を超えており、現在はオークとファングの食事中に夢中になっている。レナ達は見張り役のレッドゴブリンに見つからないように移動を行い、今更ながらにレナはアイリィとコトミンは魔物に襲われない体質(?)なので見つかっても問題ないのではないかと気付くが、アイリィは首を振る。


「知能が低い魔物なら私達の存在を知っても襲い掛からないかも知れませんが、あのレッドゴブリンの食欲は見ましたか?自分よりも明らかに身体が大きいオークの肉に喰いついているんですよ?もしかしたらスライムが相手でも食いつくかも知れません」
「それは困る」
「スライムって食べられるの?」
「どうですかね……コトミンさんに噛り付けば分かるかも知れませんよ」
「……止めてっ」


アイリィの発言に珍しくコトミンが焦った表情を浮かべ、レナは草原に散らばっているレッドゴブリンの位置を確認し、現在の進行速度ではアラン炭鉱に辿り着く頃には夜を迎えてしまう。どうにか見つからずに移動する方法が無いのかを考え、すぐにコトミンの擬態能力を思い出す。


「コトミンと合体してあいつらの仲間に化けるのはどう?」
「なるほど……確かに今なら怪しまれずに済むかもしれませんね。だけど、その方法だと私はどうすればいいんですか?」
「大丈夫……私が触れれば外見を変えられる。立派な雌ゴブリンにする」
「止めてくださいよ……さっきの復讐ですか?」


レナとアイリィは身体を伏せたままコトミンに近づき、彼女は先にアイリィの身体に手を伸ばす。その瞬間に彼女の肉体が変化し、全身がスライムに戻ると彼女の本体(?)が露わになる。アイリィは普段からコトミンの分裂体のスライムを身に纏い、スライムの擬態能力を利用して人間の姿を保っているが、今回は少女ではなくレッドゴブリンの外見に変化する。


「おおっ……」
「……どうですか?変わりました?」
「ばっちり」


アイリィの肉体が完全にレッドゴブリンに変化を果たし、声だけは彼女のままだがレナとコトミンには魔物が人語を喋っているようにしか見えない。彼女は自分の身体を確認して溜息を吐きだし、まさか自分が魔物の姿になる日が訪れるとは考えた事もなかっただろう。


「この場の状況を抜け出すには仕方がないとはいえ……まさかゴブリンなんかに化ける日が来るとは」
「コトミン……次は俺の番」
「分かってる……いただきます」
「ぎゃあ~っ……」


今度はレナの身体にコトミンが覆いかぶさり、瞬時にスライムの姿に戻ると彼の全身を飲み込み、やがてアイリィ同様にレッドゴブリンの外見に変化を果たす。この状態ならば他のゴブリンに怪しまれる事はなく、レナとアイリィは起き上がり、草原を移動する。


「走っちゃ駄目ですよ。怪しまれないようにゆっくりと移動してください」
『分かってる……あ、ぎぃいっ……』
『ぎぃ~』
「いや、わざわざゴブリン語で返さなくていいですから」


レッドゴブリンに変身した2人は草原をゆっくりと歩み、他のゴブリンに怪しまれないように移動する。間違ってもゴブリンと戦闘に陥れば勝ち目はなく、レナとアイリィは時間を掛けて慎重に鉱山の方向に移動を行おうとすると、唐突に1体のレッドゴブリンがレナ達の前に現れた。


「グギィッ……!?」
『っ……!!』


危うくレナは声を上げそうになったが、後方からアイリィが彼の肩を叩き、声を漏らさないように注意する。レッドゴブリンはレナとアイリィに視線を向け、2人に近づいて鼻を引くつかせる。


「グギィイッ……」
「……?」
「ペッ!!」


2人の臭いを嗅ぎ終えたレッドゴブリンは地面に唾を吐き散らし、その場を立ち去る。その光景にレナとアイリィは唖然とするが、コトミンが不機嫌そうに答えた。


『あのゴブリン……私の臭いを嗅いで不味そうな顔をした』
「ああっ……」
「なるほど……そういう事ですか」


どうやらレッドゴブリンはスライムの臭いを嫌うらしく、正体がばれた訳ではないようだがコトミンの機嫌が悪くなった。
感想 263

あなたにおすすめの小説

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)