最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

文字の大きさ
128 / 207
ゴブリンキング編

アラン炭鉱

しおりを挟む
――多少の問題アクシデントは起きたが、無事にゴブリンキングの群れを通り抜けたレナ達は草原を駆け抜ける。帝都を抜け出した時のようにファングに変身したコトミンの背中に乗り込み、彼女は先ほど起きた出来事に未だに不機嫌であり、雄叫びを上げながら駆け抜ける。


『ぐにゃあぁああああっ……!!』
「やばい……コトミンが今までにないほど荒ぶってる」
「いや、これ荒ぶってるんですか?全然怖くないんですけど」
『うにゃあぁああああっ……!!』
「鳴き声変わってますしっ」


荒ぶるコトミンの背中の上でレナとアイリィは準備を行い、武器を装備する。レナはいつも通りに白銀拳と魔法腕輪だけだが、今回のアイリィは弓矢を用意していた。彼女の方も万が一の場合を考えて魔道具店のホノカから弓矢の指導を受けており、収納石から弓と矢筒を取り出す。


「アイリィも戦えるの?」
「私は後方支援に徹しますよ。怪我をしたら回復させてあげますから安心して下さい」
「俺は普通に自分で回復出来るんだけど……」
「そう言えばそうでしたね……まあ、万が一の場合は蘇生薬もありますから、身体の一部が無くなったとしても再生できますよ」
「絶対に使いたくないな……」


アイリィは治癒魔導士なのでレナ以上の回復魔法と様々な薬品を持ち歩いており、前回の時は使用する機会が無かった「蘇生薬」と「腐敗薬」も用意していた。今回はゴブリンとの戦闘は避けられず、レナ達は遂にアラン炭鉱の鉱山に辿り着く。


「……前に来た時よりも禍々しく見えるな」
「そうですか?私は別に何も感じませんけど……」
『同じく』
「緊張しているのは俺の方か……よし、行こう」


鉱山の麓までコトミンの背中に乗って移動を行い、この先から坂道になるので彼女も人間形態に戻り、レナ達は周囲に気を配りながら移動を行う。現在のレナは副職が「格闘家」なので暗殺者のスキルは使用できず、気配を殺したり、足音を立てずに移動することは出来ない。しかし、戦闘を行う事を考えれば格闘家のスキルが都合が良く、レナは無意識に左手に水属性の付与魔法を発動させ、魔装術アーツの準備を行う。


「……レノ、この上から嫌な感じがする」
「ああ……酷い臭いだな」
「血の臭いですね……」


炭鉱の近くまで辿り着くと血の臭いが漂い始め、レナ達は坂道を登り切ると事前に偵察に訪れた暗殺者の報告通りの光景が広がっていた。炭鉱にはレッドゴブリンが数十匹と鋼鉄製の檻が一つだけ存在し、その中には血塗れの状態のゴンゾウが全身を鎖で拘束された状態で倒れていた。その光景を見たレナは頭に血が上りそうになるが、アイリィが彼の肩を掴む。


「駄目ですよ……冷静さを失ったらお終いです」
「ああっ……分かってる」
「レノ……まだ生きてる」


コトミンの言葉通り、ゴンゾウは檻の中で僅かに痙攣しており、その様子を見たレナは彼がまだ生きている事に安堵する。それでも危険な状態に陥っている事は間違いなく、彼は両手を握りしめてレッドゴブリンに視線を向けた。


『ギィイイイッ!!』


レッドゴブリンはゴンゾウの檻を中心に円を描くように見張っており、どうして魔物達がゴンゾウを捕獲したまま生かしているのかは不明だが、レナは相手の数を把握する。報告よりも数が10体ほど多く、合計で30体のレッドゴブリンが守っているが、この程度の人数ならば倒せる自信が彼にあった。まずは檻の周囲を囲んでいる邪魔な敵から排除するため、レナはアイリィに頷く。


「今から俺が突っ込む……援護を頼んだ」
「大丈夫ですか?作戦はありますか?」
「10秒後に閃光を放つから目を閉じてて……コトミンはアイリィを守って」
「んっ」


レナの指示に2人は従い、彼一人だけが正面からレッドゴブリンに向けて歩み寄る。懐から聖属性の吸魔石を取り出し、魔装術を解除した左手で握りしめ、魔法腕輪を発動して聖属性の魔力を高める。レッドゴブリンは正面から近づいてきた人間レナに気付き、兵士から奪った鉄の槍を構える。


「ギィイッ!!」
「ギィッ!?」
「ギシャシャシャッ!!」


1人で近づいてきたレナに対してゴブリン達は個々の反応を示し、驚愕する個体、警戒心を抱く個体、あるいは単独で近づいてきた彼をあざ笑う個体も存在し、今更ながらに魔物にも性格に違いがある事を実感しながらレナは吸魔石をゴブリン達の上空に放り投げる。


「はあっ!!」
『ギィイイイイイイイイッ……!?』
「ぐぅっ……!?」



――空中に放り込んだ吸魔石が閃光を放ち、炭鉱を光が覆い尽くす。事前にレナ達は両目を庇い込むが、レッドゴブリン達は視界が光に覆われ、檻の中に閉じ込められたゴンゾウも外の異変に気付いたのか呻き声を上げた。
しおりを挟む
感想 263

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

処理中です...