166 / 207
戦姫編
夜営
しおりを挟む
――オークの襲撃から数時間後、レナ達は草原で夜営を行う。予想よりも魔物の襲撃が多く、撃退する度に素材の回収や死骸の後処理に時間が掛かってしまい、結局は廃都に辿り着く前に草原で夜営の準備を行う。レナ達は収納石から夜営用の道具の類を取り出し、今日の内に回収した食肉用の魔物の素材を利用して夕食を行う。
「なんか意外な光景だな……アイリィって料理出来たんだ」
「失礼なっ……こう見えても調理のスキルを持っているんですよ私」
魔弓の手入れを行うレナの目の前には鍋を掻き混ぜるアイリィの姿があり、彼女は慣れた手つきでオークの肉と草原で取れた野草でスープを作り出し、更に注いでレナとゴンゾウに手渡す。食事を行えるのは2人だけなのでアイリィとコトミンは補給用の水しか飲用せず、食事を行いながら今日の出来事を話し合う。
「二人は食べないのか?このスープは美味しいぞ」
「……いらない」
「食べられたらいいんですけどね……まあ、気にしないでください」
食事を行わないアイリィとコトミンにゴンゾウが不思議そうに問い質すが、二人は人間の食事は行えず、代わりに後でレナから聖属性の付与魔法を施してもらう必要がある。ゴンゾウは彼女達の言葉に疑問抱きながらも料理を味わい、レナも有り難く頂く。
「ふうっ……今日は結構戦ったけど、こんなにオークと遭遇するなんて思わなかったな……」
「最近は何故か草原に出現するオークが激増している……理由は不明だが、ギルドにも帝都近辺の村や町からオークの討伐依頼が殺到している」
「そう言えば前に私達が戦ったオークを覚えてますか?あの時のオークの中に1体だけ妙な個体がいましたよね。レナさんが倒した射手のオークですけど……」
「そう言えばいたな……真っ先に俺を狙ってきた奴」
以前にレナ達が陽光教会の護衛と供に初めて草原に赴いた際、最初に彼等が遭遇したオークの群れは人間から奪った武器を装備しており、その中に1体だけ技量が高いオークが存在した。戦闘中にレナに向けて正確な射撃を行い、もしも彼が「思考加速」の持ち主でなければ間違いなく頭部を射抜かれて死亡していただろう。
「そういえば王女様もオークの討伐に向かっていたと言っていたような……その途中でバジリスクと遭遇したんだっけ」
「そうですね……オークの増加にバジリスクの出現、何か関係があるのかも知れませんね」
「オークキングとかオークロードとか現れたとか?」
「可能性の1つとしては有り得ますね」
レナが冗談で告げた言葉にアイリィは真面目な表情で頷き、彼女は考え込むように腕を組む。その一方でレナは周囲に視線を向け、夜営を行う前に魔物が近付いて来ない様に旅をする人間が愛用する「腐敗石」と呼ばれる魔石を設置しており、この魔石からは魔物だけが嫌う臭いを放つ性質が存在し、大抵の魔物は近付かなくなる。特にファングやオークのような魔獣は嗅覚が鋭い魔物には効果的らしく、実際にレナ達が夜営を始めてから一度も魔物の襲撃を受けていない。
「この腐敗石がアイリィの腐敗剤の原材料だっけ?」
「そうですよ。まあ、他にも色々と作っているんですけど……そう言えばレナさんの聖水を利用して新しいのを作りましたよ」
「どんなの?」
アイリィが自分の鞄から白色に光り輝く六角形の石を取り出し、最初にレナは聖属性の魔石を取り出したのかと考えたが、通常よりも輝きが異様に強く、彼女はレナに手渡す。
「これは?」
「レナさんの聖水に浸けた魔石ですよ。私が与えられた分だけだと1つしか作れませんでしたけど、どうやら聖水に通常の魔石を浸すと効果が高まるらしいんです。だから私は聖石と名付けました」
「へえ……どれくらいの効果がある?」
「これ1つで低レベルの治癒魔導士でも上級回復薬並の回復魔法を施せますよ。しかも吸魔石と違って魔石ですから複数回発動が可能です。まあ、吸魔石のように装備しているだけで回復効果はありませんし、定期的に聖水に浸けないといけませんけど……」
「へえ……それならこれからはアイリィに渡す聖水の量を増やしておくよ」
「……ずるい」
「いやいや、私の場合は実験に使うだけですよ。コトミンさんの場合は単純に自分が味わう為だけに貰ってるじゃないですか」
「ぎくっ……何故バレた」
「バレバレだよ……」
「よく分からんが……お前達は面白いな」
レナ達のやり取りにゴンゾウが笑みを浮かべ、彼としては他の人間と共に行動する機会が少なく、年齢の割には外見が老けており、大柄な体格のせいで他人から距離を取られやすいゴンゾウにとってレナ達のように気軽に接することが出来る人間と行動を共にする事は貴重な体験だった。
「なんか意外な光景だな……アイリィって料理出来たんだ」
「失礼なっ……こう見えても調理のスキルを持っているんですよ私」
魔弓の手入れを行うレナの目の前には鍋を掻き混ぜるアイリィの姿があり、彼女は慣れた手つきでオークの肉と草原で取れた野草でスープを作り出し、更に注いでレナとゴンゾウに手渡す。食事を行えるのは2人だけなのでアイリィとコトミンは補給用の水しか飲用せず、食事を行いながら今日の出来事を話し合う。
「二人は食べないのか?このスープは美味しいぞ」
「……いらない」
「食べられたらいいんですけどね……まあ、気にしないでください」
食事を行わないアイリィとコトミンにゴンゾウが不思議そうに問い質すが、二人は人間の食事は行えず、代わりに後でレナから聖属性の付与魔法を施してもらう必要がある。ゴンゾウは彼女達の言葉に疑問抱きながらも料理を味わい、レナも有り難く頂く。
「ふうっ……今日は結構戦ったけど、こんなにオークと遭遇するなんて思わなかったな……」
「最近は何故か草原に出現するオークが激増している……理由は不明だが、ギルドにも帝都近辺の村や町からオークの討伐依頼が殺到している」
「そう言えば前に私達が戦ったオークを覚えてますか?あの時のオークの中に1体だけ妙な個体がいましたよね。レナさんが倒した射手のオークですけど……」
「そう言えばいたな……真っ先に俺を狙ってきた奴」
以前にレナ達が陽光教会の護衛と供に初めて草原に赴いた際、最初に彼等が遭遇したオークの群れは人間から奪った武器を装備しており、その中に1体だけ技量が高いオークが存在した。戦闘中にレナに向けて正確な射撃を行い、もしも彼が「思考加速」の持ち主でなければ間違いなく頭部を射抜かれて死亡していただろう。
「そういえば王女様もオークの討伐に向かっていたと言っていたような……その途中でバジリスクと遭遇したんだっけ」
「そうですね……オークの増加にバジリスクの出現、何か関係があるのかも知れませんね」
「オークキングとかオークロードとか現れたとか?」
「可能性の1つとしては有り得ますね」
レナが冗談で告げた言葉にアイリィは真面目な表情で頷き、彼女は考え込むように腕を組む。その一方でレナは周囲に視線を向け、夜営を行う前に魔物が近付いて来ない様に旅をする人間が愛用する「腐敗石」と呼ばれる魔石を設置しており、この魔石からは魔物だけが嫌う臭いを放つ性質が存在し、大抵の魔物は近付かなくなる。特にファングやオークのような魔獣は嗅覚が鋭い魔物には効果的らしく、実際にレナ達が夜営を始めてから一度も魔物の襲撃を受けていない。
「この腐敗石がアイリィの腐敗剤の原材料だっけ?」
「そうですよ。まあ、他にも色々と作っているんですけど……そう言えばレナさんの聖水を利用して新しいのを作りましたよ」
「どんなの?」
アイリィが自分の鞄から白色に光り輝く六角形の石を取り出し、最初にレナは聖属性の魔石を取り出したのかと考えたが、通常よりも輝きが異様に強く、彼女はレナに手渡す。
「これは?」
「レナさんの聖水に浸けた魔石ですよ。私が与えられた分だけだと1つしか作れませんでしたけど、どうやら聖水に通常の魔石を浸すと効果が高まるらしいんです。だから私は聖石と名付けました」
「へえ……どれくらいの効果がある?」
「これ1つで低レベルの治癒魔導士でも上級回復薬並の回復魔法を施せますよ。しかも吸魔石と違って魔石ですから複数回発動が可能です。まあ、吸魔石のように装備しているだけで回復効果はありませんし、定期的に聖水に浸けないといけませんけど……」
「へえ……それならこれからはアイリィに渡す聖水の量を増やしておくよ」
「……ずるい」
「いやいや、私の場合は実験に使うだけですよ。コトミンさんの場合は単純に自分が味わう為だけに貰ってるじゃないですか」
「ぎくっ……何故バレた」
「バレバレだよ……」
「よく分からんが……お前達は面白いな」
レナ達のやり取りにゴンゾウが笑みを浮かべ、彼としては他の人間と共に行動する機会が少なく、年齢の割には外見が老けており、大柄な体格のせいで他人から距離を取られやすいゴンゾウにとってレナ達のように気軽に接することが出来る人間と行動を共にする事は貴重な体験だった。
2
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
ダンジョンに捨てられた私 奇跡的に不老不死になれたので村を捨てます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私の名前はファム
前世は日本人、とても幸せな最期を迎えてこの世界に転生した
記憶を持っていた私はいいように使われて5歳を迎えた
村の代表だった私を拾ったおじさんはダンジョンが枯渇していることに気が付く
ダンジョンには栄養、マナが必要。人もそのマナを持っていた
そう、おじさんは私を栄養としてダンジョンに捨てた
私は捨てられたので村をすてる
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる