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戦姫編
洗脳の疑惑
「ふう……やっと片付いたね。あんたのお蔭で助かったよ」
「こいつら……普通じゃなかった。ここまでオークを相手に苦戦するなんて……」
テンが大剣を肩に乗せてレナに振り返り、彼は短剣と手裏剣を浮揚魔術で手元に戻し、ベルトに装着する。その一方でリノンだけは混乱が収まっていないのか頭を抑え、長剣を手放して冷静さを失ったかのようにその場に跪く。
「くっ……どうして私はこんな事を……いや、戦姫様は……!?」
「おいおい……大丈夫かい?」
「す、すまない……私は何てことを……」
リノンに声を掛けると正気を取り戻したのかレナ達に頭を下げるが、彼等としては彼女の身に何が起きたのかを聞かなければならず、周囲の警戒を怠りずに彼女に問い質す。
「それで……あんたに何が起きたんだい?」
「あ、ああ……まだ自分でも記憶が混濁しているんだが、思い出した事がある……私はバジリスクと交戦した場所を覚えてはいたが、森の中にこの紋様を道標として刻んだ覚えはない」
「それはさっき聞いたよ。だけど、それなら誰がこんな物を刻んだんだい?」
「可能性が高いのは……オーク?」
樹木に刻まれた青竜騎士団の紋様にリノンは忌々し気に睨み付け、彼女の話によると数か月前に青竜騎士団が訪れた時は確かに「道標」は残していた。だが、その道標は樹木の樹皮に紋様を刻む等という安易な手掛かりではなく、樹木に腐敗石を取り付けた特別製の短剣を突き刺すという方法だった。
「あれを見てくれ……これが本当に残していた道標だ」
「あれが?」
「なるほど腐敗石かい……確かに普通の魔物なら近づこうとしないだろうね」
彼女が指差した巨木に短剣が突き刺さっており、時刻は夜を迎えているので暗視のスキルを持つ人間でも発見は難しいが、リノンの言葉通りに短剣が樹皮に突き刺さっており、簡単には抜けないように根本の部分まで突き刺さっていた。そして柄の部分には腐敗石の魔石が取り付けられており、大抵の魔物は腐敗石から発せられる臭いを嫌って近付いたり、あるいは引き抜こうとはしない。
「わぅっ……森の中に入った時から少し嫌な臭いがしていたのは気付いてましたけど、腐敗石だとは分かりませんでした」
「そういう事はちゃんと先にあたしに言いな」
「ごめんなさいっ……次からは気を付けますっ!!」
「よしよし……反省は大事だよ」
嗅覚が鋭いポチ子は森に入った時から腐敗石から放たれる悪臭には気づいていたが、腐敗石の効果は半年程であり、既に青竜騎士団が埋め込んだ短剣に取り付けられた腐敗石は効果が切れかかっており、悪臭も薄らいでいた事から彼女も嫌な臭いだとは気付いても腐敗石だとは分からなかったようであり、テンはポチ子の頭を撫でまわしながらリノンに振り返る。
「という事は本当の道標はあの短剣か……こいつの後を辿れば青竜騎士団が石化された場所に辿り着くのかい?」
「そのはずだったんだが……このオーク達が騎士団の装備を身に着けている事から考えても既に仲間達はオークに捕まった可能性が高い……くそっ!!」
「落ち着きなっ!!わざわざ魔物が石像なんて運び出すと思うのかい?装備だけ奪って放置している可能性も十分に考えられるじゃないかっ!!」
「確かに……」
テンの言葉は正論であり、石像と化した人間達から装備を奪う事はあっても、わざわざ魔物が石像を別の場所に運び出すとは考えにくく、未だに道標の先に石化した青竜騎士団が取り残されている可能性もある。リノンは自分が冷静さを欠いていた事に気付き、頭を冷やして話を続ける。
「そ、そうだな……だが、先を急ぐ前に私の話を聞いて欲しい。今日の昼、私は何時もの時間帯にジャンヌ様の部屋に食事が届かない事に疑問を抱き、給仕に食事を用意させるように命じたんだが……厨房に送り込んだ給仕も戻って来ない事に疑問を抱いて私が直接厨房に向かう事にした」
「それでどうしたんだい?まさか毒入りの食事を渡されたのかい?」
「いや……実はその途中で謹慎処分を受けていたはずのデキンと見た事もない格好をした女と遭遇したんだ」
「デキン?」
この状況で帝国の防衛大臣の名前を耳にするとは思わず、全員が驚いた表情を抱くが、リノンは険しい表情を抱いて説明を行う。
「最初は私も見間違いかと思ったが、間違いなくあの男は城に存在した。そして連れていた女と口論を行っていたが、すぐに2人とも地下牢の通路に姿を消した。不審に思った私は奴等の後を追いかけた時、地下牢の出入口で待ち構えていた女と遭遇した……その後の事は今でも詳しくは思い出せないが、この時に私はあの女に洗脳の類のスキルを施されのかも知れない」
「洗脳……ミラを多重人格者にした奴かな?」
「可能性はあるね」
「……私もそう思う」
「わうっ!?こ、コトミンさん!?居たんですか?」
「さっきから居た」
リノンに洗脳を仕掛けたという女性の登場にレナの脳裏にミラが思い浮かび、彼女は洗脳の能力を持つ人間に複数の人格を自分に埋め込まれたと説明しており、今回のリノンを洗脳した人間と関わりがあるか、あるいは同一人物の可能性もある。その一方で馬に化けていたコトミンがさり気なく人間状態に変化を果たし、当たり前のように会話に加わった。
「こいつら……普通じゃなかった。ここまでオークを相手に苦戦するなんて……」
テンが大剣を肩に乗せてレナに振り返り、彼は短剣と手裏剣を浮揚魔術で手元に戻し、ベルトに装着する。その一方でリノンだけは混乱が収まっていないのか頭を抑え、長剣を手放して冷静さを失ったかのようにその場に跪く。
「くっ……どうして私はこんな事を……いや、戦姫様は……!?」
「おいおい……大丈夫かい?」
「す、すまない……私は何てことを……」
リノンに声を掛けると正気を取り戻したのかレナ達に頭を下げるが、彼等としては彼女の身に何が起きたのかを聞かなければならず、周囲の警戒を怠りずに彼女に問い質す。
「それで……あんたに何が起きたんだい?」
「あ、ああ……まだ自分でも記憶が混濁しているんだが、思い出した事がある……私はバジリスクと交戦した場所を覚えてはいたが、森の中にこの紋様を道標として刻んだ覚えはない」
「それはさっき聞いたよ。だけど、それなら誰がこんな物を刻んだんだい?」
「可能性が高いのは……オーク?」
樹木に刻まれた青竜騎士団の紋様にリノンは忌々し気に睨み付け、彼女の話によると数か月前に青竜騎士団が訪れた時は確かに「道標」は残していた。だが、その道標は樹木の樹皮に紋様を刻む等という安易な手掛かりではなく、樹木に腐敗石を取り付けた特別製の短剣を突き刺すという方法だった。
「あれを見てくれ……これが本当に残していた道標だ」
「あれが?」
「なるほど腐敗石かい……確かに普通の魔物なら近づこうとしないだろうね」
彼女が指差した巨木に短剣が突き刺さっており、時刻は夜を迎えているので暗視のスキルを持つ人間でも発見は難しいが、リノンの言葉通りに短剣が樹皮に突き刺さっており、簡単には抜けないように根本の部分まで突き刺さっていた。そして柄の部分には腐敗石の魔石が取り付けられており、大抵の魔物は腐敗石から発せられる臭いを嫌って近付いたり、あるいは引き抜こうとはしない。
「わぅっ……森の中に入った時から少し嫌な臭いがしていたのは気付いてましたけど、腐敗石だとは分かりませんでした」
「そういう事はちゃんと先にあたしに言いな」
「ごめんなさいっ……次からは気を付けますっ!!」
「よしよし……反省は大事だよ」
嗅覚が鋭いポチ子は森に入った時から腐敗石から放たれる悪臭には気づいていたが、腐敗石の効果は半年程であり、既に青竜騎士団が埋め込んだ短剣に取り付けられた腐敗石は効果が切れかかっており、悪臭も薄らいでいた事から彼女も嫌な臭いだとは気付いても腐敗石だとは分からなかったようであり、テンはポチ子の頭を撫でまわしながらリノンに振り返る。
「という事は本当の道標はあの短剣か……こいつの後を辿れば青竜騎士団が石化された場所に辿り着くのかい?」
「そのはずだったんだが……このオーク達が騎士団の装備を身に着けている事から考えても既に仲間達はオークに捕まった可能性が高い……くそっ!!」
「落ち着きなっ!!わざわざ魔物が石像なんて運び出すと思うのかい?装備だけ奪って放置している可能性も十分に考えられるじゃないかっ!!」
「確かに……」
テンの言葉は正論であり、石像と化した人間達から装備を奪う事はあっても、わざわざ魔物が石像を別の場所に運び出すとは考えにくく、未だに道標の先に石化した青竜騎士団が取り残されている可能性もある。リノンは自分が冷静さを欠いていた事に気付き、頭を冷やして話を続ける。
「そ、そうだな……だが、先を急ぐ前に私の話を聞いて欲しい。今日の昼、私は何時もの時間帯にジャンヌ様の部屋に食事が届かない事に疑問を抱き、給仕に食事を用意させるように命じたんだが……厨房に送り込んだ給仕も戻って来ない事に疑問を抱いて私が直接厨房に向かう事にした」
「それでどうしたんだい?まさか毒入りの食事を渡されたのかい?」
「いや……実はその途中で謹慎処分を受けていたはずのデキンと見た事もない格好をした女と遭遇したんだ」
「デキン?」
この状況で帝国の防衛大臣の名前を耳にするとは思わず、全員が驚いた表情を抱くが、リノンは険しい表情を抱いて説明を行う。
「最初は私も見間違いかと思ったが、間違いなくあの男は城に存在した。そして連れていた女と口論を行っていたが、すぐに2人とも地下牢の通路に姿を消した。不審に思った私は奴等の後を追いかけた時、地下牢の出入口で待ち構えていた女と遭遇した……その後の事は今でも詳しくは思い出せないが、この時に私はあの女に洗脳の類のスキルを施されのかも知れない」
「洗脳……ミラを多重人格者にした奴かな?」
「可能性はあるね」
「……私もそう思う」
「わうっ!?こ、コトミンさん!?居たんですか?」
「さっきから居た」
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