上 下
33 / 261
王都編

第33話 訓練場

しおりを挟む
「貴方の魔法の使い方に興味が出てきたわ。悪いのだけど、実際に見せてくれるかしら?」
「見せる?」
「ええ、といってもここでやるのもなんだから……訓練場を使いましょうか」
「訓練場?」
「この魔法学園では魔法の練習をするための訓練場が複数あります」


訓練場という言葉にマオは不思議に思うと、リンダが代わりに説明してくれた。学園内には魔法の練習を行うための特別な訓練場がいくつか存在し、その内の一つにマリアはマオ達を連れて案内する。

校舎を移動する際にマオは授業を受けている生徒達の姿を確認する。途中で通りかかった教室では生徒達が席に座っている姿を見て少しだけマオは覗く。


「このように王国軍は獣人国軍を誘導し、事前に配置していた部隊と合流して敵を一網打尽に……」


話を聞く限りではどうやら魔法の授業というよりも歴史の勉強をしているらしく、それを見てマオは魔法学園で押しているのは魔法の技術だけではない事をバルルから教わった事を思い出す。


(本当に魔法には関係ない事も教えてるんだ……勉強に付いていけるかな)


マオは他の生徒よりも大分遅れて魔法学園に入学する事になり、今から勉強して他の生徒に追いつけるのか不安はあった。しかし、今は入学する事だけに専念し、入学した後の事を考えるよりも目先の目標に集中する事にした。

授業している教室を横切ってマオ達は校舎の外に出ると、校舎の裏側に移動する。そこには訓練場が存在し、丁度他の生徒が魔法の練習を行っていた。


「では、訓練を始める!!しっかりと狙うんだぞ!!」
「ファイア!!」
「ウィンド!!」
「アクア!!」


マオよりも同い年ぐらいの生徒達が教師の指示通りに小杖を構え、離れた場所に置かれている木造製の人形に目掛けて魔法を放つ。人形の大きさは成人男性ほどはあり、鋼鉄製の鉄棒に括り付けた状態で立ち尽くしていた。

訓練を受けているのはマオと同世代と思われる生徒達であり、彼等は小杖を取り出すと「下級魔法」を繰り出す。マオと同じように氷《アイス》を扱う魔法使いはおらず、その代わりに火、風、水の属性の下級魔法を繰り出す。


「どうやら授業中だったようね。しばらく待ちましょうか」


マリアは生徒達から離れた場所で様子を伺い、この時にマオはリオン以外の子供が魔法を扱う場面を始めて見た。マオと同学年と思われる子供達が木造製の人形に向けて魔法を発動させ、次々と炎や水や風の塊を放つ。


(す、凄い……けど、全然当たってない?)


誰もがマオの扱う「アイス」よりも凄い威力の下級魔法を放つが、狙いは全く安定せず、的から大きく外れてしまう。中には木造人形まで届かずに魔法が消えてしまう子も存在し、それを見た教師が呆れた様子で叱りつける。


「どうした!!まだ10メートルも離れていないぞ!!全然当たってないじゃないか!!」
「う、ううっ……」
「くそっ、当たれ!!」
「このっ!!このっ!!」


子供達は必死に小杖を振って魔法を当てようとするが、全く当たる様子はない。マオはその様子を見て驚き、どうして彼等が的に当てられないのかと戸惑う。


(これぐらいの距離でも当たらないなんて……)


10メートルほど離れた的に魔法を当てる事ができない子供達を見てマオは不思議に思い、自分ならばこの距離でも確実に的を当てられる自信がマオにはあった。しかし、他の生徒達は結局は的に当てる事ができずに訓練は終了してしまう。

生徒達は魔法を連発して魔力を消耗したせいか顔色が悪く、酷く疲れた様子だった。そんな子供達を見て教師の男性はため息を吐き出し、彼等を説教する。


「全く、お前達が入ってからもう一か月だぞ!!それなのに誰一人的に当てる事もできないのか!?」
「くっ……」
「う、うるさい!!僕を誰だと思ってるんだ!?男爵家の……」
「それがどうした!!この学園にいる間は身分など関係ない!!」
「あいてっ!?」


生徒の中には貴族も混じっていたらしく、偉そうに指導を行う教師に反発する者もいたが、教師は気にせずにその生徒の頭を小突く。その様子を見ていたマリアは教師に話しかける事にした。


「相変わらずね、マカセ先生」
「あっ……こ、これは学園長!!何時からここに!?」
「ついさっきよ」
「が、学園長だ!?」
「皆、頭を下げろ!!」
「おはようございます!!」


マリアが現れた途端にマカセと呼ばれた男性教師は慌てふためき、他の子供達は慌てて頭を下げる。その様子を見てマリアが生徒にも尊敬されている事をマオは知り、その一方でマカセと他の生徒もマオの存在に気付く。


「マリア先生、その子は?」
「今日から入学のマオ君よ。入学手続きが済み次第、貴方のクラスに任せる事になるわ」
「なるほど……私の名前はマカセだ。この学園の一年生の教師を務めている」
「は、初めまして……マオと言います」


マカセと呼ばれた男性教師はマオに自己紹介を行うと、マオは頭を下げて挨拶を行う。その一方でバルルはマカセの顔を見て眉をしかめ、何かを思い出したように大声を上げる
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ぼくの淫魔ちゃん

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:4

ホロボロイド

SF / 連載中 24h.ポイント:170pt お気に入り:0

政略婚~腹黒御曹司は孤独な婚約者を守りたい~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,904

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:107

道ならぬ恋を

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:205

紅雨 サイドストーリー

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:4

ほろ甘さに恋する気持ちをのせて――

恋愛 / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:17

転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,008

即オチしても恋はしない

BL / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:598

処理中です...