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魔法学園編

第53話 氷刃の完成

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――魔法学園に入学してから一週間経過すると、マオは誰も起きていない時間帯にて訓練場に赴く。そして事前に用意しておいた木造人形から15メートルほど離れた距離からマオは小杖を握りしめた状態で立ち尽くす。

意識を集中させるようにマオは小杖を構え、左手にはしっかりと吸魔石を握りしめる。そして彼は次に目を開いた瞬間、小杖を天に向けて無詠唱で魔法を発動させる。


「っ……!!」


魔法の名前を口にせずにマオは小杖の先端に氷塊を作り出すと、最初から円盤型の形をした氷塊を作り出す。色々と試した結果、氷の塊を作り出した後に円盤の形に変化させるよりも、最初の段階から円盤型の氷塊を作り出す方が早い事に気付いた。

一瞬にしてを作り出したマオは続けて杖を振りかざし、この時に高速回転を行う。そして彼が杖を振り下ろした途端、以前よりも格段に速く氷刃は標的の木造人形の元へ迫る。


「はああっ!!」


マオの気合の掛け声に合わせて氷刃は加速し、最初に人形の首元を切り裂いた。しかも攻撃はそれだけに留まらず、氷刃はブーメランのように旋回して今度は左足を切り裂いた。


「よしっ!!」


人形の頭部と足を切断する事に成功したマオは声を上げて喜び、氷刃は空中で消え去ってしまう。集中力が途切れた事で魔法の効果が切れてしまい、この時にマオは吸魔石を確認すると無色のままだと気付く。


「よし、成功だ!!」


遂に「氷刃」を完成させた事にマオは喜びを抑えきれずに声を上げ、嬉しさのあまりに小杖と吸魔石を抱えた両手を天に突き上げる。


「成功……したんだ」


改めてマオは魔法の成功を実感すると、急に力が抜けてその場に座り込んでしまう。ここまでずっと練習を続けてきたせいで緊張の糸が切れてしまい、今まで溜まっていた疲れが一気に襲い掛かってきた。

吸魔石を手にしていてもマオはもう全く疲れたりはせず、完全に魔力を吸収されないように制御できるようになっていた。最初の頃は指先に少し触れるだけで体調不良を引き起こしたが、今は鷲摑みしても平気だった。


(やっと僕も攻撃魔法を使えるようになったよ……リオン)


もしもリオンと次に再会した時、マオは自分も戦える魔法を身に着けた事を堂々と報告できる。前の時はリオンの足を引っ張ってしまったが、今のマオならば魔物と戦える力を手に入れた。


(これで少しは追いついたかな……)


マオがここまで必死になって魔法を身に着けたのは立派な魔術師になるためだが、他にも理由があるとしたらリオンに追いつきたいという気持ちもあったからである。追いついたと言ってもリオンにはまだまだ敵わないだろうが、それでも一週間前と比べてマオは自分が成長したという実感を抱く。


(よし、今日のうちにバルルさんに報告しよう。そういえばバルルさんの方はもう一人の生徒、捕まえる事はできたのかな?)


結局はバルルは一週間経過してもマオの訓練をまともに見た事はなく、彼女は街中を逃げ回る生徒を探し回っていた。しかし、今日にいたるまで生徒を捕まえる事ができず、マオは一人で訓練する羽目になった。

バルルは教師になる条件としてマリアからマオともう一人の生徒の面倒を見るように言われた。つまり、彼女が教師を続けるためにはもう一人の生徒を捕まえて授業を受けさせなければならない。しかし、未だに捕まえる気配すらない。


(そろそろバルルさんに別の訓練方法を教えてもらいたいのにな……ん?)


マオは地面の上に横たわっていると、不意に校舎の屋上の方で人影を発見した。それを見たマオは疑問を抱いて身体を起き上げると、誰かが校舎から飛び降りようとしている事に気付く。


「えっ!?ちょっ……待って!!」


校舎から何者かが飛び降りようとしている事に気付いたマオは咄嗟に声を上げるが、彼の声が届いていないのか人影は屋上から飛び降りた。それを見たマオは慌てて駆け出し、飛び降りた人間が落ちる場所に向かう。


(まずい!?)


校舎から飛び降りた人影はまだ暗い時間帯である事もあって姿はよく見えないが、ともかくマオは飛び降りた人間を救うために小杖を突き出す。


(どうすればいい!?)


しかし、小杖を構えた時にマオは飛び降りた人物を助ける方法が思いつかず、彼が作り出せるのはの氷の塊が精いっぱいである。

魔力操作の技術を身に着けたお陰でマオは以前より大きな氷塊を生み出せるようになったが、それでも飛び降りた人間を救うとなるとただの氷の塊を放っても役には立たない。だからこそマオは氷塊を何らかの形に変化させて放つ必要がある。


(これしかない!!)


考えている暇もないのでマオは頭に思いついた物を想像して魔法を発動させると、彼の小杖の先端から「氷の筒」が作り出される。細長い氷の筒を作り出したマオは飛び降りた人物に向けて放ち、大声で呼びかけた。


「それに掴まって!!」
「っ……!?」


落下中の人物はマオの声に反応して首を向けると、自分の元に目掛けて突っ込んでくる筒状の氷を確認する。最初は自分に接近する氷の塊を見て驚くが、反射的に氷の筒に手を伸ばして落下の際中に掴む事に成功した。
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