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魔法学園編

第62話 月の徽章の条件

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「ど、どうしたんですか師匠?」
「元気なさそう……はっ、まさか今日は調子が悪い日?」
「え、調子……?」
「変な勘違いするんじゃないよ!!この馬鹿猫娘!!」


ミイナの言葉にマオは意味は分からなかったが、バルルは少しだけ頬を赤く染めて怒鳴りつける。彼女は叱りつけた後にため息を吐き出し、二人に席に座るように促す。

マオが席に座るとミイナは彼の隣の席に座り、バルルはそんな二人を見て腕を組んで考え込む。そんな彼女の態度に疑問を抱いたマオは質問する。


「師匠、本当にどうしたんですか?具合が悪いなら無理しない方が……」
「あたしの身体は健康さ。ただまあ……ちょっとね」
「もしかして私達に関係する事で何か言われた?」
「え?」


ミイナの言葉にマオは驚いて振り返ると、バルルはため息を吐いて頷く。彼女は昨日、学園長《マリア》の元に訪れた時に難題を言い渡された事を話す。


「実はあたしらがこの教室を使い続ける事に問題があってね……」
「え?問題?」
「他の教師から抗議されたんだよ。たった二人しかいない生徒のために教室を一つ丸ごと貸し出すのは問題があるんじゃないか、とね」
「「えっ……」」
「それにあたしも最近まで猫娘を追い掛け回してまともに授業もできなかったからね、その事もちょいと問題があると怒らてね……」


この数日のバルルはミイナを捕まえるために奮闘していたが、その間に彼女は一度も授業をしていない。マオに助言を与える事もあったが、彼女はな授業をしていない事を知った他の教員に問題視されている。

学園長も立場的にはバルルだけの味方をするわけにはいかず、他の教師の抗議を受けた以上はバルルに注意しなければならない。しかし、バルルとしても別に仕事をさぼっていたわけではなく、誠に遺憾だった。


「たくっ、他の教師共はあたしが遊び惚けているとでも思ってんのかね……こっちだって生意気な猫娘を捕まえるのに苦労してんだよ」
「それは嘘、私と追いかけっこしているときは割と楽しそうだった。私の行きつけの魚屋さんの従業員に化けて捕まえようとしようしたり、壺の中や箱の中に隠れて出てきて捕まえようとしていた時は笑った」
「そんな事までしてたんですか!?」
「ま、まあ……ちょっと面白半分にやった事は認めるよ」


バルルはミイナを捕まえるために色々な策を講じ、その際中に楽しい事はなかったと言えば嘘になる。しかし、彼女もできる範囲でマオには指導を行っており、実際に彼女の指導のお陰でマオは急成長を遂げた。

しかし、他の教師はマオ達の事情を詳しく知らないので急に現れた得体の知れない女教師が教室を一つ貸し出し、しかも新しく入った生徒と学校の問題児の指導を命じられたのにまともな授業をしていないと聞けば黙っていられるはずがない。


「もしもこの教室を借りれなくなったらどうなるんですか?」
「その場合はあたしは解雇であんた達は他の教師に任せる事になるね」
「えっ!?どうして!?」
「魔法学園の決まりで一学年には教師は担当一人と決まってるんだよ。担当教師以外の教師もいるけど、そいつらは自分が得意とする専門分野の授業を請け負う事になってる。けど、生憎とこの学園には教師はもういらないらしいね」


生徒の指導を行う担当教師も、各分野の授業を行う他の教師も今の所は空きがないらしく、仮にバルルが借りている教室が使えなくなれば彼女は解雇となる。

学園長から言い渡された条件を果たして正式に教師になったにも関わらず、このままではバルルが去る事にマオは不安を抱く。


「ど、どうにかならないんですか!?」
「いや、一応は話は付いてるんだよ。学園長がこの教室をあたしに貸したのは月の徽章を持つあんたのお陰だからね」
「えっ……月の徽章?」
「マオ、月の徽章を持ってるの?」


バルルの言葉にマオは驚き、一方でミイナの方は信じられない表情を浮かべる。月の徽章はマオは入学時に学園長から受け取り、大切な物なので失くさないように大事に保管しているので今は手元にはない。


「月の徽章の生徒はだからね。あんたはまだ知らないようだけど、月の徽章の生徒の場合は無条件で学年を進級できるんだよ」
「えっ!?そうなんですか!?」
「普通の生徒は授業で評価を上げて星の徽章を貰わないと進級できない。だけど、月の徽章の生徒に限っては星の徽章が無くても進級できるんだよ」
「し、知らなかった……」


月の徽章にそのような特典がある事を知らず、マオは自分が凄いものを受け取っていた事を知る。バルルは月の徽章を持つ生徒の担任を請け負ったからこそ空き教室を借りれた事を話す。


「あんたのお陰であたしはこの空き教室を借りる事ができた。だけど、あんたの場合は月の徽章が受け取ったのは学校に入る前だからね。事情を知らない教師からしたらいきなり入学生が月の徽章を与えられた事に疑問を持つし、学園長があんたを特別扱いしているんじゃないかと疑る奴もいる」
「……学園長はそんな依怙贔屓はしない」


バルルの言葉にミイナは不満そうな表情を浮かべ、学園長が他の教師に疑われる事に彼女は嫌な気分を抱く。その様子を見てマオはミイナが学園長の事を本当に好きなのだと知る。
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