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魔法学園編

第104話 仕送りのために

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「お前さん達は儂に装備を作ってほしいと思っているのか?言っておくが、子供だからといって儂は値段を安くしたりはせんぞ」
「えっ……ち、ちなみにおいくらぐらいですか?」
「お主等の合わせた杖と魔法腕輪を作るとなると時間と手間もかかるからな……一人当たり金貨2、3枚といったところか」
「き、金貨!?」
「……高すぎる」


ドルトンに新しい装備を依頼する場合、今回手に入れた報酬の半分以上を使い込む事になり、流石にマオとミイナも躊躇した。しかし、バルルによると二人が成長するためにはドルトンに新しい装備を作ってもらう必要があるという。


「あんた達が今よりも魔法を磨くためには装備を整える必要があるんだよ。一人前の魔術師になりたければ自分の装備を整えるのも魔術師の役目さ」
「そ、そういう物なんですか?」
「そういうもんさ。学園に通っている生徒だって自分に合わせた杖を作っている奴もたくさんいる。まあ、大抵は貴族出身のガキ共だけどね……」
「魔法学園の生徒が儂の店に来る事も稀にある。まあ、大抵は実力に見合わない性能の装備を要求してくるから追い払うか、大金を吹っ掛けて諦めさせるがな」
「そういう所は相変わらずだね……」


魔法学園の生徒の中には自分専用の杖や魔法腕輪を作ってもらう生徒も存在し、別に自分専用の杖や魔法腕輪を作る事は禁じられているわけではない。尤も金が掛かるという理由で制作を依頼するのは大半は貴族らしく、マオのように貧しい家庭の生徒はどうしようもできない。

魔術師が扱う杖や魔法腕輪は特別な素材が必要のため、どうしても制作にはお金が掛かる。その代わりに自分に見合う杖と魔法腕輪を製作して貰えばより魔法の力を引きだせる事は間違いなく、魔法の腕の上達に繋がる。


「あんた達は目を離すとまた危険な事に首を突っ込みそうだからね。だから装備だけでも整えて置けば危険な事態に陥っても自力で対処できるかもしれないだろう?」
「そんな、もう危険な事なんて……」
「しないと言い切れるのかい?ん?」
「……えっと」
「……否定できない」


バルルの言葉にマオとミイナは否定する事ができず、今回の一件も二人がバルルに相談も無しで引き起こした出来事である。バルルとして自分が目を離している時にマオとミイナがまた危険な事に巻き込まれる可能性を考慮し、せめて二人の装備だけは整えさせて自分の身は自分で守れるようにさせてやりたかった。


「ここで爺さんに依頼する場合、あんた達は今以上に魔法の力を引き出せるかもしれない。どうする?あんたの両親がどんな人なのかは知らないけど、あたしだったら子供が危険を犯して手に入れたお金で仕送りしてもらうより、自分の身を守る事にお金を使って欲しいと思うけどね」
「そ、それは……」
「別に仕送りする事自体は間違ってはいないよ。だけどね、大金を手に入れる機会なんて早々はないんだ。今回は自分の装備を整えて余ったお金を仕送りとして送ってやりな。それにここで装備を整えるのなら子供のあんたでも金を稼ぐ方法を教えてやれるからね」
「え、本当ですか!?」


バルルの提案にマオは驚き、彼女は子供のマオでも金を稼げる方法を教える事を約束する。但し、その方法も危険を伴うために装備は整えておいた方がいい事を伝える。


「あたしが子供の頃、まだ魔法学園に通っていた時に利用していた金稼ぎの方法を教えてやるよ。だけど、その方法を試すにはあんたはまずは装備を整えておかないといけない」
「う、う~ん……その方法はお金を稼げるんですか?」
「あんた次第だね、だけどやり方によっては賞金首を捕まえるよりもずっと効率的に金を稼げるかもしれない……とだけ言っておくよ」
「本当にそんな方法があるの?」
「知りたいのなら装備をここで整えな。話はそれからだよ」


マオとミイナはバルルの言葉を聞いて顔を見合わせ、ここでマオは非常に思い悩む。今回手に入れた報酬は両親の仕送りとして使い果たすつもりだったが、バルルの話はどうしても気になった。

魔法学園の学生でもできる金稼ぎの方法が気になり、その方法を知ればマオは両親の仕送りだけではなく、自分が学園生活を過ごすために必要なお金を稼ぐ事もできるかもしれない。しかし、ここで報酬の大半を使い込むと両親への仕送りの金額が大幅に減ってしまう。


(父さんと母さん……ごめん、必ず借金を返せるぐらいにお金をいっぱい稼いでみせるからね)


悩んだ末にマオは今後の事を考え、一度に仕送りを送り込むよりもバルルに教わる方法で金を稼ぎ、その方法で両親の仕送りを定期的に行う事を決めた。
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