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魔法学園編
第112話 バルルの実力
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「喰らえっ!!」
「ギャアアアッ!?」
二つの氷塊を組わせてマオが造り上げたのは先端が尖った氷柱であり、胸元を突き刺されたコボルトは絶命した。その様子を見てバルルは驚いた表情を浮かべ、一方でミイナの方は興奮した様子で尻尾を振って拍手を行う。
「おおっ……格好いい」
「今のはまさか……二つの魔法を組み合わせたのかい!?」
「はあっ、はあっ……ふう、助かった」
マオは額の汗を拭い、魔法を解除するとコボルトの様子を確認する。胸元が抉られているので確実に死んだのは間違いなく、疲れた様子でその場に座り込む。
新しく覚えた「散弾」と「連結(二つの魔法を組み合わせる技術)」はまだ使い慣れておらず、魔力量が少ないマオにとっては少々負担が大きい。それでも勝利した事に間違いなく、彼は倒したコボルトを見て握り拳を作る。
(これぐらいの相手ならもう勝てるんだ……強くなっている、間違いなく)
自分が確かに魔術師として成長している事を実感し、マオは嬉しさを抑えきれずに無意識に二又の杖を握りしめる。その一方でバルルの方は自分が知らない間にまたもや新しい魔法の応用法を編み出した彼に驚きを隠せない。
(最初に使った魔法はともかく、最後に使った魔法……こいつ、まさか合成魔法を覚えたのかい?いや、あれは二つの魔法を合成させたというより、ただ合体させただけか……)
合成魔法とは文字通りに複数の魔法を組み合わせる事で生み出す攻撃魔法であり、才能を持つ魔術師でも会得は難しい。マオの編み出した「連結」は合成魔法に似通った部分もあるが、根本的には異なる。
「マオ……あんた、最後に使った魔法はもしかして二つの氷塊を合体させたのかい?」
「あ、はい……前に師匠が質と量の話をしてくれた時に思いついたんです」
「なるほどね、量を増やすだけじゃなく、合体させる事で質を向上させていたのかい……」
マオの返事を聞いてバルルは感心と呆れが入り混じった表情を浮かべた。バルルとしてはマオに質と量の話をしたのは彼が質を選ぶか、あるいは量を増やすか、どちらを彼が選ぶのか確かめるためだった。
この二つのどちらかを彼が選んだ場合、それに見合わせた鍛錬方法をマオに教えるつもりだった。しかし、マオは質と量もどちらも選択し、この場合はバルルもどのように助言するべきか分からずに悩む。
(まさか質も量も選ぶなんてね……思っていたよりも欲張りだね)
質と量の片方だけを選択していればバルルとしても頭を悩ませずに指導が行えたのだが、マオがどちらも捨てずに両方を選ぶのであればそれに見合わせた鍛錬方法も考えなければならない。その事に面倒を想いながらもバルルは弟子の成長を素直に嬉しく思う。
「あんた達、今日はよく頑張ったね。さあ、課外授業はここまでだよ。疲れただろうから今日の飯はあたしが奢ってやるよ」
「え、いいんですか!?」
「なら私は肉が喰いたい」
「分かった分かった……けど、ここまで来たんだからどうせならあんた達に見せたい物がある」
バルルは懐に手を伸ばすと彼女は懐中時計を確認し、まだ時間に余裕がある事を確認する。彼女は王都に戻る前に二人に自分の実力を見せる事に決めた。
「丁度いい機会だね、あんた達にあたしの強さを見せてやるよ」
「えっ!?師匠も戦うんですか?」
「……その格好で?」
「ははっ、余計な心配はしなくていいんだよ」
マオとミイナと違い、バルルは杖も魔法腕輪も装着していなかった。基本的に魔術師が魔法を扱うには魔法の力を具現化させる道具が必要であるため、杖や腕輪を所持していない状態では魔法を扱う事はできない。
見た限りではバルルは杖も腕輪も身に着けておらず、そんな状態で彼女は二人の元を離れて無防備な状態で立ち尽くす。草原に散らばっている魔物の何体かがバルルに気付くと、獲物だと判断して接近してきた。
「グルルルッ……!!」
「おっと、まだ居たのかい」
「師匠!?あ、危ない!!」
「平気だって、あんた達はそこで黙って見ていな」
再びコボルトが現れるとバルルの元へ接近し、それを見たマオはバルルを助けようと二又の杖を構えた。しかし、それに対してバルルは手を振って彼を制すると、迫りくるコボルトに対して拳を握りしめる。
まさか魔物を相手に素手で戦うつもりなのかとマオは驚いたが、この時に彼の脳裏に魔法学園の先輩である「リンダ」を思い出す。彼女はミイナと同じく「魔拳士」であるが、ミイナと異なる点は炎ではなく風を拳に纏う。
(まさか師匠も!?)
拳を構えたバルルを見てマオは直感的に彼女が「魔拳士」だと悟り、拳を握りしめた状態でバルルはコボルトが間合いに入り込むのを待つ。コボルトは牙を剥きだしにして飛び掛かった瞬間、彼女は目を見開いて右拳を振りかざす。
「ギャアアアッ!?」
二つの氷塊を組わせてマオが造り上げたのは先端が尖った氷柱であり、胸元を突き刺されたコボルトは絶命した。その様子を見てバルルは驚いた表情を浮かべ、一方でミイナの方は興奮した様子で尻尾を振って拍手を行う。
「おおっ……格好いい」
「今のはまさか……二つの魔法を組み合わせたのかい!?」
「はあっ、はあっ……ふう、助かった」
マオは額の汗を拭い、魔法を解除するとコボルトの様子を確認する。胸元が抉られているので確実に死んだのは間違いなく、疲れた様子でその場に座り込む。
新しく覚えた「散弾」と「連結(二つの魔法を組み合わせる技術)」はまだ使い慣れておらず、魔力量が少ないマオにとっては少々負担が大きい。それでも勝利した事に間違いなく、彼は倒したコボルトを見て握り拳を作る。
(これぐらいの相手ならもう勝てるんだ……強くなっている、間違いなく)
自分が確かに魔術師として成長している事を実感し、マオは嬉しさを抑えきれずに無意識に二又の杖を握りしめる。その一方でバルルの方は自分が知らない間にまたもや新しい魔法の応用法を編み出した彼に驚きを隠せない。
(最初に使った魔法はともかく、最後に使った魔法……こいつ、まさか合成魔法を覚えたのかい?いや、あれは二つの魔法を合成させたというより、ただ合体させただけか……)
合成魔法とは文字通りに複数の魔法を組み合わせる事で生み出す攻撃魔法であり、才能を持つ魔術師でも会得は難しい。マオの編み出した「連結」は合成魔法に似通った部分もあるが、根本的には異なる。
「マオ……あんた、最後に使った魔法はもしかして二つの氷塊を合体させたのかい?」
「あ、はい……前に師匠が質と量の話をしてくれた時に思いついたんです」
「なるほどね、量を増やすだけじゃなく、合体させる事で質を向上させていたのかい……」
マオの返事を聞いてバルルは感心と呆れが入り混じった表情を浮かべた。バルルとしてはマオに質と量の話をしたのは彼が質を選ぶか、あるいは量を増やすか、どちらを彼が選ぶのか確かめるためだった。
この二つのどちらかを彼が選んだ場合、それに見合わせた鍛錬方法をマオに教えるつもりだった。しかし、マオは質と量もどちらも選択し、この場合はバルルもどのように助言するべきか分からずに悩む。
(まさか質も量も選ぶなんてね……思っていたよりも欲張りだね)
質と量の片方だけを選択していればバルルとしても頭を悩ませずに指導が行えたのだが、マオがどちらも捨てずに両方を選ぶのであればそれに見合わせた鍛錬方法も考えなければならない。その事に面倒を想いながらもバルルは弟子の成長を素直に嬉しく思う。
「あんた達、今日はよく頑張ったね。さあ、課外授業はここまでだよ。疲れただろうから今日の飯はあたしが奢ってやるよ」
「え、いいんですか!?」
「なら私は肉が喰いたい」
「分かった分かった……けど、ここまで来たんだからどうせならあんた達に見せたい物がある」
バルルは懐に手を伸ばすと彼女は懐中時計を確認し、まだ時間に余裕がある事を確認する。彼女は王都に戻る前に二人に自分の実力を見せる事に決めた。
「丁度いい機会だね、あんた達にあたしの強さを見せてやるよ」
「えっ!?師匠も戦うんですか?」
「……その格好で?」
「ははっ、余計な心配はしなくていいんだよ」
マオとミイナと違い、バルルは杖も魔法腕輪も装着していなかった。基本的に魔術師が魔法を扱うには魔法の力を具現化させる道具が必要であるため、杖や腕輪を所持していない状態では魔法を扱う事はできない。
見た限りではバルルは杖も腕輪も身に着けておらず、そんな状態で彼女は二人の元を離れて無防備な状態で立ち尽くす。草原に散らばっている魔物の何体かがバルルに気付くと、獲物だと判断して接近してきた。
「グルルルッ……!!」
「おっと、まだ居たのかい」
「師匠!?あ、危ない!!」
「平気だって、あんた達はそこで黙って見ていな」
再びコボルトが現れるとバルルの元へ接近し、それを見たマオはバルルを助けようと二又の杖を構えた。しかし、それに対してバルルは手を振って彼を制すると、迫りくるコボルトに対して拳を握りしめる。
まさか魔物を相手に素手で戦うつもりなのかとマオは驚いたが、この時に彼の脳裏に魔法学園の先輩である「リンダ」を思い出す。彼女はミイナと同じく「魔拳士」であるが、ミイナと異なる点は炎ではなく風を拳に纏う。
(まさか師匠も!?)
拳を構えたバルルを見てマオは直感的に彼女が「魔拳士」だと悟り、拳を握りしめた状態でバルルはコボルトが間合いに入り込むのを待つ。コボルトは牙を剥きだしにして飛び掛かった瞬間、彼女は目を見開いて右拳を振りかざす。
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