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魔法学園編

第128話 バルトとの逃走劇

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(こんな時に来るなんて……)


音を立てないようにマオは部屋の中で静かにしていると、やがて諦めたのかバルトの声はしなくなった。マオは声が聞こえなくなったので安心仕掛けた時、再び扉の外の方から声が聞こえてきた。


『ん?バルト、お前何でそんな場所に座り込んでいるんだ?』
『……この部屋の奴に用事があるんだよ。そいつが帰ってくるまで待っている』
『待ってるって……ずっとか?』
『うるせえな、さっさと行け!!』


部屋の外から聞こえてきた声を聞いてマオは困り果て、どうやらバルトは部屋の前に待機しているらしい。意地でもマオが戻ってくるまで待ち構えるつもりらしく、これでは居留守を使ったマオは部屋の外に出られない。

何が何でもバルトはマオの事を逃がすつもりはないらしく、これでは外に出る事もできないと思ったマオはどうするべきか考える。窓を開いて外に出る事もできるが、その場合だと鍵を開きっぱなしでないといけない。


(前に窓を開けっぱなしにした生徒が泥棒に入られたという話もあるし、鍵を開けっぱなしで出ていくのはまずいな)


窓に視線を向けてマオはどうするべきか考えていると、不意に窓を閉じた時に僅かに隙間がある事に気付く。この隙間に杖を差し込めば部屋の中で魔法で造り出した氷を送り込める事に気付く。


(この窓、よくよく見るとガタついてるな……ちゃんと修理した方がいいかもしれないけど、今は都合がいいや)


窓を閉じた状態でも僅かな隙間があれば杖を差し込むは難しくなく、しかもマオの所持する二又の杖は先端部が普通の杖よりも細く尖っている。そのお陰で彼は窓の隙間から杖を差し込む事に成功し、氷を作り出して部屋の中に送り込む事ができた。

これを利用してマオはまずは窓から部屋の外に抜け出すと、窓を閉めた状態で二又の杖を構える。この時に隙間から杖の先端を突っ込み、部屋の中で無詠唱で氷を作り出す。


(形は……こんな感じかな)


自分の掌を見つめながらマオは人の手の形をした氷を作り出すと、それを上手く利用して窓の内側の鍵を施す。これならば窓から入る事はできず、中には入りたい時は同じように部屋の中に氷を生み出して鍵を開ければいい。


(よし、気づかれないように外へ出る事ができた!!)


マオは無事に外へ逃げ出すと、それからしばらくの間は部屋の外へ離れる事にした。そしてバルトの方はマオが部屋から抜け出した事も気づかず、延々とマオを待ち惚ける事になる――





――その日からマオは窓から外に抜け出す事でバルトとの接触を回避し、ある時にマオは廊下で危うくバルトと遭遇しそうになった。この時に彼は窓の外に逃げ出そうとしたが、彼が居た場所は学校の二階の廊下だった。


「ん!?てめえ、昨日はよくも!!」
「わっ!?」
「待ちやがれ!!」


バルトに見つかったマオは慌てて逃げ出そうとしたが、この時に彼は曲がり角を移動したときに廊下の窓に気付いた。咄嗟にマオは窓を開いて杖を構えると、氷塊を作り出して外に飛び出す。

円盤型の氷塊を空中に固定させるとマオはその上に飛び乗り、急いで窓を閉めた。しばらくすると曲がり角からバルトが飛び出し、彼が廊下に居ない事に気付いて驚いた声を上げる。


「なっ!?ど、何処に行きやがった!?」
「…………」


まさかマオが窓の外に隠れたとは思わず、消えてしまった彼を探してバルトはあちこちを見渡すが、その間にマオは氷塊をゆっくりと移動させて避難を行う――





――二日目の訓練を終えた後、魔石を扱う感覚も大分掴めたマオは学生寮に一旦戻ろうとした。しかし、今度は校庭に待ち伏せしていたバルトに見つかってしまう。


「遂に見つけたぞ!!今度こそ逃がさないからな!!」
「わあっ!?」


花壇の裏に隠れていたバルトはマオの前に飛び出すと、彼は杖に手を伸ばす。それを見たマオは慌てて逃げようとした時、何処からか足音が鳴り響いてバルトの背後から人影が現れる。


「てりゃっ」
「あいたぁっ!?」
「ミイナ!?」


バルトの股間にミイナの蹴りが決まり、彼はあまりの痛みに耐え切れずに跪く。一方でミイナバルトを飛び越えると、マオの腕を掴んで走り出す。股間を蹴りつけられたバルトは涙目を浮かべながら逃げ去る二人を睨みつける事しかできなかった。


「ま、待ちやがれ……!!」
「マオ、走って」
「う、うん……」


ミイナのお陰でマオは窮地を脱する事はできたが、今回の一件でマオ達は増々にバルトからの恨みを買ってしまう――





――そして訓練の最終日、マオは朝早くに屋上の訓練場に赴いて練習を行っていた。どうして早朝から訓練を行っていたかと言うと、何時何処でバルトと遭遇するのか分からず、部屋の中でも安心できないので彼は朝から早く学生寮を抜け出して訓練に励む。


「はあっ……眠いな」


欠伸をしながらもマオは杖を構えて練習を行い、彼は二つの魔石から魔力を引きだして通常以上の大きさの氷塊を作り上げる。もう魔石から魔力を引きだす感覚は完璧に掴み、後はどのような手段でバルトと戦うのか考える段階に入っていた。
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