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魔法学園編

第161話 半年

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――マオが魔法学園に入学してから更に時は流れ、季節は夏を迎えた。学園が始まってから半年が経過し、魔法学園の生徒は長期休暇の時期を迎えていた。

長期休暇の間は魔法学園の生徒も自由に外の出入りが許可され、休暇の間は実家で過ごす生徒も多い。しかし、マオの場合は実家が遠く離れているせいで気軽に戻る事ができず、バルルの元で魔法と体力作りの鍛錬の指導を受けていた。


「ほら、あと少しだよ!!頑張りな!!」
「はあっ、はあっ……!!」
「ぜえ、ぜえっ……!!」
「マオ、頑張って。先輩もあと少し」


運動着に着替えたマオ達は誰もいない校庭で走り込みを行い、早朝はいつもランニングを行っていた。何だかんだでバルトも付き合い、最近では一緒に過ごす時間も多い。

最初の頃と比べてバルトの性格も丸くなり、彼は以前の明るさを取り戻す。昔のように彼を真面目な生徒に戻したという事でバルルは他の教員から見直され、今では良好な関係を結んでいた(実際にはマオのお陰だが)。


「おや、バルル先生。休暇中だというのに生徒に訓練をさせているのですか?」
「ああ、アルト先生じゃないですか。こいつらが基本がなってないから鍛えてるんですよ」
「そうだったんですか。しかし、こんな暑い日まで生徒の面倒を見るとは……バルル先生には頭が上がりませんな」
「あはは、それはどうも」
「な、何であの人は息切れもしてないんだ……!?」
「凄い体力……人間離れしている」
「さ、流石は師匠……」


バルルも3人と共に校庭を走り回っているはずだが、走行中に彼女は通りがかりの教師と会話を行うほどの余裕があった。人間離れした体力を誇るバルルにマオ達は戦慄するが、やがて時間を迎えた事でバルルは運動を辞めさせた。


「よし、今日の朝練はここまでだよ!!ほら、しっかりと水を飲んで休みな!!」
「や、やっと終わった……」
「ふうっ……」
「はあっ、はあっ……」


休憩が許可されるとマオ達は立ち止まり、水を飲んで体力を回復させる。3人とも前よりも体力が身に付き、以前よりも筋力も付いた。


「たくっ、今年はいつもより暑いのに朝からこんなに走らされるとは……」
「文句を言うんじゃないよ。それに何だかんだ言ってあんたも最後まで付いてこられるようになったじゃないかい」
「う、うるさいな……後輩にだらしない姿見せられるかよ!!」


バルトは文句を言いつつも訓練に最後まで付き合い、彼は水筒の水を飲もうとすると、それに気づいたマオがバルトに気を利かす。


「あ、先輩。氷もいりますか?」
「お、頼むわ」
「私にもお願い」
「じゃあ、ついでにあたしのも」
「はいはい……」


全員が水筒を差し出すとマオは苦笑いを浮かべて杖を取り出す。この時に彼が手にしたのはの杖ではなく、先端部が三つに分かれた新しい杖だった。

この数か月の間にマオはドルトンから新しい杖を製作してもらい、彼が作って貰ったのは三又の槍だった。但し、横一列に先端部が並んでいるのではなく、杖の正面から見て「三角形」のように三方向に先端が分かれている。


「じゃあ、入れますよ」


杖を構えたマオは無詠唱で三つの小さな氷塊を作り出し、それぞれ別の位置に立っている三人の水筒に向けて氷塊を移動させる。前よりも魔力操作の技術が磨かれた事により、複数の氷塊を自由自在に操作できるようになっていた。


「うわっと!?」
「よっと」
「おっとっとっ……ありがとね」


三人は水筒の中に氷を受け取ると冷たくなった水を飲み、新しい杖のお陰でマオは三つの氷塊を同時に生み出して操れるようになった。このお陰でマオは三つの氷塊を結合させる事でより大きな氷塊を作り出せるようにもなり、逆に言えばその分の彼の魔力の消費量も多くなった。

一度に同時に三つの魔法を発動するのは負担も大きいが、そのためにマオは毎日の鍛錬を欠かさず、失った魔力を回復させる方法を身に着けた。この数か月の間にマオは身体を鍛える事で体力を伸ばし、その体力を生かして魔力を作り出す。


(ふうっ……)


目を閉じたマオは意識を集中させて消費した分の魔力を回復させる。精神鍛錬の方も毎日欠かさずに行い、大分早く魔力を回復させる事ができるようになった。


「あんたも随分と成長したね。勿論、ミイナもバルトも前よりたくましくなったじゃないかい」
「えっへん」
「へっ、まあ確かに前より魔法の力も磨きが掛かって来たかな」
「あんまり調子に乗るんじゃないよ……だけど、よく頑張ったねあんた達」


珍しくバルルは三人を褒め称え、この数か月の間に彼女も教育者として成長していた。しかし、一方で彼女は成長する三人を見て頭を悩ませる問題があった。


(そろそろこいつらにも新しい装備を用意しないとね……やれやれ、また金が掛かりそうだよ)


マオとミイナを見てバルルは二人のために新たな装備を用意する必要があると思い、またマリアに頭を下げなければならない事に頭を悩ませた――
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