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魔法学園編
第174話 狙撃
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(当たれ!!)
心の中で念じた瞬間、杖の先端で高速回転していた氷弾が猪の元へ放たれた。氷弾は猪の眉間に目掛けて突っ込み、猪は避ける暇もなく的中した。
「ッ――!?」
突如として眉間に衝撃が走った猪は目を見開き、体内に入り込んだ氷弾は猪の肉体を貫通して地面にめり込む。地面に衝突した氷弾は回転が止まらずに地中深くめり込み、やがて魔法の効果が切れて消えてしまう。
猪はしばらくの間は立ち尽くしていたが、眉間から血が噴き出すと意識を失ったのか倒れ込む。それを確認したマオは額の汗を拭い、見事に狙撃に成功した事を喜ぶ。
「ふうっ……上手くいきました!!」
「……な、何が起きたんだ?」
「おいおい、マジかよ……俺でもこの距離は狙い撃ちできないぞ」
「マオ、凄すぎる」
「た、大したもんじゃないかい……」
今までよりも射程距離が格段に伸びたマオの氷弾の攻撃を見てアルルだけではなく、師匠であるバルルでさえも冷や汗を流す。ほんの半年ほど前までは氷の欠片程度の魔法しか使えなかったマオが数十メートルも離れた獲物を狙撃で仕留める程の腕前まで成長した事にバルルは素直に感心する。
(こいつとはとんでもないね……先生の言っていた通り、魔力量が低い事が逆に成長を速めているのかもしれないね)
魔法学園の学園長のマリアはマオの成長の秘密が魔力量の少なさが理由だと考えており、そうでもなければ12才の子供がこんなにも早く魔法を極めつつあるはずがない。下級魔法しか扱えないマオだが、その下級魔法を極めれば恐ろしい動物や魔物が相手でも十分に戦える事を証明した。
「たく、本当にあんたは面白い奴だね」
「はあっ……それよりも師匠、あの猪どうしますか?」
「当然、持って帰るに決まってるだろ。今夜も猪鍋で決定だよ」
「たいした坊主だな!!どうだ、いっその事このまま猟師にならんか?それだけの魔法の腕前なら猟師としても食っていけるぞ」
「い、いや……僕は魔術師になりたいので」
アルルは一撃で猪を仕留めたマオを気に入り、猟師にならないのかを誘う。確かに今のマオの腕前ならば猟師としても十分に食っていけるが、彼が目指すのは絵本に出てくるような立派な魔術師になる事だったので丁重に断る事にした。
仕留めた猪は持ち返って今夜の晩飯にするためにマオ達は死骸の元へ向かう。しかし、猪に近付こうとした瞬間、ミイナの猫耳と尻尾が急に逆立つ。
「っ!?待って、何かが近付いてる!!」
「えっ!?」
「きゅ、急にどうしたんだよ?」
「いいから隠れて!!」
「ちょ、何だい急に……」
ミイナの今まで聞いた事がない焦った声にマオ達は戸惑いながらも近くに生えている樹木にそれぞれ身を隠すと、何処からか足音が鳴り響く。木陰からマオは少しだけ顔を出して様子を伺うと、彼が仕留めた猪の死骸の元に近付く大きな影を発見した。
「なっ!?」
「馬鹿、声を出すな!!」
「隠れろ、坊主……声を出すなよ!!」
猪の死骸に近付く存在を見た瞬間、マオは大声を上げてしまう。それに対してバルルが慌ててマオの口を塞ぎ、木陰に身を隠すとアルルも注意を行う。
――猪の死骸に近付いた存在、その正体は全身が赤色の毛皮に覆われた巨大熊だった。体長は軽く3メートルを超えており、普通の熊よりも鋭い牙と爪を持つ。しかも巨体でありながら移動速度も素早く、先ほどまで姿は見えなかったのに猪の血の臭いを嗅ぎつけて一瞬で駆けつけてきた。
これまでにマオが遭遇したどんな魔物よりも恐ろしい風貌と迫力を誇り、あのバルルでさえも冷や汗を流してマオの口元を塞いで身を隠す。バルルでさえも顔色が悪く、バルトは杖を両手で握りしめた状態で身体を震わせ、ミイナに至っては身体を縮こませて見つからないように隠れているのが精いっぱいだった。
(なんだ、あの化物……今まで出会った魔物とは雰囲気が全く違う!?)
数十メートル離れているにも関わらずにまるで自分の目の前にいるかのような圧迫感を感じ取り、身体が震えてマオは無意識にバルルにしがみつく。普段のバルルならば魔物に怯える姿を見せたら叱責するところだが、流石の彼女も今回ばかりはマオの恐怖を咎める事はできない。
(くそっ、なんでここに魔物がいるんだい……!!)
マオ達がいるのは白狼山の麓であり、本来であれば魔物が寄り付かない場所だった。しかし、赤毛熊は猪の死骸を発見すると躊躇なく白狼山に踏み込み、死骸に喰らいつく。
「ガアアアアッ!!」
折角自分が倒した猪の死骸を赤毛熊が食い荒らす光景を見てもマオは怒りも感じず、むしろ夢中に死骸を貪り喰らう赤毛熊に対して一層に恐怖を抱く。この後、赤毛熊はしばらくの間は猪の死骸を喰い続けたが、数十秒ほどで猪の死骸を食い尽くしてしまう
凄まじい速度で猪の死骸を食い尽くした赤毛熊は全身に血を浴びるが、元々名前の由来通りに赤色の毛皮で染まっているため、あまり変化は見られない。赤毛熊は周囲を見渡す素振りを行うと、やがてその場を立ち去っていく――
心の中で念じた瞬間、杖の先端で高速回転していた氷弾が猪の元へ放たれた。氷弾は猪の眉間に目掛けて突っ込み、猪は避ける暇もなく的中した。
「ッ――!?」
突如として眉間に衝撃が走った猪は目を見開き、体内に入り込んだ氷弾は猪の肉体を貫通して地面にめり込む。地面に衝突した氷弾は回転が止まらずに地中深くめり込み、やがて魔法の効果が切れて消えてしまう。
猪はしばらくの間は立ち尽くしていたが、眉間から血が噴き出すと意識を失ったのか倒れ込む。それを確認したマオは額の汗を拭い、見事に狙撃に成功した事を喜ぶ。
「ふうっ……上手くいきました!!」
「……な、何が起きたんだ?」
「おいおい、マジかよ……俺でもこの距離は狙い撃ちできないぞ」
「マオ、凄すぎる」
「た、大したもんじゃないかい……」
今までよりも射程距離が格段に伸びたマオの氷弾の攻撃を見てアルルだけではなく、師匠であるバルルでさえも冷や汗を流す。ほんの半年ほど前までは氷の欠片程度の魔法しか使えなかったマオが数十メートルも離れた獲物を狙撃で仕留める程の腕前まで成長した事にバルルは素直に感心する。
(こいつとはとんでもないね……先生の言っていた通り、魔力量が低い事が逆に成長を速めているのかもしれないね)
魔法学園の学園長のマリアはマオの成長の秘密が魔力量の少なさが理由だと考えており、そうでもなければ12才の子供がこんなにも早く魔法を極めつつあるはずがない。下級魔法しか扱えないマオだが、その下級魔法を極めれば恐ろしい動物や魔物が相手でも十分に戦える事を証明した。
「たく、本当にあんたは面白い奴だね」
「はあっ……それよりも師匠、あの猪どうしますか?」
「当然、持って帰るに決まってるだろ。今夜も猪鍋で決定だよ」
「たいした坊主だな!!どうだ、いっその事このまま猟師にならんか?それだけの魔法の腕前なら猟師としても食っていけるぞ」
「い、いや……僕は魔術師になりたいので」
アルルは一撃で猪を仕留めたマオを気に入り、猟師にならないのかを誘う。確かに今のマオの腕前ならば猟師としても十分に食っていけるが、彼が目指すのは絵本に出てくるような立派な魔術師になる事だったので丁重に断る事にした。
仕留めた猪は持ち返って今夜の晩飯にするためにマオ達は死骸の元へ向かう。しかし、猪に近付こうとした瞬間、ミイナの猫耳と尻尾が急に逆立つ。
「っ!?待って、何かが近付いてる!!」
「えっ!?」
「きゅ、急にどうしたんだよ?」
「いいから隠れて!!」
「ちょ、何だい急に……」
ミイナの今まで聞いた事がない焦った声にマオ達は戸惑いながらも近くに生えている樹木にそれぞれ身を隠すと、何処からか足音が鳴り響く。木陰からマオは少しだけ顔を出して様子を伺うと、彼が仕留めた猪の死骸の元に近付く大きな影を発見した。
「なっ!?」
「馬鹿、声を出すな!!」
「隠れろ、坊主……声を出すなよ!!」
猪の死骸に近付く存在を見た瞬間、マオは大声を上げてしまう。それに対してバルルが慌ててマオの口を塞ぎ、木陰に身を隠すとアルルも注意を行う。
――猪の死骸に近付いた存在、その正体は全身が赤色の毛皮に覆われた巨大熊だった。体長は軽く3メートルを超えており、普通の熊よりも鋭い牙と爪を持つ。しかも巨体でありながら移動速度も素早く、先ほどまで姿は見えなかったのに猪の血の臭いを嗅ぎつけて一瞬で駆けつけてきた。
これまでにマオが遭遇したどんな魔物よりも恐ろしい風貌と迫力を誇り、あのバルルでさえも冷や汗を流してマオの口元を塞いで身を隠す。バルルでさえも顔色が悪く、バルトは杖を両手で握りしめた状態で身体を震わせ、ミイナに至っては身体を縮こませて見つからないように隠れているのが精いっぱいだった。
(なんだ、あの化物……今まで出会った魔物とは雰囲気が全く違う!?)
数十メートル離れているにも関わらずにまるで自分の目の前にいるかのような圧迫感を感じ取り、身体が震えてマオは無意識にバルルにしがみつく。普段のバルルならば魔物に怯える姿を見せたら叱責するところだが、流石の彼女も今回ばかりはマオの恐怖を咎める事はできない。
(くそっ、なんでここに魔物がいるんだい……!!)
マオ達がいるのは白狼山の麓であり、本来であれば魔物が寄り付かない場所だった。しかし、赤毛熊は猪の死骸を発見すると躊躇なく白狼山に踏み込み、死骸に喰らいつく。
「ガアアアアッ!!」
折角自分が倒した猪の死骸を赤毛熊が食い荒らす光景を見てもマオは怒りも感じず、むしろ夢中に死骸を貪り喰らう赤毛熊に対して一層に恐怖を抱く。この後、赤毛熊はしばらくの間は猪の死骸を喰い続けたが、数十秒ほどで猪の死骸を食い尽くしてしまう
凄まじい速度で猪の死骸を食い尽くした赤毛熊は全身に血を浴びるが、元々名前の由来通りに赤色の毛皮で染まっているため、あまり変化は見られない。赤毛熊は周囲を見渡す素振りを行うと、やがてその場を立ち去っていく――
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