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魔法学園編

第212話 頼れる先輩

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――目を覚ましたバルルは警備兵から事情聴取を受けなければならず、マオ達は早々に病室を後にした。その後、学園長も用事があるという事で二人を魔法学園まで送ると彼女は学園長室に戻り、マオとミイナは戻った時には昼休みを迎えていた。


「よう、お前等も戻ってきたのか」
「あ、先輩!!お久しぶりです!!」
「おう、元気そうで何よりだ」
「……あの時は助けてくれてありがとう」


二人は屋上に向かうとそこには来月に「月の徽章」を授与される予定のバルトが待っていた。彼はこれまでの努力が評価され、本来であれば今月に月の徽章が与えられるはずだったが、三週間前に生徒会と揉め事を起こしたせいで謹慎処分を受けていた。

本来であれば問題を起こした生徒に月の徽章を渡す事はできないが、バルトが引き起こした騒ぎは彼が偶然にも発見した不審者《マオとミイナ》を自分で捕まえようとしたに過ぎない。生徒会からすれば彼の魔法で邪魔をされて不審者を取り逃がした形になるが、本人はあくまでも自分の魔法で捕まえようとしたと言い張り、決して悪意で邪魔をしたわけではないと証言した。

学園長の判断でバルトは三週間の謹慎を言い渡されたが、彼が不審者を捕まえようとした事に免じて月の徽章の授与は来月に繰り越しとなった。尤も彼女の場合は不審者の正体を見破っている可能性もあり、謹慎を言い渡した時にバルトに一言告げる。


『後輩思いなのは悪い事ではないけれど、今度からはもっと上手くでやり過ごしなさい』
『……うっす』


謹慎を言い渡された時にバルトは学園長に注意され、この三週間の間は大人しくしていた。ちなみに謹慎処分といっても授業を受ける事や学校外に出る事だけが禁じられており、それほど重い罰ではなかった。


「先輩、本当にすいませんでした。僕達のせいで……」
「気にすんなよ。これからは一緒に授業を受ける仲だからな」
「一緒に?」
「ああ、俺もお前等と同じ先生の元で授業を受ける事が決まったんだよ」


三年生の担当教師であるタンが亡くなった事により、現在の三年生は他の教師が交代制で授業の指導を行っている。いずれは新しい担当教師が決まるだろうが、バルトの場合は彼の希望でこれからはマオ達と同じ教室で授業を受ける事が正式に決定したという。


「じゃあ、先輩も一緒に授業を受けるんですか?」
「ああ、といっても学年が違うからな。俺の場合は他の教師の授業も受ける事もあるだろうけどな」
「それなら私達の方がバルルの元で授業を受けていたから先輩になる。ちょっと購買でホットドッグ買って来て」
「なんでそうなるんだよ!!しかもそこは普通は焼きそばパンだろうが!?」


これからはバルトも同じ教室で授業を受ける事が決まり、来月には彼も正式に月の徽章を授与されて晴れてマオと同じ立場になる。マオとしては頼りがいのある先輩が一緒の教室に入る事を嬉しく思うが、一つだけ気になっている事があった。


「あの、先輩……実は見せたい物があるんですけど」
「あん?急に改まってどうした?」
「実はこれなんですけど……」


バルトにマオは一本の杖を差し出し、彼は不思議そうに受け取ると杖の形状を確認して目を丸くした。マオが取り出したのは三週間前に冒険者狩りから回収した先端が十字架のような形をした杖だった。

冒険者狩りが自害した際にマオとミイナはあらぬ疑いをかけられないように逃げ出した。この時にマオは動揺していたせいで冒険者狩りから奪った杖を持ち返ってしまい、結局は今日まで誰にも見せる事ができずに保管していた。しかし、事情を知っているバルトならば見せても問題ないと思って相談する。


「なるほどな、つまりはこの杖がその冒険者狩りが持っていた杖か……お前等、とんでもないもんを持ち返って来たな」
「す、すいません……でも捨てるわけにもいかなかったんで」
「本当はバルルに相談するつもりだった。けど、学園長も来てたし、話す暇もなかった。それに話したら話したらできっと死ぬほど怒られると思って話せなかった」
「まあ、気持ちは分かるけどよ……」


二人の言葉にバルトは苦笑いを浮かべながら杖を確認し、彼も冒険者狩りと同じく風属性の魔法の使い手であるため、試しに魔法を使用する事にした。


「お前等の話によると冒険者狩りの女はこの杖で二回分の魔法を使っていたのか?」
「はい、先輩も扱っていたスラッシュという魔法なんですけど、まるで二つのスラッシュを組み合わせたかのように十字のような形をした衝撃波が放たれていました」
「十字ね……試しに使ってみるか」


話を聞いたバルトは興味を抱いて杖を構え、訓練場に放置されていた木造人形に狙いを定めた。彼の魔法の実力を知っているだけにマオとミイナは少し離れた場所に立つと、バルトは狙いを定めて魔法を放とうとした時に目を見開く。
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