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魔法学園編

第230話 氷刃の進化

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「皆、伏せて!!」
「な、何だ!?」
「いいからあんたも伏せな!!」


カマセは上空を見上げると、そこには無数の氷塊が浮かんでいた。氷塊はチャクラムのような形をしており、その数は10個はあった。それらを操るのは氷板《スノボ》に乗り込んで地上に降下するマオだった。

彼が作り出した氷刃は最近になって形状が変化し、円盤型の氷塊を作り出すのではなく、中央の部分に穴を開く事でチャクラムのように変化させる。こうする事で余分な魔力の消費を抑えて攻撃ができるようになった。


「はああっ!!」
『ギィアアアアッ!?』


唐突に空中に出現した氷の刃がゴブリンの群れに降り注ぎ、逃げる暇もなく次々とゴブリンの肉体を切り裂く。この際にカマセとバルルは生徒達を抱えて地面に伏せ、彼女達だけは傷つけないようにマオも操作を行う。

少し前までは複数の氷刃を操作するのに手間取っていたマオだったが、これまでの訓練の成果で複数の氷刃を操作して別々の位置にいる相手を切り刻む事ができるようになっていた。逃げ惑うゴブリンを一匹も残さずに仕留め、攻撃を開始してから数秒後には裏庭には十数匹のゴブリンの死骸が横たわる。


「ふうっ……もう大丈夫ですよ」
「たくっ、二つの意味で冷っとしたね」
「な、な、なっ……何なんだ!?」


マオの攻撃に巻き込まれなかった事と、彼の氷刃が周囲を飛び交った事で少しだけ肌寒くなったバルルは身体を震わせて立ち上がる。その一方でカマセは生徒達を抱きしめながらも周囲に倒れたゴブリンの死骸に視線を向け、信じられない表情を浮かべて氷板に乗って浮揚するマオを見上げた。


(あ、あの子が一人でやったのか!?信じられない……は、半年前まではあんなに小さな氷の欠片しか生み出せなかったのに!!)


カマセはマオと出会ったばかりの頃は彼が指先でも摘まめる程度の氷の欠片しか作り出せない事は知っていた。その後に試合や決闘で彼が魔術師として成長している事は知っていたが、それでも十数匹のゴブリンを数秒足らずで全滅させた事に驚きを隠せない。


(いくらゴブリンとはいえ、これだけの数を……しかも我々を巻き込まずに仕留めるなんて、この子は何者なんだ!?)


先ほどのマオが繰り出した氷刃を思い返し、少なくとも彼の様にゴブリンの群れを一掃させるほどの実力を持つ生徒はマカセの生徒の中にはいない。強いて言えば現在は学園を離れている生徒ならば可能かもしれないが、それでも彼がマオのようにゴブリンの群れを数秒足らずで仕留められるとは思えない。


(て、天才だ……この子は間違いなく、天才だ!!)


教師としてそして魔術師としてカマセはマオの魔法の腕を見て彼が天才だと判断し、そんな彼を育て上げた同僚《バルル》を見る。彼女はマオが倒したゴブリンを確認し、しかめっ面な表情を浮かべた。

ゴブリン達はマオの魔法で確実に死亡したが、それだけならばともかくどうしてこれだけの数のゴブリンが学園内に出回っているのに他の教師や学園内に配置されているはずの警備兵が対処に現れないのか疑問を抱く。


「カマセ!!いったいどうなってるんだい!?何が起きてるんだい!?」
「そ、それが俺にも分からないんだ!!突然、教室にこいつらが現れて生徒達を逃がすために必死でここまでやって来たんだが……」
「たくっ……とにかく、生徒を避難させるのが先決だね。全員、学園の外に避難しな!!」


バルルの指示にカマセは賛同し、まずは生徒達を安全な場所に避難させるために学園の外へ向かう。魔法学園は周囲を防壁で隔離されているため、学園内に出現した魔物達が外に抜け出す事はない。

今は学園の中よりも外の方が安全であり、一年生の生徒を連れてカマセは外へ向かおうとした。一方でバルルは彼と共に生徒を連れて行こうとしたが、この時に彼女はマオに指示を与える。


「マオ!!あんたは校舎内に他の生徒が残っていないのか確かめな!!屋上の二人と一緒に逃げ遅れた生徒がいないか探してくるんだ!!もしも魔物がいたら遠慮せずにぶっ倒せ!!」
「は、はい!!」
「はあっ!?おい、何を言ってるんだ!!そんな危険な事を生徒に……」
「あんた、さっきのあいつの魔法を見ただろう?今は緊急事態なんだ、戦える奴に戦って貰うしかないんだよ!!」


生徒であるマオ達に学校に残って他の生徒の避難をさせようとするバルルにカマセは驚愕するが、教師として生徒を守らなければならない事はバルルも理解している。しかし、彼女はまだ本調子を取り戻しておらず、右腕を抑えた。

先日に切り裂かれた右腕は治療されたが、未だに感覚が鈍って彼女は碌に魔拳も扱えない状態だった。この状況下で彼女が知る人物のなかで戦力になるのはマオ達しかおらず、ここは彼等に託して自分とカマセは一年生達を外に避難させる事に集中する。
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