伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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修行の旅

第64話 ハルナの活躍

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――眠っている最中、ナイは顔面に圧迫感を感じて意識を取り戻す。息苦しさを感じて目を開くと、誰かが自分に抱きついている事に気が付く。


「んぐぐっ……!?」
「ふがぁっ……むにゃむにゃっ」


どうやら眠っている間に誰かがベッドの中に忍び込み、大きくて張りのある胸をナイに押し付けていた事が発覚する。その正体は部屋から追い出されたはずのハルナであり、彼女は自分の豊かな胸元にナイを抱き寄せて眠っていた。


(どうしてハルナがここに……いや、それよりもこれは色々とまずい気がする!?)


ハルナの胸から離れようとしたが、彼女はナイの頭を掴んでいるせいで引き剥がせない。眠っているはずなのに信じられない力で抱き寄せる彼女にナイは戸惑う。


(ち、力が強いな……それにしても、こうしてみると本当に女の子だったんだな)


顔に押し付けられる柔らかな胸の感触にナイはハルナが女性なのだと改めて意識し、今まで男性だと信じていたために戸惑ってしまう。昔からずっと一緒に遊んでいた相手だったのに女性だと気付かなかった事に我ながら信じられない。

村に居た頃のハルナは子供達の中でも一番やんちゃであり、よく問題を起こしては大人に怒られていた。それでも彼女だけが村長に倉庫に隔離されていたナイを助け出すために行動し、もしも彼女が助けてくれなかったらナイは今頃は死んでいたかもしれない。


(ハルナのお陰で俺は生き延びられたんだ……本当にありがとう)


命の恩人である幼馴染のためにナイはこれからは彼女の役に立ちたいと思い、自分が魔術師になれたのもハルナとの約束を守るためである事を思い出す。


(ハルナ、お前の役に立つために頑張るからな)


彼女の胸の中でナイは決意を固める中、いつの間にかハルナは目を覚まして自分の胸に顔を埋めるナイに気付いて照れくさそうな表情を浮かべる。


「お、お前……意外と大胆な奴だな。俺が寝ている間にこんなことするなんて……」
「むぐぅっ!?」


ハルナが目を覚ました事に気づいたナイは慌てて離れると、自分ではなくハルナの方から抱きついてきた事を話す。


「ぷはっ……ち、違う!!そっちが抱きついてきたんだよ!!」
「いや、別に怒ってないって。お、お前も男だもんな……」
「だから誤解だってば!?」


胸元を隠しながら頬を赤くするハルナにナイは焦り、意外と乙女らしい反応をする幼馴染が可愛く見えてしまう。まだ男だと思い込んでいた時はハルナの事は格好良いと思っていたが、こうしてみると昔と比べて随分と女らしくなった事に気づく。

村に暮らしていた頃もハルナは男にしては綺麗な顔立ちをしていたとは思うが、数年ぶりに出会った彼女は肉体の方も女性らしくなっていた。特に胸の大きさはナイの顔を挟める程に大きくなり、その上で露出度の高めな格好をしているせいで視線に困ってしまう。


「たくっ、しょうがない奴だな……す、少しだけなら揉んでもいいぞ」
「え、本当に!?いや、そうじゃなくて……」


恥ずかし気にハルナが胸を突き出すとナイは反射的に腕を伸ばしそうになったが、どうにか理性を奮い立たせて我慢する。それよりもハルナには色々と聞きたいことがあった。


「ダテムネおじさんからはハルナは冒険者になるためにイチノで暮らしていると聞いたけど……どうしてニノの街で冒険者になっている事を知らせてないの?」
「ん?ああ、そういえば親父に手紙を送るの忘れてたな……まあ、冒険者になってから色々と大変だったからな」


ダテムネから聞いた話ではナイはハルナがイチノの街で暮らしていると聞いていたが、当の本人はイチノが魔物に襲撃される前にニノに移住して冒険者として活動していた。ハルナは自分がどのような経緯でニノの冒険者になったのかを話す――





――数年前にナイと別れた後、ハルナはダテムネの元で格闘技の指導を受け、14才になった頃に村を離れてイチノへと移り住む。イチノに移ったハルナは冒険者ギルドに加入したという。

10年ほど前までは冒険者になるためには本来は18才以上でなければいけなかったが、最近は世界各地で魔物が出没するようになり、一人でも多くの冒険者を必要とするために年齢制度はなくなった。但し、未成年の冒険者の場合はギルドで一年ほど指導を受ける義務があり、イチノにてハルナは冒険者に必須の知識と心構えを叩き込まれる。

15才になってようやく指導を終えて冒険者として活動が認められたハルナはニノへ移り住む。彼女がイチノからニノへ拠点を変えたのはイチノの周辺地域では魔物が数を減らし、魔物退治の仕事が激減していたからである。当時の彼女は冒険者になれたというのに魔物と戦えない事に不満を抱き、イチノよりも規模が大きいニノの冒険者ギルドへ鞍替えした。

今から考えるとイチノの周辺の魔物が減ったのはゴブリンキングの率いる軍勢のせいであり、ハルナがニノに移り住んでからしばらくするとイチノは魔物の襲撃を受けて壊滅した。そして魔物の軍勢がニノにまで迫り、ハルナも他の冒険者と共に街を守るために全力を尽くした。

ニノの防衛の際にハルナは他の冒険者の中でも活躍が目立ち、その功績が認められて銀級冒険者にまで昇格した。たった一年で銀級冒険者に昇格を果たした人間は滅多におらず、今では街中でも有名な冒険者の一人にまでなった。


「どうだ?お前が山で修行している間に俺はもう一人前の冒険者になったんだぞ」
「……凄いね」
「なんだよ、それだけか?もっと褒めてくれてもいいんだぞ」
「いや、本当に凄いと思うよ……ただ、ハルナに比べて俺はまだまだだと思って」


別れている間にハルナが立派な冒険者として活躍していたと知り、ナイは嬉しく思う一方に不安を抱く。彼女は約束を守って冒険者になったというのに自分の方は魔術師として「一人前」になれていない事に心苦しく思う。


(ハルナは強くなった。でも、俺は……)


冒険者として一人前になったといっても過言ではないハルナに対し、ナイは自分は魔術師として成長しているのかどうか自信がなかった。未だに収納魔法を極めてもいない自分が一人前の魔術師だと名乗れるとは思えず、約束を果たしたとは考えていない。


「ハルナと比べると俺なんてまだまだだな……」
「……何言ってんだ?お前だって立派な魔術師になったんだろ?」
「え?」
「お前の妹分から色々と話を聞いたぞ。ここに来るまでに赤毛熊やらミノタウロスやらトロールをぶっ倒してきたんだろ?」
「いや、まあ……」


ハルナの言葉にナイは頷くが、ここで疑問を抱く。確かにエリナがハルナに話した内容は嘘ではないが、普通の人間ならば簡単に信じられるような話ではない。赤毛熊もミノタウロスもトロールも本来は一流の冒険者でも簡単に倒す事ができる相手ではなく、攻撃魔法も覚えていない魔術師が倒したといっても信じられるはずがない。


「……もしかしてエリナから聞いてないの?俺はまだ攻撃魔法は覚えてないんだよ」
「知ってるよ。収納魔法だけしか覚えてないんだろ?」
「え?知ってたの?」


ナイが収納魔法しか扱えない事もハルナは既に把握しており、攻撃魔法も扱えない魔術師が凶悪な魔物を倒したなど普通の人間なら信じられるはずがない。ましてや冒険者であるハルナは一般人よりも魔物の危険性を理解しているはずである。それなのに彼女はナイが攻撃魔法も扱わずに魔物を倒したという話を微塵も疑っていなかった。


「どうして……ハルナは俺が魔物を倒したと信じてくれるの?」
「何言ってんだお前……そんなもん、信じるに決まってんだろ?」
「……そっか」


ハルナの言葉にナイは胸の中のもやもやが消えたような感覚を抱き、久しぶりにあった幼馴染は自分の頃を今でも「信頼」してくれていた事に嬉しく思う。
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