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国王と女王の結託
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――国王が家臣の願いを聞き入れてから一カ月後、バルカン王国にアトラス大森林の女王であり、アリアの実の母親であるマイラが訪れる。彼女は案内された客室で国王と向かい合い、彼等の提案を聞き入れて溜息を吐き出す。
「いきなり呼び出してきたから何かと思えば……相変わらず娘に苦労を掛けているようですね」
「何じゃと!!儂はあの娘のためを思って……」
「その結果が今の状況ですか?」
「うっ……」
マイラの鋭い視線に国王は視線を反らし、確かに自分も意地になっていた事は自覚していた。しかし、現在の彼は既に60代を迎えており、妻も同い年なのでこの年齢で新しい世継ぎを産める可能性は限りなく低い。つまりマリア以外に王国を継承する人間は存在せず、当然だが甘やかされて育てられたマリアが一人で王国を支える事が出来るはずがない。
だが、もしもマリアがレオと結婚した場合は必然的にレオが王位を引き継ぎ、二人の間に子供が生まれれば安泰となる。魔王を討伐した勇者である彼は人望も厚く、王国の家臣や民衆も納得するだろう。しかし、この計画にはマリア1人だけでは成功する保証が薄く、だからこそ一時期はレオの想い人でだったアリアの協力が必要不可欠だった。アリアもこの計画に賛同し、マリアと共にレオに求婚してくれれば計画が成功する可能性は断然に高まると国王は考えていた。
しかし、アリアを取り入れる前に彼女の母親であるマイラにも計画に参加して貰い、事前にレオをアトラス大森林側に引き込まれないように注意する必要があった。今回の計画はマイラにとっては特に大きな利はなく、アリアがレオとよりを戻せば彼女は即座に娘に王位を譲り、隠居するつもりだった。
「頼む!!どうか黙って我等の計画に協力してくれ!!もしも上手く行けば王国とアトラス大森林の関係もより強固な物となるだろう!?」
「全く……その計画に我々が賛同する意味があるのですか?こちらとしては娘がレオ殿を呼び寄せてくれれば特に問題はないのですよ。第一に貴方の娘が正妻、私の娘が側室というのが気に入りませんね。王国は我が娘を軽んじているのですか?」
「そ、それはだな……」
今回の計画に関して国王が唯一反対したのはマリアが側室になるという点であり、王国側としてはレオを国王に迎えたのに本来は王位の継承権を持つマリアが正妻ではない事が気に食わず、マリアを正妻にしてアリアを側室にするように計画を変更させてマイラに伝える。だが、今は勘当中とはいえ、自分の愛する娘を側室として結婚させる提案を言い出されてはマイラも黙ってはいない。
「確かにそちらの立場を考えればレオ殿を国王に迎える以上は王女を正妻としなければ体面が保てない事は分かります。しかし、だからといってアリアをそんな事に巻き込まないで欲しいですね。別に私としてはあの子がレオ殿を引き寄せてくれれば何も問題はないのです」
「だが、そうなればこの王国はどうなる!?もう40を迎えようとするマリアを誰が貰い受けてくれるのだ!!」
「それは貴方の責任でしょう。自分の引き起こした問題なら自分で解決しなさい」
「ぐぐっ……!!」
「お言葉ですが女王様、少しよろしいでしょうか?」
今まで黙って話を聞いていた国王の家臣が会話に入り、彼の代わりに今回の計画の重要性を伝える。
「確かに今回の計画は我々側にしか利がないように思えるかもしれませんが、逆に聞きますがアリア殿が本当にレオ様と結婚できると思いますか?」
「……どういう意味ですか?」
「我々の調査によると、アリア様はレオ様と再会してから一か月以上も経過しているにも関わらず、特に大きな進展はないようです。調査員の話ではレオ殿と毎日会ってはいるようですが、それは鍛錬を共に行ったり、新人の冒険者の指導を手伝う程度で主にプライベートでの付き合いは皆無だと聞いております」
「あの子は……まだ言い出せていないのですか」
家臣の話を聞いてマイラは頭を抑え、一か月以上も共に過ごしながら未だにレオとの関係が進展していないという話を聞いて頭を悩ませる。恋愛が奥手なのは父親に似てしまったらしく、マイラは娘の不甲斐なさを嘆く。
「アリア様は森人族なので未だにお若く、美しい事は存じております。しかしレオ殿は既に30代を迎え、昔と比べると流石に老いています。もしかしたらアリア殿も心変わりを起こすのでは……」
「娘がレオ殿以外の相手に恋慕を抱くという事ですか?しかしそれは……」
「無論、私も短い間でしたがアリア殿が多少は老いたからといってレオ殿以外の男性に心が惹かれるとは思いません。しかし、彼女は既にレオ様の告白を断わっているのです。だからこそ未だに罪悪感を捨てきれず、今以上の関係に発展する事を無意識に拒んでいるのではないでしょうか」
「……なるほど」
マイラは家臣の言葉に考え込み、確かに娘の気持ちも考えていなかった事に気付く。告白をわざわざ断った相手にもう一度よりを戻すように告げた自分にも責任があるのではないかと考えた時、家臣がさらに提案を行う。
「そこでこうしましょう。今のままでは恐らくアリア殿はレオ様との関係を進展しようとしません。しかし、我々が協力してアリア様を後押しするのです。マリア様の協力し、二人で共にレオ殿と結婚を申し出るように説得するのです」
「ですがその計画は……」
「無論、どちらが正妻なるのかは重要な問題です。しかし今一番大切な事はレオ様にお二人と結婚させる決意を抱かせる事です。このままではどちらも行き遅れになりますよ!!」
「むうっ……!?」
「ううっ……!?」
家臣の申し出に対して子供を大切に想う国王とマイラは黙り込み、渋々と今回の計画を賛同した――
※数か月ぶりの更新です。長らく待たせて申し訳ありませんでした(´・ω・)
「いきなり呼び出してきたから何かと思えば……相変わらず娘に苦労を掛けているようですね」
「何じゃと!!儂はあの娘のためを思って……」
「その結果が今の状況ですか?」
「うっ……」
マイラの鋭い視線に国王は視線を反らし、確かに自分も意地になっていた事は自覚していた。しかし、現在の彼は既に60代を迎えており、妻も同い年なのでこの年齢で新しい世継ぎを産める可能性は限りなく低い。つまりマリア以外に王国を継承する人間は存在せず、当然だが甘やかされて育てられたマリアが一人で王国を支える事が出来るはずがない。
だが、もしもマリアがレオと結婚した場合は必然的にレオが王位を引き継ぎ、二人の間に子供が生まれれば安泰となる。魔王を討伐した勇者である彼は人望も厚く、王国の家臣や民衆も納得するだろう。しかし、この計画にはマリア1人だけでは成功する保証が薄く、だからこそ一時期はレオの想い人でだったアリアの協力が必要不可欠だった。アリアもこの計画に賛同し、マリアと共にレオに求婚してくれれば計画が成功する可能性は断然に高まると国王は考えていた。
しかし、アリアを取り入れる前に彼女の母親であるマイラにも計画に参加して貰い、事前にレオをアトラス大森林側に引き込まれないように注意する必要があった。今回の計画はマイラにとっては特に大きな利はなく、アリアがレオとよりを戻せば彼女は即座に娘に王位を譲り、隠居するつもりだった。
「頼む!!どうか黙って我等の計画に協力してくれ!!もしも上手く行けば王国とアトラス大森林の関係もより強固な物となるだろう!?」
「全く……その計画に我々が賛同する意味があるのですか?こちらとしては娘がレオ殿を呼び寄せてくれれば特に問題はないのですよ。第一に貴方の娘が正妻、私の娘が側室というのが気に入りませんね。王国は我が娘を軽んじているのですか?」
「そ、それはだな……」
今回の計画に関して国王が唯一反対したのはマリアが側室になるという点であり、王国側としてはレオを国王に迎えたのに本来は王位の継承権を持つマリアが正妻ではない事が気に食わず、マリアを正妻にしてアリアを側室にするように計画を変更させてマイラに伝える。だが、今は勘当中とはいえ、自分の愛する娘を側室として結婚させる提案を言い出されてはマイラも黙ってはいない。
「確かにそちらの立場を考えればレオ殿を国王に迎える以上は王女を正妻としなければ体面が保てない事は分かります。しかし、だからといってアリアをそんな事に巻き込まないで欲しいですね。別に私としてはあの子がレオ殿を引き寄せてくれれば何も問題はないのです」
「だが、そうなればこの王国はどうなる!?もう40を迎えようとするマリアを誰が貰い受けてくれるのだ!!」
「それは貴方の責任でしょう。自分の引き起こした問題なら自分で解決しなさい」
「ぐぐっ……!!」
「お言葉ですが女王様、少しよろしいでしょうか?」
今まで黙って話を聞いていた国王の家臣が会話に入り、彼の代わりに今回の計画の重要性を伝える。
「確かに今回の計画は我々側にしか利がないように思えるかもしれませんが、逆に聞きますがアリア殿が本当にレオ様と結婚できると思いますか?」
「……どういう意味ですか?」
「我々の調査によると、アリア様はレオ様と再会してから一か月以上も経過しているにも関わらず、特に大きな進展はないようです。調査員の話ではレオ殿と毎日会ってはいるようですが、それは鍛錬を共に行ったり、新人の冒険者の指導を手伝う程度で主にプライベートでの付き合いは皆無だと聞いております」
「あの子は……まだ言い出せていないのですか」
家臣の話を聞いてマイラは頭を抑え、一か月以上も共に過ごしながら未だにレオとの関係が進展していないという話を聞いて頭を悩ませる。恋愛が奥手なのは父親に似てしまったらしく、マイラは娘の不甲斐なさを嘆く。
「アリア様は森人族なので未だにお若く、美しい事は存じております。しかしレオ殿は既に30代を迎え、昔と比べると流石に老いています。もしかしたらアリア殿も心変わりを起こすのでは……」
「娘がレオ殿以外の相手に恋慕を抱くという事ですか?しかしそれは……」
「無論、私も短い間でしたがアリア殿が多少は老いたからといってレオ殿以外の男性に心が惹かれるとは思いません。しかし、彼女は既にレオ様の告白を断わっているのです。だからこそ未だに罪悪感を捨てきれず、今以上の関係に発展する事を無意識に拒んでいるのではないでしょうか」
「……なるほど」
マイラは家臣の言葉に考え込み、確かに娘の気持ちも考えていなかった事に気付く。告白をわざわざ断った相手にもう一度よりを戻すように告げた自分にも責任があるのではないかと考えた時、家臣がさらに提案を行う。
「そこでこうしましょう。今のままでは恐らくアリア殿はレオ様との関係を進展しようとしません。しかし、我々が協力してアリア様を後押しするのです。マリア様の協力し、二人で共にレオ殿と結婚を申し出るように説得するのです」
「ですがその計画は……」
「無論、どちらが正妻なるのかは重要な問題です。しかし今一番大切な事はレオ様にお二人と結婚させる決意を抱かせる事です。このままではどちらも行き遅れになりますよ!!」
「むうっ……!?」
「ううっ……!?」
家臣の申し出に対して子供を大切に想う国王とマイラは黙り込み、渋々と今回の計画を賛同した――
※数か月ぶりの更新です。長らく待たせて申し訳ありませんでした(´・ω・)
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